賃貸アパートを売却すると税金はいくらかかる?|計算式と申告の落とし穴を先回りで潰そう!

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税金

賃貸アパートを売却すると、利益が出た場合は譲渡所得として所得税と住民税がかかります。

一方で、利益の計算は「売れた金額」だけでは決まらず、取得費や譲渡費用、建物の減価償却などで結果が大きく変わります。

さらに、売却年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで税率が跳ね上がるため、売却時期の判断も重要です。

この記事では、賃貸アパート売却に関する税金の全体像を押さえつつ、実務で迷いやすい論点を具体的に整理します。

賃貸アパートを売却すると税金はいくらかかる?

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賃貸アパートの売却益は原則として分離課税の譲渡所得になり、課税譲渡所得に税率を掛けて税額を計算します。

税金が決まる仕組みは譲渡所得

賃貸アパートの売却で中心になる税金は、譲渡所得にかかる所得税と住民税です。

譲渡所得は「収入金額から取得費と譲渡費用を差し引く」考え方で計算します。

計算の前提は国税庁の譲渡所得の案内やタックスアンサーで確認できます。

区分 内容
収入金額 売買代金などの受取額
取得費 購入代金や建築代金などから算定
譲渡費用 仲介手数料など売るために直接要した費用
課税譲渡所得 収入金額-(取得費+譲渡費用)

計算式の一次情報は国税庁No.3202にまとまっています。

税率は所有期間で変わる

譲渡所得の税率は、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年超か5年以下かで分かれます。

5年超の長期譲渡所得は所得税15%と住民税5%が基本で、所得税には復興特別所得税が上乗せされます。

5年以下の短期譲渡所得は所得税30%と住民税9%が基本で、こちらも所得税に復興特別所得税が上乗せされます。

区分 所得税
長期譲渡所得 15%(復興特別所得税は所得税額の2.1%)
短期譲渡所得 30%(復興特別所得税は所得税額の2.1%)
住民税 長期5%/短期9%

税率の根拠は国税庁No.3208国税庁No.3211で確認できます。

減価償却した建物は取得費が下がりやすい

賃貸アパートの建物部分は、所有期間中に減価償却費相当額を控除して取得費を計算するのが原則です。

そのため、購入時の建物価格をそのまま取得費にできず、想定より課税譲渡所得が増えることがあります。

特に古い物件や減価償却を長く計上してきた物件ほど、売却時に税金が出やすい構造になりがちです。

  • 建物は「取得費=購入代金等-減価償却費相当額」が基本
  • 土地は減価償却しないため取得費の性格が異なる
  • 帳簿や売買契約書で土地建物の内訳が重要

建物取得費の考え方は国税庁No.3261で確認できます。

赤字でも確定申告が必要なケースがある

譲渡所得がマイナスでも、申告が必要になる場面は珍しくありません。

たとえば他の所得がある年は、譲渡の内容を明確にするために内訳書を付けて申告する運用が一般的です。

また、消費税の課税事業者に該当する場合は、建物売却に消費税が関係するため、譲渡所得とは別軸で手続が増えます。

  • ローン完済に伴う登記手続が必要
  • 事業用資産の譲渡で消費税の判定が必要
  • 翌年の住民税に反映されるため資金繰り確認が必要

譲渡所得は分離課税でも確定申告は他の所得と一緒に行う点が国税庁資料に記載されています。

法人名義の賃貸アパートは法人税等の扱いが別

賃貸アパートが法人名義の場合、譲渡益は原則として法人の所得に含まれ、個人の譲渡所得とは税体系が異なります。

個人は分離課税の税率が明確なのに対し、法人は法人税等の計算の中で利益が扱われるため、決算・申告の設計が重要です。

また、建物売却の消費税は個人でも法人でも「事業者が事業として行う資産の譲渡」に該当し得ます。

論点 個人
中心税目 譲渡所得の所得税・住民税(分離課税)
損益通算 原則として他の所得と通算しにくい
法人の場合 法人税等の所得計算に含めて処理

消費税の基本的な考え方は国税庁No.3240で確認できます。

概算でシミュレーションする手順

まずは「利益が出そうか」を粗く把握し、次に「税率区分がどちらか」を確認する順番が最短です。

取得費が不明な場合は推計のルールがある一方で、根拠が弱いと税務上の説明が難しくなります。

概算でも、譲渡費用や減価償却を落とすと税額が大きくずれるので、最低限の資料は集めてください。

  • 売却価額を確定させる
  • 取得費の資料を洗い出す
  • 譲渡費用を見積もる
  • 所有期間で税率を当てはめる

取得費が分からない場合の考え方は国税庁No.3258で確認できます。

賃貸アパート売却で税金計算に必要な3つの金額

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税金計算の核心は、売却価額と取得費と譲渡費用を正しく区分して積み上げることです。

売却価額に含めるもの

売却価額は、買主から受け取る金額のうち、実質的に資産の対価となる部分を基本に整理します。

精算金の性質によって課税関係が変わり得るため、契約書の条項を確認して扱いを統一します。

売買代金が土地と建物に分かれる場合は、その内訳が後段の消費税や減価償却にも影響します。

  • 売買代金(本体)
  • 固定資産税等の精算金の取扱い確認
  • 設備や備品の譲渡がある場合の区分

譲渡所得の収入金額の考え方は国税庁No.3202を起点に整理できます。

取得費で押さえる費目

取得費は、購入代金や建築代金だけでなく、購入手数料や設備費、改良費なども含めて積み上げます。

領収書や契約書が残っているほど取得費が適正になり、結果として課税譲渡所得が下がる可能性があります。

建物は減価償却費相当額を控除する点が、賃貸アパート特有の重要ポイントです。

取得費になり得る例 内容
購入代金・建築代金 土地建物の取得対価
購入手数料 仲介手数料など
設備費・改良費 資産価値を高める工事等
建物の調整 減価償却費相当額を控除

取得費の範囲は国税庁No.3252が一次情報です。

譲渡費用で計上できる費目

譲渡費用は、売るために直接かかった費用を中心に整理し、保有期間中の維持費とは分けて考えます。

売却時に発生する仲介手数料や測量費、解体費などは該当し得ますが、個別事情で判断が必要です。

譲渡費用は見落としやすい一方で、積み上げるほど課税譲渡所得が下がるため、網羅が重要です。

  • 仲介手数料
  • 測量費や境界確定関連費
  • 売却のための解体費や立退料などの該当可否検討

譲渡所得の基本構造は国税庁No.3202で確認できます。

3,000万円特別控除が基本使えない理由

3,000万円特別控除は「居住用財産」に関する特例であり、賃貸アパートのような事業用・賃貸用の建物は原則として対象外です。

居住用と賃貸用が混在する併用住宅のようなケースでは、居住部分に限って特例が検討されることがあります。

賃貸アパート売却の節税を考えるなら、居住用特例に寄せるより、取得費と譲渡費用の精度を上げる方が再現性が高いです。

特例 対象の基本
3,000万円特別控除 マイホームなど居住用財産
賃貸アパート 原則は居住用に該当しない
併用住宅 居住部分のみ適用検討の余地

特別控除の一次情報は国税庁No.3302で確認できます。

税金を抑えるために売却前からできる対策

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賃貸アパートの売却税金は、売却後に小手先で下げにくく、売却前の準備で差が付きます。

帳簿と領収書を揃えて取得費を増やす

取得費は証拠資料の強さがそのまま金額の説得力になり、結果として税額に直結します。

購入時の契約書や重要事項説明書、領収書がそろっていないと、取得費が小さく見積もられがちです。

過去の修繕でも、資本的支出として改良費に当たるものは取得費に影響し得るため、工事内容の棚卸しが有効です。

  • 売買契約書と精算書
  • 仲介手数料の領収書
  • 大規模修繕や設備更新の請求書
  • 土地建物の按分根拠資料

取得費の範囲は国税庁No.3252が基準になります。

売却タイミングを所有期間5年超に合わせる

所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定するため、年末年始の売却タイミングで区分が変わることがあります。

たとえば同じ物件でも、短期のまま売ると所得税率が30%になり、長期なら15%になるため差が大きいです。

契約締結日と引渡日がずれる場合は、いつを譲渡日とするかの実務判断も含めて確認が必要です。

判定基準 内容
所有期間 売却年の1月1日時点で5年超かどうか
長期の税率 所得税15%+住民税5%(所得税に復興特別所得税上乗せ)
短期の税率 所得税30%+住民税9%(所得税に復興特別所得税上乗せ)

税率の一次情報は国税庁No.3208国税庁No.3211です。

土地と建物の按分を合理的にする

賃貸アパート売却では、土地と建物の内訳が、減価償却や消費税の論点にまで波及します。

内訳が不自然だと、税務上の説明が難しくなり、結果としてリスクコストが増えます。

固定資産税評価額など客観的指標を使って按分根拠を作ると、判断のブレを小さくできます。

  • 契約書に土地建物の内訳を明記する
  • 評価額など外部指標で按分の根拠を残す
  • 設備や備品の譲渡がある場合は別建てで整理する

建物取得費の考え方は国税庁No.3261が参考になります。

消費税が絡む売却は税抜経理か税込経理かを揃える

課税事業者が賃貸用の建物を売却する場合、建物の譲渡は消費税の課税対象になり得ます。

このとき、譲渡所得の計算に消費税等をどう反映するかは、税抜経理方式か税込経理方式かで扱いが変わります。

消費税の論点は所得税の譲渡所得とは別に期限や計算があるため、売却前に必ず確認してください。

論点 要点
課税対象 住宅賃貸用の建物売却も課税対象になり得る
土地 土地や借地権の譲渡は非課税が原則
経理方式 税抜か税込かで譲渡所得計算の扱いが変わる

一次情報は国税庁No.3240国税庁No.6931です。

確定申告で迷いやすいポイント

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賃貸アパートの売却は金額が大きく、提出書類も増えやすいため、論点を先に潰すほど手戻りが減ります。

分離課税なので給与所得とは別計算になる

土地や建物の譲渡所得は原則として分離課税で、給与所得などと区分して税額を計算します。

ただし、確定申告の手続自体は他の所得と一緒に行うため、提出の流れを誤解しやすいです。

譲渡所得だけを見て安心せず、他の所得や控除と合わせて全体の納税額を確認してください。

項目 要点
計算 譲渡所得は分離課税で別計算
手続 確定申告は他の所得と一緒に提出
注意 納税は所得税と住民税に波及

分離課税の説明は国税庁の案内でも確認できます。

譲渡損失は原則として通算できない

土地や建物の譲渡で損失が出ても、原則として給与所得など他の所得との損益通算はできません。

この点は「赤字なら税金ゼロで得」と単純化しやすい落とし穴です。

マイホームなど居住用の特例では損失の扱いが変わる場合がありますが、賃貸アパートでは前提が異なります。

  • 賃貸アパートの譲渡損失は通算できないのが原則
  • 居住用特例の損失控除とは切り分けて判断する
  • 翌年の住民税や資金繰りも含めて検討する

譲渡損失の注意点は国税庁の案内資料でも触れられています。

印紙税と登記費用も忘れない

売却益にかかる税金とは別に、契約書には印紙税がかかり、抵当権抹消などで登録免許税が発生することがあります。

印紙税は契約金額で税額が変わり、不動産譲渡契約書は軽減措置の対象期間が定められています。

抵当権抹消の登録免許税は不動産1個につき1,000円が基本で、土地と建物なら合計2,000円になるのが典型です。

税目 一次情報
印紙税 国税庁No.7140
軽減措置 国税庁の軽減措置
登録免許税 法務省資料

税額だけでなく、売却の諸費用として資金計画に織り込むことが大切です。

必要書類は「内訳書」を軸に集める

譲渡所得の申告は、譲渡所得の内訳書を軸にして、売買契約書や領収書、登記事項などをそろえると迷いにくいです。

取得費が不明な場合は推計の方法があるため、完全に資料が欠けていても諦めず整理してください。

ただし推計は税務上の説明力が弱くなるため、可能な限り一次資料の発掘に時間を使う価値があります。

  • 売買契約書と重要事項説明書
  • 仲介手数料など譲渡費用の領収書
  • 取得費に関する契約書や工事資料
  • 減価償却の計算根拠となる帳簿

取得費が分からない場合の考え方は国税庁No.3258が一次情報です。

税理士に相談したほうがよいケース

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賃貸アパートの売却税金は計算自体はシンプルに見えて、前提の整理を間違えると結論が大きく変わります。

相続や贈与を経由して取得した物件

相続や贈与を経由した賃貸アパートは、取得費の引継ぎや所有期間の考え方など、論点が増えます。

さらに、相続登記や抵当権抹消の手続が絡むと、税金以外の実務負担も一気に重くなります。

売却を急ぐほどミスが出やすいので、全体設計から専門家に確認する価値があります。

  • 取得費資料が散逸している
  • 共有名義で持分が絡む
  • 登記未了や住所変更がある

登記費用の基本は法務省資料で確認できます。

取得費が不明で推計になりそうなとき

取得費が不明なときは、一定の方法で取得費を推計する考え方があります。

ただし推計はケースによって合理性の説明が必要で、税務調査リスクを踏まえた資料整備が重要です。

売却額が大きいほど「推計で済ませるコスト」が膨らむため、早めの相談が有利です。

状況 検討ポイント
契約書なし 取得時の状況証拠を集めて推計の根拠を作る
内訳不明 土地建物の按分根拠を別資料で補う
帳簿不整備 減価償却の整合性を再構築する

一次情報は国税庁No.3258国税庁No.3261です。

消費税の課税事業者に該当する可能性があるとき

賃貸業をしていると、基準期間や特定期間の判定によって課税事業者になることがあります。

課税事業者が賃貸用建物を売却すると、建物の譲渡は消費税の課税対象になり得ます。

譲渡所得と消費税の両方を同時に扱う必要があるため、売却前に論点整理を終えるのが安全です。

  • 建物売却に消費税が乗るかの判定
  • 税抜経理か税込経理かの整合
  • 申告期限と納税資金の確保

一次情報は国税庁No.3240国税庁No.6931です。

賃貸アパート売却の税金で損しないための要点

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賃貸アパートの売却税金は、譲渡所得の計算精度と所有期間の判定で大半が決まります。

建物の減価償却を踏まえた取得費の調整と、譲渡費用の網羅ができるほど、課税譲渡所得は適正になりやすいです。

課税事業者に該当する可能性がある場合は、建物売却の消費税まで含めて設計しないと、想定外の納税が起きます。

売却前に資料をそろえ、計算の筋道を作った上で、必要に応じて税理士へ確認するのが最も堅実です。