築40年のマンションを手放すべきか賃貸に回すべきかは、感情だけで決めると後悔しやすいテーマです。
築年数が進んだマンションは、売却でも賃貸でも「管理状態」と「修繕負担」が結果を左右します。
さらに、住む予定の有無や住宅ローン残債の扱いで、選択肢そのものが変わるケースもあります。
この記事では、売る場合と貸す場合の収支の作り方を先に整理し、最後に実務の進め方まで落とし込みます。
判断に迷う人ほど、比較の軸を固定すると結論が一気に出やすくなります。
築40年のマンションを売るか貸すかは収支と将来計画で結論が出る
結論は、将来その部屋に住む可能性と、現実的な収支の強さで決めるのが最短です。
築古マンションは「家賃が入るから貸す」が必ずしも正解ではなく、修繕と空室で赤字化することがあります。
逆に、売却益が小さくても固定費と手間から解放される価値が大きい人もいます。
ここでは最初に、判断に必要な前提と、売却向きと賃貸向きの典型パターンを整理します。
最初に確認したい4つの前提
売るか貸すかの前に、選択肢を狭めるための前提確認を行います。
前提が曖昧なままだと、査定や家賃相場を見ても判断がぶれやすくなります。
- 将来その部屋に住む可能性があるか
- 住宅ローン残債があるか
- 管理状態と修繕積立金が健全か
- 直近で大規模修繕や設備更新が予定されているか
売却が向きやすいケースの見分け方
売却が向くのは、収支よりも「固定費と不確実性」を消す価値が大きいケースです。
築40年は設備更新や配管系の問題が表面化しやすく、突発費用のストレスが増えがちです。
| 状態 | 将来住む予定が薄い |
|---|---|
| 資金 | まとまった現金が必要 |
| 負担 | 管理費・修繕積立金が重い |
| リスク | 空室や家賃下落を許容しにくい |
| 時間 | 賃貸運用の手間を避けたい |
賃貸が向きやすいケースの見分け方
賃貸が向くのは、立地に家賃需要があり、費用を織り込んでも黒字化の見込みが立つケースです。
築古でも駅近や生活利便性が強い場所は、家賃が安定しやすい傾向があります。
| 立地 | 駅徒歩や需要が強いエリア |
|---|---|
| 将来 | 数年後に住み替えで戻る可能性がある |
| 収支 | 管理費と修繕積立金込みで手残りが出る |
| 体制 | 管理会社に委託できる |
| 売却 | 今は売値が伸びにくく時期を待ちたい |
迷ったときの結論の出し方
迷ったら「売却の手残り」と「賃貸の5年手残り」を同じ物差しで比べます。
賃貸は家賃から税金と費用を引いた後の純額で比較しないと、実感と数字がズレます。
- 売却の手残り=売却価格−ローン完済額−諸費用−税金
- 賃貸の手残り=年間家賃−空室想定−管理費用−修繕想定−税金
- 将来住む予定があるなら「売ったら戻れないコスト」も加味
- 赤字の可能性が高いなら売却優先で考える
築40年マンションの売却では管理状態が価格を左右する
築40年の売却では、築年数そのものよりも「管理の良し悪し」が価格に直結します。
買主はリフォーム費だけでなく、将来の修繕負担や管理組合の運営状況を強く気にします。
売却を有利に進めるには、見られるポイントを先に整えておくことが重要です。
立地の強さは築古でも武器になる
築古でも立地が強いマンションは、買主の候補が増えやすい傾向があります。
通勤利便性と生活利便性は、築年数を上回る評価軸になりやすいからです。
- 駅距離と主要駅へのアクセス時間
- スーパーや病院など生活施設の近さ
- 災害リスクやハザードの印象
- 周辺の再開発や人口動態の変化
管理費と修繕積立金の水準で印象が決まる
買主は月々のランニングコストを総額で見ます。
管理費と修繕積立金が高い場合は、それに見合う管理品質が説明できるかが重要です。
| 確認項目 | 管理費と修繕積立金の合計額 |
|---|---|
| 比較軸 | 同エリア同規模マンションとの水準差 |
| 評価材料 | 清掃状況や共用部の劣化具合 |
| 注意点 | 駐車場収入の減少で将来増額しやすい |
| 対策 | 資料を揃えて「高い理由」を説明できる状態にする |
長期修繕計画と積立残高は必ず見られる
築40年は大規模修繕が複数回進んでいる時期で、計画と実績の整合性が問われます。
長期修繕計画が曖昧だと、買主は将来の一時金を警戒します。
- 長期修繕計画が最新の状態か
- 積立金残高と今後の工事項目の整合
- 過去の修繕履歴と工事内容の記録
- 管理組合の運営が安定しているか
旧耐震かどうかで購入層が変わる
築40年だと、建築時期によっては旧耐震基準に該当する可能性があります。
旧耐震は住宅ローンの通りやすさや保険の考え方で、買主の選別が強く起きます。
| 確認項目 | 建築確認の時期と耐震基準の扱い |
|---|---|
| 影響 | 金融機関の融資条件に影響することがある |
| 資料 | 耐震診断や補強工事の有無の資料 |
| 売り方 | 実需向けか投資向けかターゲットを明確化 |
| 注意点 | 断定ではなく事実と資料で説明する |
貸す場合は家賃より先に赤字ラインを見極める
賃貸は家賃収入が見える分、判断が簡単に見えて落とし穴があります。
築40年は修繕と設備交換が重なりやすく、実質手残りが削られやすいからです。
ここでは、賃貸を選ぶなら必須になる収支と運用体制の作り方を整理します。
家賃相場は「成約帯」で見る
募集家賃ではなく、実際に決まりやすい家賃帯で収支を組むことが重要です。
築古は競合物件も多く、設備差で数千円単位の調整が頻発します。
- 同マンション内の過去募集と成約の傾向
- 同エリア同間取りの築浅との設備差
- 家賃を下げずに決めるための条件設定
- 空室期間を保守的に置いた試算
管理委託は費用と安心の交換になる
賃貸運用の手間は、入居中よりも退去時とトラブル対応で増えます。
委託費を払ってでも、時間コストを買う価値がある人は多いです。
| 方式 | 管理委託 |
|---|---|
| メリット | 募集から対応まで一括で任せやすい |
| デメリット | 手数料で手残りが減る |
| 注意点 | 対応品質は会社で差が出る |
| 向く人 | 遠方居住や本業が忙しい人 |
リフォームは「必要最低限」で勝てる形にする
築40年でも、リフォームの当て方次第で募集力は上げられます。
ただしやり過ぎると回収期間が伸びて、賃貸のメリットが薄くなります。
- 水回りは交換よりも機能回復で済む場合がある
- 床と壁の印象で内見の評価が大きく変わる
- ターゲットが単身かファミリーかで最適解が違う
- 賃貸では高級仕様より清潔感が強い武器になる
住宅ローンが残るなら金融機関の扱いを確認する
住宅ローンは基本的に自己居住を前提とした商品です。
無断で賃貸に出すと契約違反となる可能性があるため、事前確認が欠かせません。
| 確認先 | 借入先の金融機関 |
|---|---|
| 確認内容 | 賃貸転用の可否と条件 |
| 代替案 | 条件変更やローンの切替の相談 |
| 注意点 | 自己判断で進めない |
| 影響 | 売却時の返済計画にも関わる |
税金と手残りは売却と賃貸で計算式がまったく違う
売却の手残りは一度きりの大きな数字になり、賃貸の手残りは毎年積み上がる数字になります。
比較のためには、税金の仕組みと控除の有無を理解して同じ条件にそろえる必要があります。
ここでは、最低限押さえるべき売却税制と賃貸の課税のポイントをまとめます。
売却益は譲渡所得として分離課税になる
土地や建物を売ったときの利益は、給与などとは別に計算する譲渡所得として扱われます。
税率は所有期間などで変わるため、最初に区分を確認します。
- 譲渡所得は「売却価格−取得費−譲渡費用」で計算する
- 所有期間で短期と長期に分かれて税率が変わる
- 制度の概要は国税庁の説明を確認する
- 国税庁:No.3202 譲渡所得の計算のしかた
マイホームなら3,000万円特別控除の対象になり得る
自分が住んでいた家を売る場合、一定の要件を満たすと譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
要件に当てはまるかどうかで税額が大きく変わるため、売却前に確認が重要です。
| 特例 | 居住用財産の3,000万円特別控除 |
|---|---|
| 対象 | 居住用として使っていた家屋と敷地 |
| 控除額 | 譲渡所得から最高3,000万円 |
| 注意点 | 親族など特別関係者への売却は対象外になり得る |
| 根拠 | 国税庁:No.3302 マイホームを売ったときの特例 |
軽減税率は長期保有のマイホームで検討する
長期保有のマイホーム売却では、一定の条件で軽減税率が適用できる特例があります。
3,000万円特別控除と併用できるケースもあるため、セットで確認します。
| 論点 | 軽減税率の対象になるか |
|---|---|
| 対象 | 一定要件を満たす居住用財産の譲渡 |
| 関係 | 3,000万円特別控除と併用できる場合がある |
| 注意点 | 他の特例の適用状況で使えない場合がある |
| 根拠 | 国税庁:No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例 |
賃貸収入は不動産所得として毎年課税される
賃貸の家賃収入は不動産所得として扱われ、必要経費を差し引いた所得に課税されます。
経費には修繕費や管理費のほか、建物部分の減価償却費が含まれます。
- 家賃収入から必要経費を引いた金額が所得になる
- 建物の構造と用途で耐用年数が異なる
- 住宅用の鉄筋コンクリート造は耐用年数表で確認できる
- 国税庁:主な減価償却資産の耐用年数表(PDF)
売却か賃貸かを決めた後にやるべき実務の順番
判断が固まったら、次は手続きの順番を誤らないことが重要です。
築40年は資料の有無が信頼に直結し、準備不足が価格交渉や空室の原因になります。
ここでは売却と賃貸それぞれの進め方と、業者選びの要点を整理します。
売ると決めたときの進め方
売却は、相場把握と資料準備が最初の勝負になります。
築古ほど「管理が良い」ことを資料で示せると交渉が安定します。
- 複数社で査定を取り、根拠の説明がある会社を残す
- 管理規約や総会議事録など資料をまとめる
- 室内の修繕は費用対効果の高い部分に絞る
- 売却後の住み替えや引渡し条件を先に決める
貸すと決めたときの進め方
賃貸は、募集条件と運用体制を先に決めるほど空室が短くなります。
築古は条件が曖昧だと競合に埋もれやすいので、ターゲットを明確にします。
- 家賃と募集条件を相場の成約帯で設定する
- 原状回復と設備の基準を管理会社とすり合わせる
- 入居審査と保証会社の方針を決める
- 退去時の費用負担ルールを契約で明確にする
不動産会社と管理会社は「築古対応力」で選ぶ
築40年は、売買でも賃貸でも担当者の経験値で結果がぶれます。
説明の丁寧さと、過去の成約事例の提示ができるかを見ます。
| 確認軸 | 同エリア築古の成約実績を出せるか |
|---|---|
| 提案 | 値付けや募集条件の根拠が明確か |
| 対応 | 連絡の速さとトラブル時の動き |
| 費用 | 手数料体系が分かりやすいか |
| 相性 | 不安点を言語化してくれるか |
同時査定で比較すると決断が早くなる
売却査定と賃貸査定を同時に取ると、数字で迷いが減ります。
築40年は条件次第で結果がぶれやすいので、複数パターンで比較するのが有効です。
- 売却は強気と現実の2パターンで手残り計算を作る
- 賃貸は空室期間を長めに置いた保守シナリオも作る
- 大規模修繕の時期が近いなら追加費用を織り込む
- 将来住む可能性があるなら戻るコストを必ず考慮する
築40年のマンションを売るか貸すかは数字で比べて最後は暮らしで決める
築40年のマンションは、売却でも賃貸でも「管理状態」と「修繕負担」を無視すると失敗しやすいです。
まずは将来住む予定とローン状況を確定し、次に売却手残りと賃貸の純手残りを同じ条件で比較します。
税金の特例が使えるかどうかで手残りが大きく変わるため、国税庁の要件を確認してから動くと安心です。
最後は、現金化の必要性と手間の許容度という暮らしの軸で決断すると、納得感の高い選択になります。
数字と暮らしの両方がそろったとき、その結論はブレにくくなります。

