2022.12.25
不動産売却を5年以内にする際の税金計算方法 | 売るときの注意点も解説
「5年以内に不動産を売却したときにかかる税率は高く設定されている」と聞いて、不安を感じている方は多いでしょう。そのため、「実際にかかる税金がどのくらいになるのかを計算してみたい」と思う方もいるのではないでしょうか。
しかし、税金の計算方法は複雑なうえに注意点もあります。そこで本記事では、短期で不動産を手放すときにかかる税金の計算方法をわかりやすく解説します。
税金が控除される特例制度や5年以内に売却するときの注意点も紹介しているので、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
不動産売却時の譲渡所得とは
不動産売却時にかかる税金を計算するには、まず課税対象になる譲渡所得を算出する必要があります。譲渡所得の仕組みや計算方法をあらかじめ把握しておくことで、税金の算出をスムーズに進められます。
そもそも譲渡所得とは何なのか、どうやって計算するのかをチェックしていきましょう。
譲渡所得とは
不動産を売却する際に得られる利益には譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は申告分離課税に該当するため、給与所得や事業所得とはわけて支払う税金を計算する必要があります。ただし、課税されるのは譲渡所得がプラスになる場合のみである点に注意しましょう。
なお、不動産を売却したときに得た利益にかかる税率は、所有期間で約2倍も異なります。所有期間が5年以内で売却する際の税率は40%を超えます。長期の場合は通常の申告分離課税と同じ約20%の税率です。
損失が出た場合、他の不動産売却から得た利益とであれば損益通算できますが、事業所得や給与所得とは合算できません。ただし、所有期間が5年を超えてから居住用の不動産を売却したときには、事業・給与所得と損益通算できる制度があります。
短期間で売却する場合には投機的な取引も含まれるため、所有している期間や損益通算の仕組みにこのような制限がかけられています。
譲渡所得の計算方法
不動産売却時の収入のうち、課税対象になる金額は次の計算式を用いて算出します。
課税譲渡所得金額 = 不動産を売却して得られる収入 − ( 取得費 + 譲渡費用)− 特別控除額
たとえば、不動産の売却額が1,000万円で取得費が500万円・譲渡費用が50万円の場合、課税所得金額は450万円になります。一方、取得費が1,000万円・譲渡費用が50万円の場合、計算結果がマイナスになるため税金を支払う必要はありません。
計算に必要な取得費・譲渡費用については、以下で詳しく解説します。
取得費
取得費とは、不動産を取得するときに支払ったお金のことです。購入代金だけでなく、以下のような費用も含まれます。
- 建築代金
- 購入手数料
- 設備費
- 改良費
ただし、建物は減価償却資産に該当するため、所有してから売却するまでの減価償却費用を差し引く必要があります。建物の取得費が不明な場合や売却額の5%よりも少ない場合は、譲渡価額の5%を取得費として計算可能です。
一方、土地は年月の経過とともに減価していくものではないと見なされており、取得時にかかった費用がそのまま取得費になります。
減価償却の仕組みや算出方法は、こちらの記事「不動産売却時の減価償却費の計算方法 | 事業用とそれ以外の場合にわけて説明」で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
譲渡費用
譲渡費用とは、不動産を売却する際にかかった費用のことです。仲介手数料や負担した手数料が含まれます。
売るために必要な経費が該当するため、以下のような費用は含まない点に注意してください。
- 仲介手数料
- 印紙税(売主負担分)
- 貸家の場合にかかった立退料
- 土地の上にある建物の解体費
- 売買契約解除の違約金
- 借地権の移行に必要な名義書換料
- 修繕費
- 住まなくなってから売却までの固定資産税
- 売却金の取り立てにかかる費用
譲渡所得を正しく計算するため、不動産売却に使用した費用はきっちり分類しておきましょう。
不動産売却を5年以内にするときにかかる税金の計算方法
不動産を5年以内に売却する際に得られる譲渡所得は短期譲渡所得と見なされ、5年を超えてから売却する場合と比較して約2倍の税率が設定されています。
ここでは、短期間の所有で不動産を売却する際にかかる税金の計算方法と、所有している期間自体を算出する方法を解説します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
短期譲渡所得にかかる税金
不動産の所有期間によりかかる税金の違いは以下の表のとおりです。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
所有期間 | 5年以内 | 5年を超える |
所得税 | 30% | 15% |
住民税 | 9% | 5% |
復興特別所得税 | 2.1% | 2.1% |
合計税率 | 41.1% | 22.1% |
参考:No.3211 短期譲渡所得の税額の計算
参考:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
短期(所有後5年以内)で売却する場合にかかる所得税率は30%に設定されています。他にも住民税9%、令和19年までは復興特別所得税として2.1%が追加で課税されます。
このように、かなり高額な税率が設定されていますが、取得費と譲渡費用を合算した金額を超えない限りは課税されません。売却時に得られる金額にとらわれないようにしましょう。
たとえば、売却時の収入が2,000万円で、取得費が1,000万円、譲渡費用に100万円かかったとします。この場合、短期譲渡所得は以下のように算出できます。
短期譲渡所得 = 2,000万円 − 1,000万円 − 100万円 = 900万円
税率は41.1%(30%+9%+2.1%)なので、支払う税金は以下のとおりです。
譲渡所得税(短期) = 900万円 × 41.1% ÷ 100 = 369.9万円
なお、5年以上保有してから売却する場合は長期譲渡所得と見なされ、所得税率は15%、住民税は5%まで下がります。
所有期間の分類方法
所有期間は、譲渡しようとしている年の1月1日時点を基準に算出します。
5年所有しているかどうかを見極める重要なポイントですので、実際の計算例で詳しくみてみましょう。
たとえば、2020年の5月に購入しているなら、2026年1月1日時点で所有期間が5年と見なされます。2025年5月から2025年12月31日までは、計算上は5年が経過していますが、所有期間が4年とカウントされる点に注意してください。
所有期間は、税率が約2倍も変わる重要な分岐点です。売却しようとしている不動産の所有期間が5年以内かどうかを改めて確認しておきましょう。
不動産売却を5年以内にする場合でも受けられる特例制度
譲渡所得が短期と長期にわけられたのは1965年で、投機的な売買を防ぐために導入されました。
しかし、転勤などにより住み換えせざるを得ない人や、経済的な理由で売却せざるを得ない人もいるため、特例で税金がかからなくなる制度が設けられています。
代表的なものは、マイホームを売却した場合の譲渡所得控除です。居住用として所有している住居を売却するのであれば、長期・短期保有にかかわらず最大3,000万円まで控除が受けられます。
たとえば、4,000万円で購入して住んでいたマンションが6,500万円で売れた場合でも、差額の2,500万円に税金はかかりません。
ただし、一定の条件を満たしていないと特例が受けられない点には注意しましょう。
特に、住宅ローン控除が受けられなくなる点に注意が必要です。
他にも税金控除が適用される要件は、以下のとおりです。
- (イ) 収用等により土地建物を譲渡した場合 ・・・ 5,000万円
- (ロ) マイホームを譲渡した場合 ・・・ 3,000万円
- (ハ) 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合 ・・・ 2,000万円
- (ニ) 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合 ・・・ 1,500万円
- (ホ) 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡した場合・・・1,000万円
- (ヘ) 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合 ・・・ 800万円
- (ト) 低未利用土地等を譲渡した場合 ・・・ 100万円
引用元:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)・国税庁
(ホ)と(ト)は、長期譲渡所得にしか適用できない点に注意しましょう。
なお、令和5年12月31日までは、被相続人の居住用財産を売る場合にも、マイホームと同じ3,000万円の所得控除が適用されます。
不動産売却を5年以内にする場合に注意したいポイント5つ
不動産を売る際には大きな金額が動くこともあり、さまざまな注意点があります。これから紹介するポイントは、情報を知っているか・知らないかだけで差が出るものばかりです。
税金の納付や売却時期を見誤って損をしないためにも、注意すべきポイントを押さえておきましょう。
不動産の査定額を明確にする
譲渡所得を明確にするためには、不動産売却で得られる収入を把握する必要があります。
とはいえ、自身の不動産がいくらで売れるのかをどこで査定すればよいかわからない方もいるのではないでしょうか。
不動産査定の依頼先には、複数の選択肢があります。不動産会社であれば、建物や土地の査定は無料です。より正確な査定額を算出するには訪問査定が必要で、日程調整も含めると数週間かかるケースもあります。そのため、査定サービスへの申し込みは早めにすませておきましょう。
また、査定額の妥当性を判断するには、複数の会社から見積もりを取る必要もあります。1件ずつ依頼して比較するのは時間がかかるため、今すぐ知りたい方は一括査定サービスを利用することをおすすめします。
譲渡所得の申告・特例適用は翌年の確定申告で届け出る
不動産を売却する場合、翌年の確定申告で申請が必要です。計算した譲渡所得を書類に記入し、所得税を納付しましょう。
特例を適用する場合は、以下のような書類の提出が求められます。
- 譲渡所得の内訳
- 戸籍附票の写し
- 各種契約書・証明書
- 取引の明細書
事前に国税庁のチェックシートを確認しておくことをおすすめします。リストにない書類の追加提出を求められることもあるため、余裕を持って準備し、提出まで進めておきましょう。
不動産売却の確定申告のやり方は、こちらの記事「不動産売却で確定申告は必要?必要書類の書き方やいつ手続きするかを解説」を参考にしてください。
マイホーム売却の特例制度には制限がある
マイホームを売却して3,000万円控除の特例制度を受けた翌年と翌々年は、同じ控除を受けられません。税金の控除は投機的な短期売買を対象にしていないため、このような制限がかけられています。
数年でマイホームを2回以上乗り換えるケースに当てはまる場合は注意しましょう。
とはいえ、税金をしっかり納めさえすれば問題ないため、短期間で住み替えを希望される方は高く売却できる方法を検討することに注力していきましょう。
売却の理由をはっきり伝える
不動産を売却する理由は明確にしておきましょう。
5年以内に売り出している築浅物件には「何か理由があるのではないか」と不安を感じる方もいるからです。
理由の一例としては、転勤や親の介護・経済的な理由などがあります。生活環境の変化で仕方なく手放していることが伝われば不信感を抱かれずに見てもらえます。
ただし、売却する不動産に不具合がある場合は正直に申し出てください。売主には契約不適合責任を果たす義務があるため、売却する前に既知の不具合を伝えていないことが判明すると費用を請求される恐れがあります。
売却後のトラブルを避けるためにも、不動産を手放す理由は正直に伝えておきましょう。
5年経過後に売却することも検討する
5年以内に売却すべき理由がないのであれば、所有期間が5年経過するまで待つのもひとつの戦略です。
なぜなら、譲渡所得にかかる税率が41.1%から22.1%まで下がるからです。
判断基準の例として、希望の売却額よりも高値で売れそうか・税金控除の特例が適用できるかのふたつがあります。
譲渡所得の特例制度には条件があるので、国税庁のホームページで確認しておきましょう。
希望の売却額よりも高く売れるかどうかは、不動産会社の査定サービスで確認できます。無料査定を受けられるものがほとんどなので、忘れないうちに査定の依頼をしておき、売却額の目安を確認することをおすすめします。
不動産売却を5年以内にするなら査定額を明確にしよう
不動産売却を5年以内にする場合に得られる利益は短期譲渡所得に該当し、そのうちの41.1%を税金として納める必要があります。
ただし課税されるのは、売却金額から取得費・譲渡費用を差し引いた金額がプラスになる場合のみです。他にも、特定の条件を満たしていれば税金控除が受けられる特例制度で納付を免除される場合もあります。
まずは不動産の売却額と所有期間を明確にし、納めることになる税金を算出してみましょう。
売却するまでの期間に余裕がある方は、今売却すべきか、まだ待つべきなのかも判断できます。
ぜひ、この記事を参考に譲渡所得の仕組みや計算方法を理解し、5年以内に不動産を売る際の税金を算出しましょう。
なお、弊社が提供する不動産一括査定サービスである「サテイエ」は無料でご利用いただけます。現在保有している不動産の価値を知りたい方は、ぜひお気軽にご活用ください。
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