不動産を売って利益が出ると「ほかの赤字と相殺できないか」と考える人が多いです。
ただし税法上は「売却益」ではなく、譲渡所得の区分と損益通算の可否で判断します。
本記事では、通算できるケースとできないケースを分けて、申告で迷いやすい論点を整理します。
不動産売却益の損益通算
不動産売却益は、損益通算で「他の所得と相殺する」というより、譲渡所得として税額計算されるのが基本です。
土地建物の譲渡損失は、原則として給与所得など他の所得とは損益通算できません。
一方で、マイホームの譲渡損失には例外として損益通算や繰越控除が用意されています。
結論は「利益の相殺」ではなく「所得区分」で決まる
税金の計算では、まず不動産の売却は譲渡所得として扱うのが出発点です。
損益通算が問題になるのは、売却益ではなく売却損が生じたときが中心です。
譲渡所得の損失は、原則として他の所得と自由に混ぜられない点が重要です。
- 売却益:譲渡所得として課税される
- 売却損:原則は他所得と通算できない
- 例外:居住用の一定要件で通算できる
土地建物の譲渡損失は「土地建物の譲渡所得」とは相殺できる
土地や建物を売って譲渡損失が出た場合、同じ年の他の土地建物の譲渡所得から控除できます。
これは譲渡所得の計算の中で、同種の譲渡所得同士をならすイメージです。
基本ルールの概要は国税庁の説明が分かりやすいです。
| 相殺できる範囲 | 他の土地・建物の譲渡所得(同一年) |
|---|---|
| 相殺できない範囲 | 給与所得や事業所得などの他の所得 |
| 根拠の当たり | 国税庁 No.3203 |
給与所得などと損益通算できるのは「居住用の特例」だけが基本
土地建物の譲渡損失は、控除しきれない分があっても原則として他の所得とは損益通算できません。
ただし居住用財産の譲渡損失は、一定の要件を満たす場合に限り例外が認められます。
通算の可否が分かれるため、投資用物件と自宅を同じ感覚で扱わないことが大切です。
- 投資用の売却損:原則として他所得と通算不可
- 自宅の売却損:要件を満たせば通算や繰越の可能性
- 判断は「居住用か」「要件を満たすか」で決まる
売却益側の代表的な節税は「特別控除」と「税率区分」
売却益を減らす考え方としては、損益通算よりも特別控除や税率の区分が実務的です。
たとえばマイホームの3,000万円特別控除は、要件を満たせば譲渡所得から控除できます。
制度の概要は国税庁の案内で確認できます。
| 代表例 | 居住用財産の3,000万円特別控除 |
|---|---|
| 効果 | 譲渡所得から最高3,000万円を控除 |
| 参照 | 国税庁 No.3302 |
所有期間で税率が大きく変わる
土地建物の譲渡所得は、所有期間が5年超か5年以下かで税率が変わります。
所有期間の判定は「譲渡した年の1月1日時点」で行う点が実務での落とし穴です。
税率の説明は国税庁のタックスアンサーが一次情報になります。
- 長期譲渡所得:5年超(国税庁 No.3208)
- 短期譲渡所得:5年以下(国税庁 No.3211)
- 判定基準:譲渡年1月1日時点の所有期間
譲渡所得の基本と売却益の計算
損益通算を考える前に、そもそも「売却益」がどうやって課税対象になるのかを整理します。
譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
取得費の不明や減価償却の扱いで結果が大きく変わるため、先に全体像を押さえます。
譲渡所得は「収入-取得費-譲渡費用-特別控除」で考える
土地建物の譲渡所得は、譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて求めます。
一定の特例がある場合は、さらに特別控除額を差し引いて課税対象を減らします。
計算の基本は国税庁の説明に沿って組み立てるのが安全です。
| 基本式 | 収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 |
|---|---|
| 一次情報 | 国税庁 No.3202 |
| 用語整理 | 売却益=一般用語、譲渡所得=税法上の所得区分 |
取得費がカギになりやすい
取得費は購入代金だけでなく、購入手数料や改良費などを含めて考えます。
建物部分は所有期間中の減価償却費相当額を控除して計算します。
取得費が小さく見積もられるほど譲渡所得が大きくなり、税負担が増えます。
- 購入代金と購入手数料は基本に含める
- 改良費や設備費は証憑が重要になる
- 建物は減価償却を踏まえて取得費を調整する
譲渡費用にできる代表例を整理する
譲渡費用は、売るために直接かかった費用を指します。
仲介手数料や測量費、契約書の印紙代などが代表例です。
どこまで入るか迷う場合は、国税庁の例示を基準にします。
| 代表例 | 仲介手数料、測量費、印紙代、立退料、取壊し費用など |
|---|---|
| 一次情報 | 国税庁 No.3202 |
| 注意 | 「売却後のリフォーム」などは性質を見て切り分ける |
不動産売却損が出たときの損益通算ルール
損益通算は「赤字を黒字から差し引く」考え方ですが、すべての赤字が自由に相殺できるわけではありません。
特に土地建物の譲渡損失は、原則として他の所得との通算が制限されています。
ここでは基本ルールと、例外に入るかどうかの見分け方を整理します。
損益通算の定義と対象所得を確認する
損益通算とは、各種所得の損失額を他の所得の黒字から差し引く計算です。
対象となる所得の範囲や、通算できない損失の考え方が定められています。
まずは定義を一次情報で押さえると判断がぶれません。
| 用語 | 損益通算 |
|---|---|
| 参照 | 国税庁 No.2250 |
| ポイント | 損失が出ても必ず通算できるとは限らない |
土地建物の譲渡損失は原則「他の所得」と通算できない
土地建物の譲渡損失は、他の土地建物の譲渡所得とは相殺できます。
しかし控除しきれない損失が残っても、給与所得などの他の所得と損益通算することは原則できません。
例外があることも含めて、国税庁の整理が明確です。
- 相殺できるのは同じ土地建物の譲渡所得が基本
- 給与所得などと通算は原則不可
- 例外は居住用の一定要件に限定される
例外に入るかは「居住用」かつ「長期」が目安になる
居住用財産を譲渡して譲渡損失が出た場合は、一定要件のもとで他の所得と損益通算できることがあります。
この例外は長期譲渡所得に該当することが前提になるのが典型です。
国税庁の概要で要点を押さえるのが近道です。
| 例外の方向性 | 居住用財産の譲渡損失は一定要件で通算や繰越が可能 |
|---|---|
| 一次情報 | 国税庁 No.3203 |
| キーワード | 居住用、長期、要件充足、申告が必要 |
マイホーム譲渡損失で通算できる特例
売却損でも通算が認められる代表例は、マイホームに関する2つの特例です。
いずれも申告が前提で、期限や要件を外すと適用できません。
「通算できると思っていたのにできなかった」を防ぐため、制度ごとの差を把握します。
買換えをした場合の譲渡損失は損益通算と繰越控除がある
旧居宅を譲渡して新居宅を購入する買換えで譲渡損失が生じたときは、一定要件で通算が可能です。
通算しても控除しきれない損失は、翌年以後3年内に繰り越して控除できます。
適用期限や概要は国税庁の説明で確認できます。
- 対象:マイホームを買い換えた場合の譲渡損失
- 効果:給与所得などから控除できる場合がある
- 繰越:控除しきれない損失は3年間の繰越控除
「特定のマイホーム」の譲渡損失にも損益通算と繰越控除がある
買換え以外でも、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡損失が通算対象になる特例があります。
対象となる「譲渡資産」や「特定譲渡」の要件が定められているため、自己判断で進めないことが大切です。
要件の確認は国税庁の該当ページから入るのが安全です。
| 制度名の目安 | 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除 |
|---|---|
| 一次情報 | 国税庁 No.3392 |
| 関連整理 | 国税庁 No.3203 |
必要書類と申告の作業量を見積もる
これらの特例は、確定申告書に所定の書類を添付して提出することが必要です。
登記事項証明書や売買契約書の写しなど、証憑の準備が前提になります。
書類名まで含めて国税庁が例示しているため、事前にチェックすると安心です。
| 書類例 | 明細書、計算書、登記事項証明書、売買契約書の写しなど |
|---|---|
| 参照 | 国税庁 No.3379 |
| 注意 | 添付漏れは適用不可の原因になりやすい |
不動産売却益で税負担を減らす代表的な特例
不動産売却益の節税は、損益通算よりも控除や軽減税率を正しく使う方が現実的です。
特例には併用可否や対象外となるケースがあるため、要件の確認が欠かせません。
ここでは利用者が多い制度を中心に、使い方の目線で整理します。
マイホームの3,000万円特別控除は売却益対策の中心になる
マイホームを売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。
所有期間の長短に関係なく適用される点が特徴です。
適用要件や対象外の例は国税庁の案内で確認できます。
- 控除額:最高3,000万円
- 対象:居住用財産の譲渡
- 一次情報:国税庁 No.3302
10年超のマイホームは軽減税率の対象になり得る
一定の要件を満たす居住用財産の譲渡では、長期譲渡所得の税率が軽減される特例があります。
要件の中には「所有期間が10年を超える」など、時点判定が重要なものが含まれます。
制度の要件は国税庁のページでチェックできます。
| 制度名 | マイホームを売ったときの軽減税率の特例 |
|---|---|
| 要件の例 | 譲渡年1月1日時点で所有期間10年超など |
| 参照 | 国税庁 No.3305 |
特例の併用可否を先に確認する
特別控除と軽減税率は併用できるケースがあります。
一方で、同一年中の他の特例との関係や、適用できない条件も存在します。
迷う場合は、国税庁のパンフレットやタックスアンサーを起点に条文体系へ当たるのが安全です。
- 併用の可否は制度ごとのルールで決まる
- 特例は「申告しないと使えない」ものが多い
- 一次情報の起点:国税庁 No.3302と国税庁 No.3305
税率の情報は必ず一次情報で確認する
譲渡所得の税率は、長期か短期かで大きく変わります。
税率の細部には復興特別所得税などの取り扱いも関係します。
最終判断は国税庁の税額計算ページを参照して行うのが確実です。
| 長期の参照 | 国税庁 No.3208 |
|---|---|
| 短期の参照 | 国税庁 No.3211 |
| 判定 | 譲渡年1月1日時点の所有期間で区分 |
損益通算の可否を整理して納税負担を減らす
不動産売却益は「損益通算で相殺する」という発想より、譲渡所得として正確に計算して特例を適用する発想が重要です。
売却損は原則として他所得と通算できませんが、マイホームの譲渡損失は要件を満たせば通算や3年繰越が可能です。
取得費と譲渡費用の整理、所有期間の判定、特例の要件確認と添付書類までをセットで準備すると、申告での取りこぼしを減らせます。
判断に迷う場合は一次情報である国税庁のタックスアンサーを起点に、条件を一つずつ照合するのが最短ルートです。

