戸建てを売却したあとに確定申告が必要かどうかは、売却した年に「譲渡所得」が出たかどうかで決まる。
会社員でも年末調整とは別枠になるため、不動産の売却益があるなら自分で申告するのが基本になる。
一方で、利益が出ていても3,000万円特別控除などの特例で税額がゼロになる場合があり、申告の要否が直感とズレやすい。
この記事では、申告が必要な境界線と、計算で迷うポイント、使える特例、必要書類までを戸建て売却に絞って整理する。
戸建て売却の確定申告は利益が出たら原則必要
戸建てを売って利益が出た場合は、原則として確定申告が必要になる。
判断は「売った金額」ではなく、「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」で算出される譲渡所得がプラスかどうかで行う。
国税庁の案内でも、土地や建物を売却して計算の結果、譲渡所得金額(利益)がある場合は原則として確定申告が必要とされている。
根拠の一次情報として、国税庁の確定申告特集(不動産等を売却した方へ)も確認しておくと安心だ。
譲渡所得がプラスなら申告が原則になる
戸建て売却の確定申告は、譲渡所得がプラスになるかどうかが出発点になる。
譲渡所得は、譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するのが基本だ。
計算式そのものはシンプルでも、取得費や譲渡費用の範囲で迷う人が多い。
国税庁|No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)。
所有期間で税率が大きく変わる
戸建て売却の税率は、売った年の1月1日時点の所有期間が5年超か5年以下かで大きく変わる。
5年超は長期譲渡所得、5年以下は短期譲渡所得となり、短期は税率が重くなるため要注意だ。
まずは所有期間の判定ルールを先に確定させると、計算の全体像が崩れにくい。
会社員でも年末調整では完結しない
戸建て売却で生じる譲渡所得は、給与の年末調整で処理される範囲ではない。
そのため、会社員でも不動産売却に関する申告は自分で行う必要がある。
副業の有無に関係なく、売却益が出たかどうかで申告要否を判定する。
税額がゼロでも申告が必要なパターンがある
譲渡所得が出ていても、特例を適用して課税譲渡所得がゼロになることがある。
この場合でも、特例適用のために確定申告を行うのが基本となる。
代表例が「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」で、申告しないと控除を受けられない。
申告の期限を過ぎると不利になりやすい
譲渡所得の申告期限は、原則として通常の所得税の確定申告期限と同じ扱いになる。
期限を過ぎると、特例適用や手続きがスムーズに進まない可能性があるため、早めに準備しておきたい。
申告期限の扱いは国税庁のタックスアンサーでも確認できる。
戸建て売却の確定申告で最初に決めること
最初に決めるべきは、譲渡所得が出るか、所有期間が長期か短期か、特例を使うかの3点だ。
この3点が決まると、必要書類と入力手順が一気に具体化する。
逆にここが曖昧なままだと、領収書や契約書の集め方がブレて二度手間になりやすい。
確定申告が不要になりやすいケースを整理
戸建て売却でも、必ずしも全員が確定申告をするわけではない。
ただし「不要に見えるけれど実は必要」という落とし穴があるため、境界線を条件で整理しておくことが重要だ。
譲渡所得がマイナスなら申告が不要なことが多い
取得費や譲渡費用を差し引いた結果、譲渡所得がマイナスなら課税対象が生じないことが多い。
この場合、原則として譲渡所得に対する所得税は発生しないため、申告不要となる場面が出てくる。
ただし、損失を他の制度で活かしたい場合は話が変わる。
- 取得費が分からず概算で計算していないか
- 譲渡費用を入れ忘れていないか
- 共有名義で按分が必要ではないか
- 特例の選択で有利不利が逆転しないか
計算の前提が誤ると、本当はプラスなのにマイナスと誤認することがある。
申告が必要かどうかの早見表を作って判断する
迷ったら、まず譲渡所得がプラスかマイナスか、特例を使うかどうかで分岐させると判断しやすい。
特例で税額がゼロになっても、適用のために申告が必要になることがある点が重要だ。
| 状況 | 申告の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 譲渡所得がプラス | 原則必要 | 会社員でも別枠で申告 |
| 譲渡所得がゼロ | ケースによる | 計算誤りがないか再確認 |
| 譲渡所得がマイナス | 不要が多い | 損失を活かす制度の有無で変わる |
| 特例で課税がゼロ | 必要になりやすい | 特例は申告しないと適用されにくい |
早見表で整理してから税務署や税理士に確認すると、質問が具体化して確認が早くなる。
損失が出たときは申告したほうが得になる場合がある
戸建て売却で損失が出た場合でも、制度によっては税負担を軽くできる可能性がある。
たとえば一定要件を満たすと、損失の繰越控除などが論点になることがある。
損失が出たから即不要と決めず、制度の対象になり得るかを先に確認しておきたい。
- 住み替えの有無
- 住宅ローンの残高
- 売却がマイホームか投資用か
- 他の所得があるか
要件確認が難しい場合は、売買契約書とローン残高が分かる資料を揃えたうえで相談すると判断が早い。
譲渡所得の計算で迷いやすい取得費と譲渡費用
確定申告の要否を正しく判定するには、譲渡所得の計算を外さないことが最重要になる。
特に戸建ては土地と建物がセットのため、取得費の考え方と減価償却の扱いでズレが出やすい。
取得費に入るものを先に固定する
取得費には、購入代金や建築代金だけでなく、購入手数料、設備費、改良費なども含まれる。
範囲を狭く見積もると譲渡所得が過大になり、不要な税負担や申告ミスにつながる。
国税庁の「取得費となるもの」の整理に沿って、該当しそうな支出を洗い出すのが安全だ。
| カテゴリ | 例 | メモ |
|---|---|---|
| 購入・建築 | 売買代金、建築代金 | 契約書で確認 |
| 付随費用 | 仲介手数料、登記費用 | 領収書を確保 |
| 改良・設備 | 増改築、設備追加 | 資本的支出が中心 |
何でも入るわけではないため、根拠資料が残る支出から優先して整理するのが現実的だ。
建物は減価償却相当額を差し引く
戸建ての建物部分は、取得費から所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた金額で考えるのが原則になる。
住居用でも、この調整が入るため、購入当時の金額をそのまま使うと計算がズレやすい。
国税庁は建物の取得費計算について、減価償却費相当額の考え方を示している。
- 土地は減価償却の対象外
- 建物は年数に応じて取得費が目減りする
- 計算に必要な情報は建物価格と取得時期
土地建物の代金内訳が分からない場合は、契約書や固定資産税評価額などを手掛かりに整理することになる。
譲渡費用にできる支出を漏らさない
譲渡費用は、売却のために直接かかった費用で、仲介手数料などが代表例になる。
取得費と同じく、漏れると譲渡所得が増えてしまうため、契約から引渡しまでの支出を時系列で拾うのがよい。
- 仲介手数料
- 測量費用や境界確定の費用
- 建物解体費用(条件により)
- 売却に直接必要だった広告費等(条件により)
判断が難しい項目は、支出の目的が「売るために直接必要だったか」で整理すると迷いにくい。
取得費が不明なときは早めに方針を決める
古い戸建てや相続絡みでは、購入当時の契約書が見つからず取得費が不明になることがある。
この場合でも、資料を集めて合理的に取得費を推定できるかが実務上の分かれ目になる。
推定が難しいなら、税務署への相談や税理士への依頼も含めて早めに方針を固めたい。
| 困りごと | まず探す資料 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 契約書がない | 登記関係、ローン資料 | 金融機関や不動産会社に照会 |
| 内訳が分からない | 土地建物の評価資料 | 合理的な按分方法を検討 |
| 改良費が不明 | リフォーム請求書 | 資本的支出に絞って整理 |
取得費の扱いは税額に直結するため、後回しにせず最初に決めるほうが結果的に早い。
3,000万円特別控除を使う条件と落とし穴
戸建てがマイホームに該当するなら、3,000万円特別控除が最優先の論点になる。
ただし、使えると思い込んでいると要件漏れで否認されることがあるため、条件と注意点をセットで押さえたい。
3,000万円特別控除は所有期間に関係なく使える
マイホームを売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例がある。
これが「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」で、戸建て売却の定番の節税策になる。
制度の概要は国税庁のタックスアンサーで確認できる。
- 対象は居住用財産であること
- 譲渡所得から最大3,000万円を控除
- 控除を受けるには申告が前提になりやすい
売却益が3,000万円以下なら課税譲渡所得がゼロになる可能性が高く、申告の価値が大きい。
10年超なら軽減税率と併用できる
一定要件を満たすと、10年超所有のマイホーム売却で軽減税率が適用されることがある。
国税庁は軽減税率の特例について、要件や他特例との関係を示しており、3,000万円特別控除と重ねて受けられる旨も説明している。
国税庁|No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例。
| 区分 | 判断基準 | 目安税率 |
|---|---|---|
| 短期譲渡 | 売った年の1月1日で所有5年以下 | 所得税30%+住民税9%が基本 |
| 長期譲渡 | 売った年の1月1日で所有5年超 | 所得税15%+住民税5%が基本 |
長期譲渡の税額計算の基本は国税庁の計算例でも確認でき、復興特別所得税の扱いも併記されている。
親族への売却や住民票のズレは落とし穴になりやすい
マイホーム特例は便利だが、親子や夫婦など特別の関係がある人への売却では適用できないなど、要件に細かな制限がある。
また、住民票の住所と売却した家の所在地が一致しない場合は、追加資料が求められることがある。
引越しのタイミングや住民票移動の履歴が絡むなら、書類面の準備を先にしておきたい。
- 売却相手が親族や特殊関係者に当たらないか
- 売却直前に転居していないか
- 住民票と所在地の不一致がないか
- 他の特例と同時適用の制限がないか
要件は個別事情で変わるため、該当が怪しい場合は国税庁の説明を根拠に確認する。
添付書類が揃わないと特例が通りにくい
特例を受ける場合は、申告書に添付すべき書類が定められている。
たとえば3,000万円控除では「譲渡所得の内訳書(土地・建物用)」などが求められ、住民票住所と所在地が異なる場合は戸籍の附票の写し等が必要になることがある。
必要書類の具体例は国税庁の申告の手引きPDFでも確認できる。
国税庁|特例の適用を受ける場合に申告書に添付する書類(PDF)。
| 特例 | 主な添付書類 | 追加になりやすい書類 |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 譲渡所得の内訳書(土地・建物用) | 戸籍の附票の写し等(住所不一致時) |
| 軽減税率の特例 | 譲渡所得の内訳書(土地・建物用) | 登記事項証明書等(条件により) |
提出直前に集め始めると間に合わないことがあるため、売買契約が固まったら書類を先に確保しておく。
提出書類とe-Tax手順を最短でそろえる
戸建て売却の確定申告は、書類の準備が8割と言ってよい。
特に特例を使う場合は、内訳書や補助資料が揃っているかで手続きのスピードが変わる。
まずは必要書類をチェックリスト化する
書類が散らばると見落としが増えるため、最初にチェックリスト化して回収状況を見える化する。
戸建て売却は土地建物の両方が絡むので、契約書類は土地建物の記載をセットで確認する。
- 売買契約書(売却)
- 購入時または建築時の契約書等(取得費用)
- 仲介手数料等の領収書(譲渡費用)
- 登記事項証明書等(条件により)
- 特例用の追加書類(戸籍の附票等)
書類の要否は特例の種類で変わるため、使う特例を先に決めてからリストを確定させる。
譲渡所得の内訳書が実務の中心になる
不動産売却の申告では、譲渡所得の計算根拠を示す「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)」が中心になる。
特例を使う場合も、この内訳書に条文や控除額を記載して計算を整えることになる。
国税庁の申告の手引きでも、特例適用時の添付書類として内訳書が挙げられている。
国税庁|居住用財産を売却した場合の課税の特例(添付書類一覧PDF)。
| 書類 | 役割 | つまずきやすい点 |
|---|---|---|
| 譲渡所得の内訳書 | 取得費・譲渡費用・特例を反映して計算 | 土地建物の内訳と減価償却 |
| 売買契約書 | 譲渡価額と契約日を確認 | 契約日と引渡日の混同 |
| 領収書類 | 取得費と譲渡費用の裏付け | 目的が不明な支出の取扱い |
内訳書を先に作り始めると、足りない資料が逆算できて準備の漏れが減る。
確定申告書等作成コーナーでの入力の流れを把握する
e-Taxで申告する場合は、確定申告書等作成コーナーの「土地建物等の譲渡所得」から入力していく流れになる。
入力は、譲渡価額、取得費、譲渡費用、適用する特例の順に整理されており、事前に手元資料を揃えておくとスムーズだ。
国税庁の作成コーナーの案内でも、土地建物等の譲渡所得の入力方法が示されている。
- 申告する所得の選択で土地建物等の譲渡を選ぶ
- 譲渡価額を契約書に基づいて入力する
- 取得費と減価償却相当額を整理して入力する
- 譲渡費用を領収書で確認して入力する
- 特例を選び、添付書類の準備を合わせる
スマホでの作成手順も国税庁の入力例にまとまっているため、操作が不安なら事前に流れだけでも確認しておくとよい。
国税庁|土地や建物を譲渡(売却)して申告する場合の入力例(PDF)。
申告期限と提出方法を先に確定させる
戸建て売却の確定申告は、提出期間と納付期限を前提に逆算して準備するのがコツだ。
特に特例を使う場合は、添付書類の取得に時間がかかることがある。
国税庁の申告の手引きには、確定申告の受付期間の案内が掲載されている。
| 項目 | ポイント | 行動の目安 |
|---|---|---|
| 提出期限 | 原則として確定申告期限まで | 2月中に内訳書の原案を完成 |
| 提出方法 | e-Taxか税務署提出 | マイナンバーカード等を準備 |
| 添付書類 | 特例で追加が出やすい | 契約締結後すぐ回収開始 |
期限に追われると計算ミスが増えるため、売却の見込みが立った時点で準備を開始しておくのが安全だ。
申告後に起きる納税・住民税の流れを押さえる
戸建て売却の確定申告が終わっても、納税や住民税の反映など、後工程が残る。
長期か短期か、特例の有無で税額の振れ幅が大きいため、資金繰りまで含めて見通しておくことが重要だ。
長期譲渡の税額計算の基本は国税庁の計算例でも確認でき、復興特別所得税の扱いも説明されている。
短期譲渡の税額計算の考え方も国税庁のタックスアンサーにまとまっている。
不安が残る場合は、申告書を作りながら不足資料と論点を洗い出し、税務署の相談や税理士相談で詰めていくのが最短ルートになる。
