不動産を売って利益が出たとき、「給与と合算されて税率が上がるのか」が最初の不安になりやすいです。
結論から言うと、土地や建物の売却益は「分離課税」として、原則は給与などと分けて税額を計算します。
ただし、分離課税でも確定申告の手続き自体は他の所得と一緒に行うため、計算の流れが分かりづらい点が落とし穴です。
さらに、所有期間で税率が大きく変わり、使える特例の有無で手取りが大きく動きます。
この記事では、不動産売却益が分離課税になる理由、税率、計算式、特例、申告手順を一連の流れで整理します。
不動産売却益は分離課税で課税される
不動産の売却益(譲渡所得)は、給与などと合算せず、分離して税額を計算するのが原則です。
まずは「分離課税とは何か」「何が対象か」「税率はどう決まるか」を押さえると全体像が見えます。
分離課税とは何か
分離課税とは、特定の所得を給与所得などと合算せず、別枠で税額を計算する課税方式です。
土地や建物の譲渡所得については、分離課税制度が採用されていることが明記されています。
根拠は国税庁のタックスアンサー「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」で確認できます。
| 確認ポイント | 土地・建物の譲渡所得は分離課税 |
|---|---|
| 根拠 | 国税庁 No.1440 |
分離課税の対象になる売却益
不動産売却益として扱われる中心は、土地や建物の譲渡による譲渡所得です。
土地そのものだけでなく、借地権など土地の上に存する権利が含まれる点も要注意です。
対象の考え方は国税庁の案内「土地や建物を売ったとき」でも整理されています。
- 土地
- 建物
- 借地権など土地の上に存する権利
- 海外にある土地・建物も対象になり得る
税率は所有期間で変わる
不動産売却益の税率は、長期譲渡所得か短期譲渡所得かで変わります。
区分の基準は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかです。
この考え方は国税庁の案内「土地や建物を売ったとき」にも示されています。
| 区分 | 長期譲渡所得/短期譲渡所得 |
|---|---|
| 判定基準 | 売却年の1月1日時点で5年超かどうか |
| 参考 | 国税庁 土地や建物を売ったとき |
申告の手続きは他の所得と一緒に行う
分離課税は「税額計算が別枠」という意味で、申告書の提出が別になるわけではありません。
譲渡所得がある年は、原則として確定申告で譲渡所得の計算を添付して申告します。
国税庁の案内でも、分離課税だが確定申告の手続きは他の所得と一緒に行う旨が説明されています。
- 分離課税=税額計算を分ける
- 確定申告=所得をまとめて手続きする
- 譲渡所得の内訳書などの添付が必要になりやすい
売却損は原則として他の所得と通算できない
土地や建物の譲渡で損失が出ても、原則は給与所得などとの損益通算ができません。
そのため「利益が出た年だけ税金がかかる」という単純な理解だと、損失時の扱いでつまずきます。
例外としてマイホーム等で損失を控除できる特例が用意されている場合があります。
| 原則 | 土地・建物の譲渡損失は損益通算不可 |
|---|---|
| 例外 | マイホーム等で損失特例がある場合 |
| 参考 | 国税庁 土地や建物を売ったとき |
分離課税の税率は所有期間で決まる
不動産売却益の分離課税で最重要なのは、所有期間によって税率が大きく変わる点です。
長期か短期かで手取りが変わるため、売却時期の判断にも直結します。
長期譲渡所得の基本税率
長期譲渡所得は、課税長期譲渡所得金額に対して所得税15%が基本です。
加えて住民税が課税され、さらに一定期間は復興特別所得税も上乗せされます。
国税庁「No.1440」に税額計算の枠組みが示されています。
| 区分 | 長期譲渡所得 |
|---|---|
| 所得税 | 課税長期譲渡所得金額×15% |
| 住民税 | 別途課税(一般に5%として案内されることが多い) |
| 参考 | 国税庁 No.1440 |
短期譲渡所得の基本税率
短期譲渡所得は、長期より税率が高く設定されています。
国税庁「No.1440」では、課税短期譲渡所得金額×30%が所得税として示されています。
短期に該当するかどうかは、売却年の1月1日基準で判定します。
| 区分 | 短期譲渡所得 |
|---|---|
| 所得税 | 課税短期譲渡所得金額×30% |
| 参考 | 国税庁 No.1440 |
所有期間の判定は「売却年の1月1日」基準
所有期間の判定は、売却日ではなく、売却した年の1月1日時点で行います。
たとえば12月に売る場合でも、翌年1月1日ではない点が重要です。
判定の基準は国税庁の案内に明記されています。
- 判定時点は売却年の1月1日
- 5年超なら長期、5年以下なら短期
- 売却のタイミングで区分が変わる年がある
復興特別所得税は一定期間上乗せされる
譲渡所得の所得税には、一定期間、復興特別所得税が上乗せされます。
国税庁「No.1440」では、平成25年から令和19年まで復興特別所得税として基準所得税額の2.1%を併せて申告・納付する旨が示されています。
税率の丸暗記よりも「所得税額に対して上乗せ」という仕組みを理解すると計算ミスを防げます。
- 復興特別所得税は基準所得税額に上乗せ
- 適用期間が定められている
- 根拠の確認は国税庁の記載が確実
譲渡所得の金額は収入−取得費−譲渡費用で計算する
税率の前に、そもそもの「課税される利益」を正しく計算することが重要です。
譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
計算式の基本
譲渡所得の金額は、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて考える点がポイントです。
計算の考え方は国税庁「No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」に整理されています。
| 基本式 | 譲渡所得=収入金額−取得費−譲渡費用 |
|---|---|
| 参考 | 国税庁 No.3202 |
取得費に入れられる主な費用
取得費は、購入代金だけではなく、取得に要した費用や改良費などを含めた合計です。
建物部分については減価償却を考慮するため、実務では資料の整理が欠かせません。
取得費の定義は国税庁「No.3202」で確認できます。
- 購入代金
- 購入手数料
- 改良費
- 設備費
- 建物は減価償却費相当額を控除
取得費が分からないときの考え方
古い不動産や相続などで取得費の資料がそろわないケースがあります。
その場合、一定の条件では譲渡価額の5%を取得費とする「概算取得費」を使えることがあります。
国税庁「No.3202」に取得費が分からない場合の取扱いが示されています。
| 論点 | 取得費が分からない場合 |
|---|---|
| 扱い | 概算取得費として譲渡価額の5%を用いることがある |
| 参考 | 国税庁 No.3202 |
譲渡費用に入れられる主な費用
譲渡費用は、不動産を売るために直接かかった費用です。
仲介手数料だけでなく、状況によっては測量費や立退料などが含まれることがあります。
範囲の説明は国税庁「No.3202」で確認できます。
- 仲介手数料
- 測量費
- 売買契約書の印紙代
- 立退料
- 取壊し費用(更地にして売る場合など)
特例を使うと不動産売却益の税負担を減らせる
分離課税でも、一定の要件を満たすと税負担を大きく減らせる特例があります。
とくにマイホームの売却は、控除や軽減税率の有無で結果が大きく変わります。
居住用財産の3,000万円特別控除
マイホームを売ったときは、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
この特例は所有期間の長短に関係なく適用できる点が特徴です。
根拠は国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」で確認できます。
| 特例名 | 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除 |
|---|---|
| 効果 | 譲渡所得から最高3,000万円を控除 |
| 所有期間 | 長短に関係なく適用され得る |
| 参考 | 国税庁 No.3302 |
マイホーム売却の軽減税率
一定の要件に当てはまる場合、マイホームの長期譲渡所得は通常より低い税率で計算できる特例があります。
3,000万円特別控除と同時に検討されることが多いため、要件確認の順序が重要です。
制度の概要は国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」で確認できます。
- 対象は原則としてマイホームの譲渡
- 一定の要件に該当する必要がある
- 適用の可否で税額が大きく変わる
売却損が出たときに検討したい特例
原則として譲渡損失は他の所得と通算できません。
しかしマイホームの売却などでは、損失を控除できる特例が案内されています。
損失時の扱いも国税庁の案内「土地や建物を売ったとき」で方向性をつかめます。
| 原則 | 譲渡損失は損益通算できない |
|---|---|
| 検討 | マイホーム等で損失特例がある場合がある |
| 参考 | 国税庁 土地や建物を売ったとき |
特例は「使えるのに使わない」が最も損
特例は自動適用ではなく、原則として確定申告で要件を満たすことを示して適用を受けます。
要件の思い込みで外れるケースもあるため、売却前から資料をそろえることが安全です。
適用要件の一次情報は国税庁の該当ページで必ず確認してください。
- 特例は申告して初めて適用される
- 売却後に資料不足が判明すると詰みやすい
- 迷ったら国税庁の要件を先に確認する
確定申告で分離課税の譲渡所得を申告する手順
不動産売却益の分離課税は、税額計算が別枠でも、申告の作業は確定申告の流れで行います。
必要書類と作業順を把握しておくと、直前に慌てずに済みます。
申告が必要になりやすいケース
売却で利益が出た場合は、原則として譲渡所得の申告が必要です。
特例を使って税額がゼロになる可能性がある場合でも、適用を受けるために申告が必要なことがあります。
詳細は個別事情で変わるため、国税庁の案内を起点に判断します。
- 売却益が出た
- 特例の適用を受けたい
- 所有期間の判定や取得費の整理が必要
準備する書類の全体像
譲渡所得の申告では、売買契約書や仲介手数料の領収書など、金額の根拠資料が重要です。
取得費を説明できる資料があるほど、課税所得を適正に圧縮できます。
計算の考え方は国税庁「No.3202」で確認しつつ、手元資料をそろえていきます。
| カテゴリ | 例 |
|---|---|
| 売却の根拠 | 売買契約書、決済書類 |
| 取得費の根拠 | 購入時契約書、領収書、改良・設備の資料 |
| 譲渡費用の根拠 | 仲介手数料、測量費、印紙税の資料 |
| 参考 | 国税庁 No.3202 |
計算は「課税譲渡所得金額」まで落とし込む
収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて譲渡所得を計算します。
そのうえで、3,000万円特別控除など使える特例があれば控除後の金額を課税対象として整理します。
この流れを踏むことで、税率を掛ける対象が明確になります。
- 収入金額を確定する
- 取得費と譲渡費用を整理する
- 特例の控除後に課税対象を確定する
迷ったときの確認先を固定する
不動産売却益の分離課税は、ネット記事の要約だけだと条件の抜け漏れが起きやすい分野です。
まず国税庁の該当ページで制度の骨格を確認し、次に自分のケースに当てはめていくのが確実です。
特例の要件は国税庁「No.3302」「No.3305」など一次情報に当たると判断が安定します。
| 論点 | 参照先 |
|---|---|
| 分離課税の枠組み | 国税庁 No.1440 |
| 譲渡所得の計算 | 国税庁 No.3202 |
| 3,000万円控除 | 国税庁 No.3302 |
| 軽減税率 | 国税庁 No.3305 |
不動産売却益の分離課税で迷ったら最初に確認したいこと
不動産売却益は、原則として分離課税で計算され、給与などと合算して税率が跳ね上がる仕組みではありません。
税額を左右する最大要因は、売却年の1月1日時点で5年を超えるかどうかという所有期間の区分です。
次に重要なのは、取得費と譲渡費用をどこまで根拠資料で積み上げられるかという計算の精度です。
マイホームなら3,000万円特別控除や軽減税率などの特例で結果が大きく変わるため、売却前から要件確認と資料準備を進めるのが安全です。
判断に迷ったら、国税庁の一次情報を起点にして「区分」「計算」「特例」「申告」の順で整理すると、分離課税の全体像が崩れません。

