不動産を簿価で売却しても税金がゼロとは限らない|時価判定と消費税の見落としは?

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確定申告

「簿価で売るなら利益が出ないので税金も出ないはず」と考える人は少なくありません。

しかし不動産の売却は、会計の帳簿価額だけでなく、税務上の時価判定や消費税の扱いが絡みます。

特に売却先が法人や関係者である場合、価格が簿価でも「低すぎる」と判断されると課税が跳ねることがあります。

ここでは簿価売却の考え方を整理し、必要な確認項目を実務目線でまとめます。

  1. 不動産を簿価で売却しても税金がゼロとは限らない
    1. 簿価は「帳簿価額」であって市場価格ではない
    2. 売却益がゼロでも諸費用で課税所得が動く
    3. 個人の売却は「簿価」より「取得費」で考える
    4. 法人は売却価額と簿価の差がそのまま損益になりやすい
    5. 売却先が法人で安すぎると「時価」で所得計算されることがある
    6. 事業用建物の売却は消費税が絡みやすい
    7. 低額で譲り受けた側に贈与税や受贈益が出ることもある
  2. 簿価で売却価格を決める前に押さえる基礎
    1. 土地と建物で簿価の性質が違う
    2. 減価償却を前提に「残りの価値」を言語化する
    3. 時価の目安は複数の方法で「幅」を出す
    4. 「簿価で売る理由」を文章で残しておく
  3. 簿価売却で起こりやすい税金と手続き
    1. 個人の譲渡所得は「売却額-取得費-譲渡費用」で組み立てる
    2. 損失が出たときは「その損が使えるか」を先に確認する
    3. 消費税は「土地は非課税、建物は課税」が基本線になる
    4. 契約と登記は「いつ何を出すか」をチェックリスト化する
  4. 関係者間で簿価売却するときのリスク
    1. 時価の2分の1を下回ると収入金額が時価に置き換わる
    2. 法人が役員に低額で譲渡・贈与すると消費税の論点が出る
    3. 法人税では「寄附金」「受贈益」「行為計算否認」が交差する
    4. 個人同士でも差額が「みなし贈与」になり得る
  5. 簿価売却をスムーズに進める実務チェック
    1. まず「帳簿のどの数字」を簿価として使うかを確定する
    2. 土地と建物の按分は「合理的な基準」を決めて契約書に落とす
    3. 仕訳は「売却益・売却損・未収入金」を分けて考える
    4. 相談時は「売却先」と「時価資料の有無」を最初に伝える
  6. 要点を整理して次の一手を決める

不動産を簿価で売却しても税金がゼロとは限らない

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簿価で売却しても、税金が必ずゼロになるわけではありません。

売却先や資産の種類によって、収入金額が時価に置き換えられる場面があります。

さらに土地と建物の内訳や消費税の有無で、手取りや申告が大きく変わります。

簿価は「帳簿価額」であって市場価格ではない

簿価とは、会計帳簿に計上されている資産の残高を指します。

不動産の場合、取得原価から減価償却等を差し引いた残存価額が簿価になります。

市場で売れる価格である時価とは一致しないのが通常です。

  • 簿価:帳簿上の残高
  • 時価:市場で成立し得る価格
  • 簿価は償却で下がりやすい
  • 土地は原則として償却しない
  • 建物は償却で簿価が減る
  • 付随費用は別勘定になりやすい

売却益がゼロでも諸費用で課税所得が動く

売却価額が簿価と同じでも、仲介手数料や測量費などの費用がかかります。

法人なら売却損が出れば損金になり得ますが、相手先によって否認リスクもあります。

個人でも譲渡費用は譲渡所得の計算に影響します。

よくある費用 仲介手数料
登記関連 司法書士報酬
境界 測量・境界確定
建物 解体・残置物撤去
契約 印紙税
その他 修繕・クリーニング

個人の売却は「簿価」より「取得費」で考える

個人の譲渡所得は、売却額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。

建物は所有期間中の減価償却費相当額を差し引くため、取得費は購入代金そのままになりません。

国税庁のタックスアンサーも、建物の取得費計算を明確にしています。

  • 取得費の考え方:国税庁No.3252
  • 建物の取得費:国税庁No.3261
  • 減価償却相当額を控除する
  • 領収書や契約書で根拠を残す
  • 取得費不明だと不利になりやすい

法人は売却価額と簿価の差がそのまま損益になりやすい

法人が保有する不動産は固定資産として管理され、簿価が会計上の基礎になります。

売却益は「売却価額-帳簿価額-関連費用」で算定されるのが一般的です。

ただし税務では寄附金認定や行為計算否認の論点が上乗せされます。

売却益 利益計上の対象
売却損 損金算入の対象
圧縮記帳 要件がある制度
関連費用 譲渡に直接要した費用
相手先 関係者だと要注意
時価差 否認リスクの核

売却先が法人で安すぎると「時価」で所得計算されることがある

個人が土地建物を法人に売る場合、売却価額が時価の2分の1を下回ると時価で譲渡したものとして計算されます。

このルールは「簿価だから適正」という理屈を通しません。

判断基準は国税庁のタックスアンサーに明記されています。

  • 時価より低い価額の扱い:国税庁No.3217
  • 「時価の2分の1未満」が一つの線
  • 同族会社・関連法人は特に厳しい
  • 鑑定評価や査定資料が重要
  • 契約の合理性を説明できる体制が必要

事業用建物の売却は消費税が絡みやすい

土地は原則として消費税の非課税ですが、建物は課税対象になり得ます。

個人でも事業者として対価を得て譲渡するなら課税の対象になり得ます。

基本の考え方は国税庁の解説を押さえておくと安全です。

土地 原則として非課税
建物 課税対象になり得る
事業者性 事業としての譲渡か
賃貸用 住宅賃貸用も論点
根拠 国税庁No.3240
役員贈与 国税庁No.6321

低額で譲り受けた側に贈与税や受贈益が出ることもある

低額譲渡は「売った側」だけの問題ではありません。

個人が著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、時価との差額が贈与とみなされることがあります。

国税庁は贈与税の考え方を明示しています。

  • 著しく低い価額で譲り受けた場合:国税庁No.4423
  • 差額が「贈与」として扱われ得る
  • 法人が受ければ受贈益の論点
  • 家族間は感覚がズレやすい
  • 後から修正が難しい領域

簿価で売却価格を決める前に押さえる基礎

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簿価売却を検討するなら、まず簿価の中身を分解して理解することが重要です。

土地と建物、付属設備、資本的支出などが混ざると判断が誤りやすくなります。

そして「時価の根拠」を同時に用意しておくと交渉と税務の両方が安定します。

土地と建物で簿価の性質が違う

土地は原則として減価償却の対象ではないため、簿価が大きく動きにくい資産です。

建物は減価償却で簿価が下がるため、築年数が進むほど時価との差が開きやすくなります。

売買価格を決める際は、土地・建物の内訳の合理性が問われます。

土地 原則として償却なし
建物 償却で簿価が減る
付属設備 償却区分が分かれる
資本的支出 簿価に加算され得る
修繕費 費用処理されやすい
内訳 契約書で明確化

減価償却を前提に「残りの価値」を言語化する

簿価は減価償却の結果として形成されるため、簿価で売るなら償却の根拠が説明材料になります。

一方で時価は市場要因で動くので、償却だけでは説明が足りない場面もあります。

両者の違いを前提に、判断の前提条件を揃えます。

  • 償却方法と耐用年数を確認する
  • 償却資産台帳を最新化する
  • 大規模改修の扱いを整理する
  • 賃貸中なら稼働状況を添える
  • 収益還元の目線も持つ
  • 空室・修繕リスクも明示する

時価の目安は複数の方法で「幅」を出す

関係者間で売るなら、時価の合理性がより重要になります。

一つの指標に依存すると突っ込まれやすいので、複数の算定でレンジを作ります。

目的は「唯一の正解」を探すことではなく、説明可能な根拠を揃えることです。

不動産会社査定 市場成約事例に近い
鑑定評価 第三者性が高い
路線価 相続税評価の参考
固定資産税評価 税務資料として使う
収益還元 賃料ベースで推定
原価法 再調達と減価で推定

「簿価で売る理由」を文章で残しておく

価格が時価より低く見えるとき、なぜその価格になるのかの説明が求められます。

例えば早期売却、修繕負担、立退き、権利関係、用途制限など、価格に影響する事情は多いです。

後から言い訳に見えないよう、契約前に整理して記録します。

  • 売却の目的と期限
  • 物件の瑕疵や修繕履歴
  • 賃貸借の条件と退去予定
  • 境界・越境・通行の状況
  • 価格交渉の経緯メモ
  • 第三者評価の添付

簿価売却で起こりやすい税金と手続き

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簿価売却の検討では、所得税や法人税だけでなく、消費税や契約実務も同時に見ます。

税目ごとに判断基準が違うため、論点を分けて整理すると見落としが減ります。

特に土地・建物の内訳と消費税の扱いは、後戻りが難しいポイントです。

個人の譲渡所得は「売却額-取得費-譲渡費用」で組み立てる

個人が土地建物を売る場合、基本は実際の売却価額を収入金額として計算します。

取得費には購入代金だけでなく購入手数料や改良費等も含まれます。

建物は減価償却費相当額を差し引くので、根拠の保存が重要です。

収入金額 原則は売却価額
取得費 国税庁No.3252
建物の取得費 国税庁No.3261
譲渡費用 仲介手数料など
税率 短期・長期で異なる
申告 確定申告が基本

損失が出たときは「その損が使えるか」を先に確認する

簿価で売る目的が「損を出して相殺したい」であるケースもあります。

しかし損益通算や繰越控除の可否は、不動産の用途や居住用かどうかで扱いが分かれます。

法人でも相手先や取引の実態次第で損金性が争点になります。

  • 居住用は特例の要件が絡む
  • 事業用は事業所得等との関係が出る
  • 買換え・交換は別論点
  • 税務調査では相手先が見られる
  • 意図的な損出しは説明が必要
  • 証拠資料が薄いと不利になりやすい

消費税は「土地は非課税、建物は課税」が基本線になる

売買代金の総額だけを見ると、消費税の判断を誤りやすくなります。

事業者が事業として行う建物等の譲渡は課税対象になり得ます。

また消費税等と譲渡所得の関係も整理しておくと、税込・税抜の混乱を避けられます。

基本 土地は非課税、建物は課税論点
個人の事業用 国税庁No.3240
譲渡所得との関係 国税庁No.6931
契約書表示 内訳明示が望ましい
免税判定 課税売上高で変わる
注意 土地建物の按分が肝

契約と登記は「いつ何を出すか」をチェックリスト化する

税金以前に、売買契約と移転登記が滞ると取引自体が成立しません。

特に関係者間取引では「書面を簡略化しがち」なので、必要書類が抜けやすいです。

引渡し条件と決済条件は、早い段階で揃えます。

  • 登記識別情報と印鑑証明
  • 固定資産税評価証明の手配
  • 賃貸中なら賃貸借契約書
  • 管理規約や重要事項の整理
  • 境界資料と越境の説明
  • 決済日までの精算項目

関係者間で簿価売却するときのリスク

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簿価売却は、関係者間取引で検討されることが多いテーマです。

この場合は「税務上の時価」と「経済的利益」の評価が前面に出ます。

売った側、買った側、株主や受贈者まで波及し得るため、最初にリスクを把握します。

時価の2分の1を下回ると収入金額が時価に置き換わる

個人が法人に土地建物を売るとき、価格が時価の2分の1を下回ると時価で譲渡したものとして計算されます。

簿価が低いからといって、この判定を避けられるわけではありません。

判断根拠は国税庁のタックスアンサーに明確です。

適用場面 売却先が法人
判定基準 時価の2分の1未満
効果 収入金額が時価扱い
根拠 国税庁No.3217
対策 時価資料と事情説明
注意 同族会社は要警戒

法人が役員に低額で譲渡・贈与すると消費税の論点が出る

法人が資産を役員に贈与した場合、原則として時価相当額を課税標準として消費税が課税されます。

低額譲渡も同様に論点になりやすく、価格設定の根拠が重要です。

実務では契約書の内訳や目的の整合性が問われます。

  • 役員への贈与の扱い:国税庁No.6321
  • 「時価」を前提に考える場面がある
  • 建物部分が課税対象になりやすい
  • 社内決裁・議事録で合理性を残す
  • 第三者取引との比較資料を持つ

法人税では「寄附金」「受贈益」「行為計算否認」が交差する

法人間の低額譲渡は、時価との差額が寄附金と扱われる可能性があります。

寄附金は損金算入に限度があり、超過分は損金不算入になります。

さらに同族会社等では行為計算否認の論点が重なるため、専門家の関与が安全です。

寄附金の範囲 国税庁No.5281
低額譲渡通達 国税庁通達関連
受贈益 受けた経済的利益
否認 同族会社で争点化
波及 株主課税まで拡大
実務 時価資料が鍵

個人同士でも差額が「みなし贈与」になり得る

家族間で簿価に合わせた価格にすると、市場から見て低すぎることがあります。

個人から著しく低い価額で財産を譲り受けた場合、時価との差額が贈与とみなされることがあります。

贈与税の論点は、売買契約の形を取っていても消えません。

  • みなし贈与の考え方:国税庁No.4423
  • 「売買でも贈与扱い」があり得る
  • 差額の根拠説明が必要
  • 時価資料がないと不利
  • 後から修正が難しい

簿価売却をスムーズに進める実務チェック

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簿価売却は税務だけでなく、資料整理と契約設計で成否が決まります。

事前に「簿価の根拠」「時価の根拠」「内訳の合理性」を揃えると、話が早いです。

最後に、実務で詰まりやすいポイントをチェック形式で整理します。

まず「帳簿のどの数字」を簿価として使うかを確定する

簿価と一口に言っても、会計上の区分が複数ある場合があります。

土地、建物、附属設備、構築物などを混在させると、説明不能な価格になります。

対象資産を特定し、台帳と一致させます。

  • 固定資産台帳の対象行を確定
  • 土地・建物・設備の区分整理
  • 資本的支出の有無を確認
  • 減価償却累計額の確認
  • 未償却残高の算定根拠を保存
  • 除却予定資産を分離

土地と建物の按分は「合理的な基準」を決めて契約書に落とす

消費税や取得費の計算では、土地と建物の内訳が重要になります。

内訳が恣意的だと、後から否認やトラブルの原因になります。

一般には評価額や鑑定、査定等の資料を基準に按分します。

按分の基準 評価額・査定額
契約書 土地代と建物代を明記
税込表示 建物部分の消費税を整理
固定資産税 評価証明を参照
第三者資料 鑑定・査定書
社内資料 算定メモを保存

仕訳は「売却益・売却損・未収入金」を分けて考える

簿価売却でも、費用や税の扱いで仕訳が複数に分かれます。

決済日と引渡日、請求日がズレると計上時期もズレます。

税務と会計の整合を取るため、取引のタイムラインを作ります。

  • 固定資産売却益または売却損
  • 固定資産除却の論点がないか確認
  • 未収入金・前受金の整理
  • 仲介手数料や登記費用の区分
  • 消費税の区分経理
  • 決算前後の計上時期の確認

相談時は「売却先」と「時価資料の有無」を最初に伝える

税理士や不動産会社への相談は、情報の出し方で回答の質が変わります。

特に関係者間取引かどうかで、見るべき論点が一気に増えます。

先に前提を渡すと、不要な往復が減ります。

相手先 個人か法人か
関係性 役員・株主・親族
簿価資料 台帳・償却計算
時価資料 査定・鑑定・評価
内訳 土地建物の按分案
目的 早期売却か組織再編か

要点を整理して次の一手を決める

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不動産を簿価で売る発想は、会計上は分かりやすい一方で、税務上は「時価」と「相手先」で結論が変わります。

特に売却先が法人で価格が時価の2分の1未満なら、簿価ではなく時価で譲渡所得が計算され得ます。

また土地と建物の内訳を曖昧にすると、消費税や申告で想定外のズレが出ます。

簿価の根拠と時価の根拠をセットで揃え、契約書に内訳を落とし、資料を保存することが実務の軸です。

迷ったら売却先の関係性と時価資料の有無を先に整理し、税理士と不動産会社に同じ前提で相談すると判断が安定します。