海外在住のまま日本の不動産を売ると、税金の話が一気に複雑に感じやすいです。
特に「買主に源泉徴収される」「確定申告が必要になる」「住民税がどうなるか」でつまずきます。
ただし結論から言うと、ポイントは国内源泉所得としての課税と、売却後の申告手続きに集約できます。
このページでは、国税庁の公表情報を根拠に、海外在住者が不動産売却で損をしないための全体像を整理します。
海外在住者の不動産売却税金は日本で課税され源泉徴収もある
海外在住でも、日本国内の不動産を売って利益が出れば日本で課税されます。
さらに売買代金から源泉徴収されることがあり、申告しないと払い過ぎや不足が残りやすいです。
非居住者でも国内の不動産売却益は日本で課税される
海外勤務などで非居住者に該当しても、日本の国内で生じた所得には日本の所得税が課税されます。
日本国内にある不動産の売却で生じる所得は、典型的な国内源泉所得に当たります。
根拠は国税庁の説明(No.1932 海外勤務中に不動産を売却した場合)で確認できます。
- 海外在住=自動的に課税ゼロではない
- 日本の不動産売却益は日本側の課税対象
- 所得区分は原則として譲渡所得
買主が10.21%を源泉徴収する仕組みがある
非居住者等から土地や建物などを購入し、国内で対価を支払う買主には源泉徴収義務が課されます。
税率は10.21%で、所得税および復興特別所得税として扱われます。
制度の根拠は国税庁(No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき)です。
| 誰が納付するか | 買主が源泉徴収して税務署へ納付 |
|---|---|
| いつ差し引かれるか | 売買代金の支払時 |
| 税率 | 10.21% |
| 対象 | 土地・建物・付属設備・構築物など |
源泉徴収が不要になる例外がある
一定の条件では、買主が源泉徴収をしなくてよい例外があります。
代表例は、個人が自己または親族の居住用に供するために購入し、譲渡対価が1億円以下である場合です。
例外の条件は国税庁(No.2879)および税率整理(No.2884 非居住者等に対する源泉徴収)で確認できます。
- 買主が個人である
- 買主の居住用である
- 売買価格が1億円以下である
- 法人が買主の場合は原則として例外になりにくい
源泉徴収は「確定税額」ではなく仮の天引きになりやすい
10.21%は売却益ではなく売買代金にかかるため、実際の利益と連動しません。
取得費が大きい場合や特別控除が使える場合は、源泉徴収された税額が過大になりやすいです。
逆に利益が大きい場合は、申告後に追加納付が生じることもあります。
- 源泉徴収は売却益の計算を反映しない
- 確定申告で精算しないと過不足が残る
- 赤字でも源泉徴収されるケースがある
譲渡所得の基本計算は「収入−取得費−譲渡費用−特別控除」
税金は売買代金そのものではなく、譲渡所得(利益)をベースに計算します。
国税庁の基本式は「収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除=課税譲渡所得金額」です。
計算の根拠は国税庁(No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき))です。
| 収入金額 | 譲渡代金や未経過固定資産税等相当額など |
|---|---|
| 取得費 | 購入代金・仲介手数料・登記費用など |
| 譲渡費用 | 仲介手数料・測量費・解体費など |
| 特別控除 | 一定要件で3,000万円など |
住民税は「翌年1月1日の住所」で課税関係が変わる
一般に住民税は、賦課期日である1月1日に国内に住所があるかどうかが重要になります。
売却の翌年1月1日時点で日本国内に住所がなければ、住民税の所得割がかからない整理が示されています。
考え方の参考として、解説資料(全日本不動産協会の税務FAQ)も確認しておくと安心です。
- 売却年の翌年1月1日に国内住所がないと住民税が変わる
- ただし個別事情で判断が変わる可能性がある
- 迷う場合は市区町村と税務署で確認する
源泉徴収10.21%で慌てないために契約前に見るべき点
海外在住者の不動産売却では、契約前の確認不足がそのまま税金トラブルに直結します。
とくに買主の属性と支払方法が、源泉徴収の有無や事務負担に影響します。
買主が個人か法人かで源泉徴収の前提が変わる
源泉徴収の有無は、買主が個人か法人かで判断が分かれやすいです。
個人の居住用購入で1億円以下なら源泉徴収不要の例外があり、法人では原則として源泉徴収が求められます。
基準は国税庁(No.2879)で確認できます。
- 買主の名義区分を売買契約書で明確にする
- 居住用か投資用かの目的を確認する
- 例外に該当しないなら源泉徴収前提で資金計画を組む
売買価格の設定が源泉徴収の要否に影響することがある
例外要件に「譲渡対価が1億円以下」というラインがあるため、売買価格が境界付近だと判断がシビアになります。
端数調整のつもりが源泉徴収の要否に影響し、手取り見込みが変わることがあります。
源泉徴収ルール自体は国税庁(No.2884)で整理されています。
| 確認点 | 売買価格が1億円を超えるか |
|---|---|
| 影響 | 買主が個人でも源泉徴収が必要になり得る |
| 注意 | 手取りが一時的に大きく減る可能性 |
| 対策 | 決済前に源泉徴収後の入金額を試算 |
決済の場所と送金方法で実務負担が増えることがある
海外送金や代理受領を絡めると、本人確認や書類のやり取りが増えやすいです。
源泉徴収税の納付主体は買主なので、買主側の手続き負担が増えると決済が遅れる原因になります。
決済手段は不動産会社と司法書士に早めに共有して、段取りを固定しておくのが安全です。
- 海外送金の着金日を逆算して決済日を設定
- 本人確認書類の英語表記と翻訳要否を事前確認
- 委任状が必要な場面を洗い出す
源泉徴収後の手取りを前提に資金繰りを組む
源泉徴収されると、売買代金の約89.79%が一旦の入金額になります。
この差額は確定申告で精算されるため、短期的な資金不足を起こさない設計が大切です。
制度説明は国税庁(No.2879)を軸に把握できます。
| 入金の考え方 | 売買代金-(売買代金×10.21%) |
|---|---|
| 起こりがちな問題 | 引越し費用やローン完済資金が不足 |
| 対策 | 決済前に精算表で差引後の金額を確認 |
| 次のアクション | 申告で還付・追加納付を確定させる |
譲渡所得の計算で税額が大きく変わるポイント
税金は「売れた金額」ではなく「利益」にかかるため、計算の精度が最重要です。
特に取得費の扱いと特別控除の適用可否で、納税額が大きく変動します。
取得費が不明だと概算計算になり税負担が重くなりやすい
購入時の契約書や領収書が見つからないと、取得費を十分に主張できないことがあります。
取得費が小さくなるほど課税譲渡所得が膨らむため、結果として税金が増えやすいです。
譲渡所得の基本式は国税庁(No.1440)で確認できます。
- 売買契約書
- 仲介手数料の領収書
- 登記費用や印紙代の記録
- リフォーム費用の領収書
建物は減価償却を考慮して取得費を計算する
建物部分は、保有期間に応じた減価償却を反映して取得費を調整します。
土地と建物の按分が不適切だと計算がぶれ、申告後の修正リスクが上がります。
実務上は、取得時契約書の内訳や固定資産税評価額などで按分根拠を整えます。
| 論点 | 土地と建物の区分 |
|---|---|
| よくある不足 | 内訳不明で按分根拠が弱い |
| 補強資料 | 売買契約書の内訳・評価証明など |
| 注意 | 賃貸利用があると計算が複雑化 |
譲渡費用は漏れやすいが積み上げで差が出る
譲渡費用は「売るために直接かかった費用」で、税額を下げる方向に効きます。
仲介手数料だけで終わらず、測量費や解体費なども該当し得ます。
考え方の基礎は譲渡所得の説明(No.1440)に沿って整理します。
- 仲介手数料
- 測量費
- 建物の解体費用
- 立退料
- 売買契約書の印紙代
3,000万円特別控除や空き家特例が使えるかを確認する
居住用財産の売却で一定要件を満たせば、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
相続した空き家の売却にも、別枠で3,000万円控除の特例が用意されています。
要件の確認は国税庁(No.3302 マイホームを売ったときの特例)(No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)が確実です。
| 特例名 | 居住用財産の3,000万円特別控除 |
|---|---|
| 控除額 | 最高3,000万円 |
| 別枠の代表例 | 相続空き家の3,000万円特別控除 |
| 注意 | 要件を満たさないと適用不可 |
確定申告と納税管理人が海外在住者の山場になる
海外在住者の不動産売却では、申告そのものより「日本での手続き窓口」が問題になります。
納税管理人の届出と申告スケジュールを押さえるだけで、実務はかなり安定します。
納税管理人を選任して届出書を提出する
非居住者が確定申告等を行う場合、納税管理人を定めて届出書を提出する必要があります。
届出後は税務署からの書類が納税管理人宛てに送付され、やり取りがスムーズになります。
根拠は国税庁(No.1923 海外勤務と納税管理人の選任又は解任)です。
- 納税管理人は個人でも法人でもよい
- 納税地を所轄する税務署に提出する
- 帰国時は解任届も必要になる
申告期間は原則として翌年2月16日から3月15日
不動産を売却した年の翌年に、譲渡所得の確定申告を行うのが原則です。
期限を過ぎると還付が遅れたり、追加税が発生したりするリスクが高まります。
海外在住者の売却に関する考え方は国税庁(No.1932)を起点に確認できます。
| 対象年 | 売却した年 |
|---|---|
| 申告時期 | 翌年2月16日〜3月15日が原則 |
| 提出先 | 納税地を所轄する税務署 |
| 体制 | 納税管理人経由で手続きを組む |
源泉徴収された税金は申告で還付になることがある
源泉徴収は売買代金ベースなので、利益が小さいと還付になりやすいです。
特別控除で課税所得がゼロになる場合でも、源泉徴収分が戻る余地があります。
還付の前提は「確定申告で精算すること」なので、放置しないことが重要です。
- 取得費と譲渡費用を正確に集める
- 適用できる特例を漏れなく確認する
- 源泉徴収票や精算書類を保管する
海外在住のまま進めるなら専門家への依頼範囲を決める
海外在住者の実務は「不動産会社」「司法書士」「税理士」の役割分担が鍵です。
税理士に丸投げせず、どこまでを依頼しどこを自分で準備するかを先に決めると費用が読めます。
納税管理人を税理士に依頼するケースも多いため、契約時に責任範囲を明記します。
| 不動産会社 | 販売活動・契約調整・買主対応 |
|---|---|
| 司法書士 | 登記・本人確認・決済実務 |
| 税理士 | 譲渡所得計算・申告・納税管理人対応 |
| 本人 | 取得費資料・居住実態資料の準備 |
海外側の課税と二重課税を避ける整理
日本で課税される一方で、居住国でも課税される国は少なくありません。
二重課税にならないよう、租税条約と外国側の税額控除制度を前提に全体を設計します。
多くの租税条約では不動産の譲渡益は所在国でも課税できる
土地や建物など不動産の譲渡益は、不動産の所在する国でも課税できる形が一般的です。
国税庁の源泉徴収説明でも、多くの租税条約が所在国課税を認める旨に触れられています。
確認先は国税庁(No.2879)です。
- 日本の不動産は日本側の課税権が強い
- 居住国でも申告が必要なことがある
- 条約適用の可否は居住国と条約内容で決まる
居住国の申告では日本で納めた税の証拠が重要になる
外国側で税額控除などを受けるには、日本で課税された事実を示す書類が求められやすいです。
源泉徴収がある場合は源泉徴収に関する書類、確定申告をした場合は申告書控えや納付書類が軸になります。
書類は後から集めにくいので、決済から申告完了まで一貫して保管します。
| 保管するもの | 売買契約書・精算書・領収書類 |
|---|---|
| 日本側の税証憑 | 源泉徴収関連資料・申告書控え・納付記録 |
| 海外提出の注意 | 翻訳やアポスティーユが必要な場合がある |
| おすすめ | PDF化してクラウド保管 |
為替の影響で海外側の利益計算がぶれることがある
居住国で外貨換算して課税所得を計算する国では、為替レートの違いが利益に影響します。
日本円ベースで利益が小さくても、換算タイミング次第で海外側の課税所得が増えることがあります。
海外側の申告ルールは居住国によるため、現地の税務専門家に確認するのが安全です。
- 売却代金の換算ルール
- 取得価額の換算ルール
- 経費の換算ルール
- 申告期限と必要書類
二重課税を避けるための段取りは売却前に作る
売却後に慌てて動くと、居住国の申告期限に間に合わないことがあります。
日本側は源泉徴収と確定申告が絡むため、税額が確定するまで時間がかかりやすいです。
売却前に「日本側の申告完了予定日」と「居住国の申告期限」を並べて、逆算で動きます。
| 売却前に決める | 納税管理人・依頼先・書類の保管方法 |
|---|---|
| 日本側の節目 | 決済・源泉徴収・翌年の確定申告 |
| 海外側の節目 | 居住国の申告期限・税額控除の手続き |
| 成功しやすい形 | 両国の税務担当者を先に接続しておく |
海外から不動産を売るときの税金対応を軽くする要点
海外在住でも、日本の不動産売却益は日本で課税されるのが基本です。
源泉徴収10.21%が起きるかどうかを契約前に判定し、手取りのズレを資金計画に織り込むことが重要です。
譲渡所得は資料の集め方で税額が変わるため、取得費と譲渡費用を漏れなく押さえます。
納税管理人を選任して確定申告で精算すれば、還付も追加納付も迷いにくくなります。
居住国側の申告まで含めて、書類保管とスケジュールを売却前に作ることが最短ルートです。

