不動産を売ったときの「税金が一時所得になるのか」「確定申告が必要なのか」は、検索で混乱しやすい論点です。
結論から言うと、土地や建物の売却益は原則として一時所得ではなく譲渡所得として扱われ、給与などと分けて税額計算する分離課税が基本になります。
一方で、売却に関連して受け取るお金の中には、一時所得や雑所得になり得るものもあるため、何が「売却代金」なのかを切り分けることが大切です。
この記事では、国税庁の一次情報を参照しながら、不動産売却と一時所得の違い、譲渡所得の計算、代表的な特例、申告の流れまでを整理します。
不動産売却の一時所得と税金は原則こう考える
不動産(土地・建物)を売って得た利益は、原則として一時所得ではなく譲渡所得に分類されます。
譲渡所得は、他の所得と合算せず分離して税額計算する仕組みが採用されています。
まずは「何が譲渡所得で、どこからが一時所得の可能性があるか」を押さえると判断が早くなります。
結論は「譲渡所得」で分離課税になる
土地や建物の譲渡による所得は、譲渡所得として扱われるのが原則です。
税額は、長期か短期かで所得税率が変わり、復興特別所得税も加算されます。
分類と税率の基本は国税庁の「譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」で確認できます。
参考:国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
「一時的に入ったお金」でも一時所得とは限らない
一時所得は、営利を目的とする継続的行為から生じた所得などを除いた「一時的な所得」を指します。
不動産売却は資産の譲渡に当たるため、同じ「一時的に入金」でも分類が異なります。
混同しやすいポイントを先に並べると、整理が楽になります。
- 売却代金の利益は譲渡所得
- 懸賞や払戻金などは一時所得の代表例
- 売却に伴う損害賠償や補助金は性質で別判定
例外として「売却に関連する別収入」が一時所得になる場面
売却代金そのものは譲渡所得でも、売却と同時に受け取る金銭が別の所得区分になることはあります。
典型は、交付金のうち目的に充てなかった部分などで、一時所得の例として国税庁も挙げています。
個別の入金名目がある場合は、売却代金と混ぜずに性質を確認するのが安全です。
譲渡所得の基本計算は「収入-(取得費+譲渡費用)-特別控除」
譲渡所得の計算は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引き、要件を満たす場合は特別控除も差し引きます。
取得費が不明な場合の扱いや、建物の減価償却の考え方も重要です。
計算の要素を表で押さえると、領収書の集め方が具体化します。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 収入金額 | 売却代金など(固定資産税等の精算金がある場合は取扱いに注意) |
| 取得費 | 購入代金や手数料、改良費等(建物は減価償却相当額控除) |
| 譲渡費用 | 仲介手数料、測量費、印紙代、立退料、取壊し費用など |
| 特別控除 | マイホーム3,000万円など(要件を満たす場合) |
参考:国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
税率は「長期・短期」と復興特別所得税で決まる
所有期間は「売った年の1月1日現在で5年超かどうか」で長期・短期が判定されます。
所得税率は長期15%、短期30%が基本で、住民税と復興特別所得税を合わせた実効税率として説明されることが多いです。
復興特別所得税は基準所得税額に2.1%を乗じて申告・納付する仕組みです。
特別控除は「要件を満たすか」で税額が大きく変わる
譲渡所得には、マイホームの3,000万円特別控除など、要件を満たす場合に使える特例があります。
特例は「適用できると思い込む」ことが最も危険なので、要件確認と証憑の準備をセットで考えます。
特別控除の代表例は国税庁の譲渡所得の説明でも整理されています。
確定申告が必要かは「譲渡益が出たか」と「特例適用の有無」で決まる
土地や建物を売却し、譲渡所得金額(利益)がある場合は原則として確定申告が必要です。
特例を使って課税がゼロになる場合でも、特例の適用を受けるために申告が必要になるケースがあります。
国税庁の確定申告特集でも、売却した方への案内がまとめられています。
一時所得の定義と50万円特別控除を整理する
一時所得は「臨時・偶発的な所得」を広く受け止める言葉に見えるため、不動産売却と混同されがちです。
ただし、国税庁の定義と計算式を見れば、譲渡所得との違いが明確になります。
不動産売却の話題では、まず一時所得の枠組みを短く確認しておくと安心です。
一時所得に該当する代表例を知っておく
一時所得には、懸賞の賞金や保険の満期返戻金など、典型例が列挙されています。
売却に関係する入金が「この典型例に近いか」を見ると、判断材料になります。
代表例を簡潔に並べます。
- 懸賞や福引きの賞金品(業務に関するものを除く)
- 競馬・競輪の払戻金(継続的行為を除く)
- 生命保険の一時金や損害保険の満期返戻金
- 法人から贈与された金品(一定の除外あり)
計算式は「収入-支出-特別控除(最高50万円)」
一時所得の金額は、総収入金額から、その収入を得るために直接要した支出を引き、さらに特別控除(最高50万円)を差し引いて計算します。
売却代金のような「資産の対価」を前提にした計算ではない点が、譲渡所得と大きく違います。
制度上の要点を表でまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本式 | 総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円) |
| 支出の範囲 | その収入を生じた行為のため、または原因の発生に伴い直接要した金額に限る |
| 特別控除 | 一時所得全体で年間最高50万円 |
「50万円以下なら申告不要」と決めつけない
一時所得は特別控除により課税が発生しない場合があり、その結果として申告が不要になることもあります。
ただし、不動産売却は原則として譲渡所得なので、この基準を売却益に当てはめるのは危険です。
混在する入金がある場合は、所得区分を分けて考えるのが基本になります。
譲渡所得の計算で間違えやすいポイント
譲渡所得の計算は式自体はシンプルですが、取得費と譲渡費用の判定で差が出やすいです。
特に「取得費が分からない」「建物の減価償却」「売却に付随する支出の扱い」で誤りが起きます。
ここを先に固めると、税金の見積もり精度が上がります。
取得費が分からないときは「概算取得費(譲渡価額の5%)」の選択肢
取得費が分からない場合などには、譲渡価額の5%を取得費とする概算取得費の考え方があります。
実際の取得費が5%より少ないときも、要件に応じて同様の扱いが出てきます。
ただし、実額での取得費が把握できるなら、結果が大きく変わるため必ず検討が必要です。
| 論点 | ポイント |
|---|---|
| 取得費が不明 | 概算取得費として譲渡価額の5%を採用できる場合がある |
| 実額の確認 | 売買契約書、領収書、住宅ローン契約書等を探す |
| 影響 | 取得費が小さいほど譲渡益が大きくなり税額が増えやすい |
建物の取得費は減価償却相当額を差し引く
建物は時間の経過で価値が減る前提のため、取得費を計算するときに減価償却費相当額を差し引いて算定します。
土地と建物が一括の売買になっている場合は、契約書等から按分の確認が必要になることがあります。
取得費の考え方は、譲渡所得の計算のしかたの中で説明されています。
参考:国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
譲渡費用にできる支出を漏れなく拾う
譲渡費用は「売るために直接かかった費用」が対象で、費用計上できるかどうかで課税譲渡所得が変わります。
迷う支出は、目的が「売却のために直接必要だったか」で線引きします。
代表例を短く並べます。
- 仲介手数料
- 測量費
- 売買契約書の印紙代
- 立退料
- 取壊し費用(更地にして売るために直接必要な場合)
参考:国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)
固定資産税・都市計画税の精算金は「収入金額」に入ることがある
譲渡代金のほかに、年末までの未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合は、譲渡価額に算入されると説明されています。
売買契約書で精算条項があると、入金が「売却代金とは別」に見えるため注意が必要です。
収入金額の範囲は国税庁の譲渡所得の説明で確認できます。
参考:国税庁 No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)
マイホーム売却の特例で税金が変わる
不動産売却の税金は、譲渡益が出ても特例の適用で大きく軽減されることがあります。
ただし、特例は「非課税」ではなく「控除」や「繰延べ」の制度も多く、意味を取り違えると資金計画が崩れます。
代表的な特例を、目的別に整理します。
3,000万円特別控除は「居住用財産」の要件確認が必須
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
所有期間の長短に関係なく使える点が大きな特徴です。
要件は個別に細かいので、適用前提で進めずにチェックを先に行います。
| ポイント | 考え方 |
|---|---|
| 制度の性質 | 譲渡所得からの控除(税額が直接3,000万円減るわけではない) |
| 対象 | 居住用財産(マイホーム)としての要件を満たす必要がある |
| 効果 | 譲渡益が3,000万円以下なら課税譲渡所得がゼロになり得る |
買換え特例は「非課税」ではなく課税の繰延べ
一定の要件のもとで、マイホームを売って新しいマイホームに買い換えたとき、譲渡益への課税を将来に繰り延べる特例があります。
売却した年に税金がゼロに見えても、将来の売却時に精算される仕組みなので資金計画が重要です。
制度の趣旨は国税庁が「繰り延べであり非課税ではない」と明確に説明しています。
参考:国税庁 No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
譲渡損失が出たときに使える特例もある
土地や建物の譲渡損失は原則として他の所得との損益通算ができません。
ただし、マイホームを買い換えた場合など、一定要件のもとで損益通算や繰越控除ができる特例があります。
損失が出た年こそ申告の要否と適用可否の確認が重要です。
- 損益通算で給与所得などから控除できる場合がある
- 控除しきれない損失は翌年以後に繰り越せる場合がある
- 期限や住宅ローン要件など、適用条件が細かい
参考:国税庁 No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき
相続した空き家の売却は別の3,000万円控除がある
相続等で取得した被相続人の居住用財産(空き家)を一定期間に売った場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
相続人が3人以上の場合に控除額が変わるなど、近年の改正点も含めて確認が必要です。
空き家売却の特例は、マイホーム特例とは別枠の要件で規定されています。
参考:国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
確定申告で必要な書類と流れ
譲渡所得の申告は、計算の根拠となる契約書や領収書の整理が成否を分けます。
特例を使う場合は、適用要件を満たすことを示す書類も追加で必要になります。
国税庁の案内ページを軸に、全体像を押さえます。
申告が必要になる典型パターンを先に確認する
譲渡所得金額(利益)がある場合は原則として確定申告が必要です。
利益がなくても、特例適用のために申告が必要になる場合があります。
まずは国税庁の確定申告特集で、自分が対象かどうかを確認します。
「譲渡所得の内訳書」を作ると必要情報が揃う
土地や建物の売却では、譲渡所得の内訳書(計算明細書)に取引ごとの情報をまとめます。
契約書や領収書に基づいて記載し、確定申告書と一緒に提出します。
内訳書の用紙自体にも、提出や添付の注意が書かれています。
添付書類は「特例の有無」で増減する
一般に、売買契約書や登記事項、仲介手数料などの根拠書類が重要になります。
特例を使う場合は、特例ごとに追加書類が求められます。
国税庁は譲渡所得の申告に関する添付書類の一覧を公開しています。
| 区分 | 例 |
|---|---|
| 取引の根拠 | 売買契約書、決済書類、領収書(仲介手数料等) |
| 権利関係 | 登記事項証明書相当の情報など |
| 特例の追加 | マイホーム特例や空き家特例など、制度ごとの指定書類 |
よくある見落としをチェックリスト化する
申告でのつまずきは「書類がない」よりも「取引の切り分けが曖昧」なことから起きます。
売却代金と精算金、取得費の按分、特例の適用要件などを事前に点検すると手戻りが減ります。
最低限の確認事項を短くまとめます。
- 所有期間の判定日は「売った年の1月1日」
- 取得費は土地と建物で考え方が違う
- 譲渡費用は「売るために直接」かで判断
- 特例は「非課税」と「控除・繰延べ」を混同しない
不動産売却の税金で迷ったらここを押さえる
不動産売却の利益は原則として譲渡所得であり、一時所得の50万円控除をそのまま当てはめる発想は危険です。
税額は「譲渡益の計算」「長期・短期の判定」「特別控除や買換え特例の適用可否」で大きく変わります。
まずは国税庁の一次情報で制度の枠組みを確認し、次に契約書と領収書をそろえて取得費・譲渡費用を固めます。
特例を使う場合は、申告しないと適用できないことがあるため、税額ゼロ見込みでも申告要否を必ず確認します。
判断に迷う入金名目があるときは、売却代金と切り分けたうえで所得区分を確認し、必要なら税務署や税理士に相談するのが安全です。

