不動産を売却したい売主は、複数社に同時に問い合わせることが珍しくありません。
そのため追客は「連絡回数を増やすこと」ではなく「信頼を積み上げる順番」を設計することが重要です。
売主の温度感と不安の正体を早い段階で捉えられれば、媒介の判断は前に進みます。
一方で急ぎすぎる提案や根拠の薄い断定は、警戒心を強めて返信が止まります。
ここでは不動産売却の追客を、初動から仕組み化まで一連の流れで整理します。
不動産売却の追客は初動5分と台本で差がつく
不動産の売却検討は意思決定までの期間が長く、初動で関係の土台が決まります。
最初の5分で「何を確認し」「何を約束し」「何を渡すか」を固定すると、追客が再現可能になります。
初回連絡で伝えるべき骨格
初回連絡は査定額の話よりも、進め方の安心感を先に渡すことが効きます。
売主が今いちばん怖いのは「何をされるか分からない状態」だからです。
連絡の最後に次の接点を必ず置くと、追客が自然に始まります。
- 本日のゴールを先に共有する
- 査定の流れを3段で示す
- 次回連絡の日時を仮押さえする
- 必要資料を最小セットで案内する
売却理由を一行で言語化する
追客が刺さらない原因の多くは、売却理由が言語化されていないことです。
売主の言葉をそのまま短く残すと、次回以降の提案がぶれません。
理由は深掘りしすぎず、まずは一行で仮置きします。
| 要点 | 売却理由を一行で仮置きする |
|---|---|
| 聞き方 | いちばんのきっかけだけ先に教えてください |
| メモ例 | 転勤で時期優先で売りたい |
| 次アクション | 理由に合う販売戦略の候補を次回提示する |
査定訪問までの約束を軽く作る
売主は査定訪問の前に、営業される不安を感じやすいです。
そこで「訪問の目的」と「所要時間」と「持ち帰る成果物」を先に約束します。
約束が具体的だと、訪問が売主にとって得な時間になります。
- 目的は相場把握と売り方の選択にする
- 所要時間は幅を持たせて伝える
- 持ち帰る成果物を明言する
- 当日の確認項目を事前共有する
競合がいる前提で比較軸を渡す
売主が比較しているのは会社名ではなく、安心できる判断材料です。
比較軸を先に提示すると、追客の会話が「値引き合戦」から離れます。
比較軸は難しい言葉を避け、売主の生活感に寄せます。
| 比較軸 | 売れるまでの想定期間 |
|---|---|
| 比較軸 | 連絡の頻度と報告の中身 |
| 比較軸 | 値下げ判断の基準の出し方 |
| 比較軸 | 内覧対応のサポート範囲 |
返信がないときの次打ちを固定する
返信がない状況は拒否ではなく、優先順位が落ちているだけのことが多いです。
次打ちを感情で決めると、連絡のムラが信用を下げます。
あらかじめ回数と間隔を決めると、しつこさを避けて継続できます。
- 翌日に要点だけの短文を送る
- 3日後に質問を一つだけ投げる
- 1週間後に役立つ資料を一つ渡す
- 不通が続く場合は一旦区切りを宣言する
売主の温度感をつかむ聞き方を整える
追客の強さは、売主の温度感を正確に把握できるかで決まります。
温度感が分かれば、連絡頻度と提案の粒度を適切に調整できます。
温度感を測る質問を3つ持つ
売主の温度感は、ストレートに聞くよりも状況の質問で分かります。
質問は短く、答えやすい選択肢を含めると自然です。
答えが出たら、追客の頻度をその場で合わせます。
- 売却の希望時期はいつ頃ですか
- 住み替えや資金計画は同時進行ですか
- いま不安な点は一つ挙げると何ですか
温度別に追客の優先度を変える
全員に同じ追客をすると、熱い見込みを取りこぼします。
温度別に次に渡す情報を変えると、押し売りに見えにくくなります。
分類は厳密にしすぎず、現場で回る粒度にします。
| 温度 | 状態の目安 | 追客の主目的 |
|---|---|---|
| 高い | 時期が決まっている | 訪問と媒介条件の合意 |
| 中 | 相場を知りたい | 根拠ある相場理解の支援 |
| 低い | 売るか迷っている | 不安の言語化と選択肢提示 |
断られない再提案は選択肢で作る
売主は断ること自体が負担で、無視に流れやすいです。
再提案は結論を迫るのではなく、選択肢で会話を戻します。
選択肢の片方に「何もしない」も含めると心理的に楽になります。
- 今週10分だけ電話で整理する
- 資料だけ受け取って必要なときに連絡する
- 訪問は来週以降で日程だけ仮押さえする
売主の警戒心を上げる言い回しを避ける
追客の言葉選びを誤ると、内容が正しくても売主は離れます。
特に売却は金額が大きく、強い断定が逆効果になりやすいです。
言い回しをチームで共通化すると品質が安定します。
| 避けたい言い回し | 置き換え例 |
|---|---|
| 絶対にこの価格で売れます | 近い条件の成約事例から目安を出します |
| 他社はやめた方がいいです | 比較の観点を一緒に整理します |
| 今すぐ決めないと損です | 判断材料をそろえる順番を提案します |
電話とメールとLINEの役割を分ける
追客の反応率は、連絡手段の選び方で大きく変わります。
同じ内容でも、媒体が違うだけで受け取られ方が変わるからです。
電話は確認と合意に使う
電話は情報提供よりも、確認と合意に向いています。
短時間で要点を揃え、次の行動を決める場にします。
長電話は負担になりやすいので、最初に時間を宣言します。
| 電話の目的 | 状況確認と次回の約束 |
|---|---|
| 時間 | 3分から10分で切る |
| 話す順 | 近況→不安→次の一手 |
| 終わり方 | 日時と宿題を一文で復唱 |
メールは情報の保存に使う
売主は後で見返せる形を求めており、メールは保存に向きます。
本文は短く、添付やリンクで詳細を渡すと読みやすいです。
件名に具体性を入れると開封されやすくなります。
- 件名は要点を一つに絞る
- 本文は結論から先に書く
- 質問を一つだけ入れる
- 次にしてほしい行動を明記する
LINEは心理的ハードルを下げる
LINEは短文での確認に向き、返事の心理的ハードルを下げます。
売却の重要事項はLINEだけで完結させず、補助として使います。
既読が付くことを前提に、圧をかけない文にします。
- 相場資料をお送りしました
- 気になる点は一つだけでも大丈夫です
- ご都合の良い時間帯を教えてください
- 急ぎではないので必要なときに返信ください
SMSは連絡不通の最後の橋渡しに使う
メールが埋もれやすい場合に、SMSは短い到達確認に使えます。
内容は要件だけにし、詳細は電話やメールに誘導します。
送信回数を決めておくと、しつこさを避けられます。
| 使う場面 | 重要連絡の見落とし対策 |
|---|---|
| 文字数 | 要件を一文で伝える |
| 導線 | 折り返し先を一つに絞る |
| 注意 | 連投しない |
売却検討が進む情報提供を用意する
追客で最も強いのは、売主の不安を減らす具体的な情報です。
役立つ情報を小出しにできると、連絡が営業に見えにくくなります。
相場は根拠のセットで見せる
相場の話は結論だけだと信用されにくく、根拠のセットが必要です。
根拠は難しい統計よりも、売主の物件に近い事例が分かりやすいです。
売主が見返せる形にまとめると、追客の素材になります。
| 渡すもの | 近隣の成約事例の要約 |
|---|---|
| 渡すもの | 現在の競合在庫の傾向 |
| 渡すもの | 売出価格の考え方の図 |
| 次の質問 | 期間優先か価格優先か |
査定額のブレは先に説明して不安を消す
売主が一括査定で混乱するのは、会社ごとの査定額がばらつくからです。
ブレる理由を先に説明すると、追客が価格勝負になりにくくなります。
断定よりも、判断基準を共有する姿勢が信頼につながります。
- 成約事例の選び方が違う
- 売出価格と成約価格の混同がある
- 期間設定の前提が違う
- 広告費や囲い込み方針が違う
売主が動けるタスクに落とす
売却検討が止まるのは、次に何をすれば良いかが曖昧だからです。
そこで売主が自宅でできるタスクに落とすと、行動が進みます。
タスクは多くせず、最短で判断が進む順にします。
- 住宅ローン残債の概算を確認する
- 売却希望時期の候補を2つ出す
- 残置物の量を写真で把握する
- 内覧対応の可否を家族で共有する
法令とルールは一次情報リンクで示す
追客では「言った言わない」のトラブルを避けるために、根拠の示し方が大切です。
特に広告表現や個人情報の扱いは、曖昧な説明が不信感につながります。
一次情報のリンクを添えると、誠実さが伝わります。
| テーマ | 一次情報 | 追客での使いどころ |
|---|---|---|
| 誇大広告の禁止 | e-Gov法令検索(宅地建物取引業法) | 断定表現を避ける説明に添える |
| 個人情報の扱い | 国土交通省資料(PDF) | 顧客情報の管理方針の説明に使う |
| 広告メールの基本 | 迷惑メール相談センター | メール配信の同意と解除導線の説明に使う |
追客を仕組み化してムラをなくす
追客が属人化すると、忙しい月ほど反応率が落ちます。
仕組み化の目的は、連絡の質を落とさず継続できる状態を作ることです。
セグメントは売却理由で切る
売却理由が分かれば、送るべき情報の種類が決まります。
理由別にテンプレを用意すると、追客の作業が短くなります。
分類が増えすぎると運用できないので、最初は少数で始めます。
| 分類 | 例 | 渡す情報 |
|---|---|---|
| 期限優先 | 転勤や住み替え | 販売期間の設計と内覧導線 |
| 価格優先 | 資産整理 | 値下げ基準と成約事例の更新 |
| 迷い中 | 将来不安 | 売らない選択肢も含む整理 |
ステップ配信は営業感を薄く設計する
ステップ配信は内容の順番が命で、売主の意思決定に沿う必要があります。
いきなり媒介条件の話を送ると、売主の警戒心が上がります。
最初は不安解消の情報を中心にし、最後に相談の入口を置きます。
- 1通目はお礼と流れの再掲にする
- 2通目は相場の見方を短く渡す
- 3通目は内覧準備の要点を渡す
- 4通目は相談の選択肢を提示する
追客KPIは少数に絞る
KPIが多いと入力が面倒になり、結局回らなくなります。
媒介獲得に直結する指標だけに絞ると、改善が速いです。
まずは記録を続けられる数にします。
| KPI | 見る目的 |
|---|---|
| 初回接触までの時間 | 初動の改善 |
| 訪問化率 | 提案の質の確認 |
| 媒介化率 | 全体設計の確認 |
| 返信までの日数 | 連絡頻度の調整 |
ツール導入は運用の絵が描けるかで決める
追客ツールは便利ですが、導入だけで成果が出るわけではありません。
誰がいつ何を入力し、どのタイミングで自動配信するかを先に決めます。
運用の絵が描けるツールだけを選ぶと失敗しにくいです。
- 顧客情報が一元化できる
- セグメント配信ができる
- 対応履歴が残せる
- 解除と同意の管理ができる
売主が安心して返信できる追客にする
不動産売却の追客は、連絡の多さではなく安心の積み上げで決まります。
初動で約束を作り、温度感に合わせて情報と頻度を調整すると、返信は戻ってきます。
電話とメールとLINEを役割で使い分けると、押し売りに見えにくくなります。
役立つ情報を準備し、セグメントとステップ配信でムラをなくすと、追客は再現可能になります。
最後は売主が迷わず次の一歩を選べるように、選択肢を渡し続けることが大切です。

