不動産会社に売却を頼むとき、「広告料を別で払うのが普通なのか」が不安になる人は多いです。
結論から言うと、通常の売却活動に必要な広告は仲介手数料の範囲に含まれる前提で、売主が別途払う必要は基本的にありません。
ただし、売主が「特別に依頼した広告」など例外のケースでは、実費として広告料の負担が発生します。
この記事は、広告料の定義、請求される条件、相場感、断り方、税務上の扱いまでを、一次情報の根拠リンク付きで整理します。
不動産売却の広告料は原則不要で特別依頼のみ実費になる
不動産売却でいう広告料は、通常は売主が追加で支払うものではなく、特別な依頼があった場合に限り実費負担になる考え方です。
まずは「広告料=常に必要」という思い込みを外すことが、不要な支払いを防ぐ最短ルートです。
「広告料」と呼ばれるお金には2種類ある
売却の現場で「広告料」と言われるものは、①特別依頼にかかる実費と、②成約を促すインセンティブ的な支払いが混在します。
言葉が同じでも性質が違うため、どちらの意味かを必ず確認する必要があります。
標準媒介契約約款は「特別に依頼した広告の実費」を明記している
国土交通省の標準媒介契約約款では、特別に依頼した広告の料金は依頼者負担で、請求に基づき実費を支払う旨が定められています。
裏返すと、特別依頼でない通常の広告を、後から一方的に実費請求するのは筋が悪い整理になります。
「報酬(仲介手数料)以外は受け取れない」が原則で例外がある
媒介の報酬は上限が告示で定められており、原則としてそれ以外の報酬は受け取れません。
ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額は例外として扱われます。
「特別依頼に係る費用」は成約の有無と切り離されることがある
国土交通省の解釈・運用の考え方では、通常の広告等は宅建業者負担である一方、特別依頼の費用は見積り説明のうえ実行し、成約の有無に関わらず請求できる旨が示されています。
つまり「成約しなかったから広告料ゼロ」という単純構造ではなく、合意の有無が核心になります。
売主が困るのは「広告料」名目で実質的な上乗せをされるケース
仲介手数料の外で「事務手数料」「広告費」などを当然のように請求される相談が出るのは、この混同が背景にあります。
契約書と見積りと領収の3点が揃っていなければ、支払う前に立ち止まるべきです。
まず押さえる判断基準は「事前合意」と「実費性」
売主負担になり得るのは、売主が明確に依頼し、見積り説明があり、実費として裏付けが取れる場合に限って考えるのが安全です。
逆に、事前の合意がないまま成約後に出てくる請求は、争点が立ちやすいパターンです。
広告料と仲介手数料が混同される理由
広告活動そのものは売却に必須なので、費用がどこに含まれているかが見えにくいことが混同の原因です。
ここでは「なぜ揉めるのか」を構造で分解して、確認ポイントを明確にします。
仲介手数料には売却活動のコストが内包される前提がある
一般的な説明でも、広告宣伝費など売却活動のコストは仲介手数料の中で賄われる前提が語られます。
だからこそ、通常の広告まで別請求されると違和感が生まれます。
「特別の広告」という言葉が曖昧で解釈がズレやすい
ポータル掲載やレインズ登録は通常の範囲だと理解されやすい一方、紙媒体や大型露出は特別に見えることがあります。
曖昧さを放置すると、後で「これは特別だった」という主張が出やすくなります。
売主が払うお金の候補が多く、名目で紛れやすい
売却には印紙代や測量費など複数の支出があり、広告費もその中に埋もれがちです。
名目だけで判断せず、何の対価かを言語化して整理する必要があります。
混同を防ぐチェックリスト
媒介契約の段階で、費用負担の範囲を一枚で確認できる状態にしておくと強いです。
- 広告料の定義が契約書にあるか
- 特別依頼の範囲が具体化されているか
- 見積り提示のタイミングが決まっているか
- 実費の証憑(領収書等)を出せる運用か
- 支払時期が「依頼時」か「成約時」か
よくある費用名目と性質の整理
同じ「費用」でも、成功報酬なのか実費なのかで意味が変わります。
| 名目 | 性質 | ポイント |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 成功報酬 | 上限は告示で規制 |
| 特別広告の実費 | 実費精算 | 事前依頼と見積り説明が要 |
| 事務手数料 | 要注意 | 根拠と内訳の提示が必須 |
| 測量費 | 実費 | 誰が発注者かで負担が変わる |
広告料が発生する「特別の広告」の具体例
広告料が発生し得るのは、売主が通常範囲を超える広告を明確に依頼したときです。
ここでは、線引きの考え方と具体例を提示します。
通常の広告として扱われやすい例
一般的に売却活動の一環として行われるものは、宅建業者負担の通常広告に整理されやすいです。
- 自社サイト掲載
- 一般的な不動産ポータル掲載
- 指定流通機構への登録
- 現地写真撮影と図面作成
- 社内顧客への紹介
特別依頼として実費になりやすい例
標準媒介契約約款で示される「特別に依頼した広告」や「遠隔地への出張旅費」は、依頼者負担として整理されます。
| 例 | 特別になりやすい理由 | 事前に決めること |
|---|---|---|
| 新聞の大きな広告枠 | 単価が高い | 掲載回数と枠 |
| テレビ・ラジオCM | 制作費と放映費が発生 | 期間と素材 |
| 遠隔地への出張対応 | 旅費が明確な実費 | 交通手段と上限 |
| 大規模なチラシ大量配布 | 印刷・配布が別建て | 部数と配布エリア |
特別依頼にするなら「見積り説明」が先に必要になる
国土交通省の解釈では、特別な広告や出張を受けたときは、標準媒介契約約款に基づく見積りを説明してから実行すべきとされています。
見積りがないまま進む提案は、後のトラブル要因になり得ます。
実費の証憑が出せない請求は危険信号
特別依頼の費用は「実費」である以上、領収書や請求書など客観資料と紐づくのが自然です。
内訳が出ない場合は、広告料という名目で実質的に上乗せされている可能性を疑うべきです。
広告料を支払うメリットと向くケース
広告料の支払いは、常に損ではありません。
狙いと条件が合うなら、短期で買主を広く集めるための投資として合理性が出ます。
広告料が効きやすい物件条件
広告の効果は「物件の魅力」と「市場の競争状態」に左右されます。
- 競合物件が多いエリア
- 相場より強気な価格で出す
- 買主層が限定される間取り
- 築年数が古く印象で負けやすい
- 遠方からの集客が必要
支払うなら「目的→施策→測定」をセットにする
特別広告をするなら、何を改善したいのかを先に決めることで費用対効果が見えます。
目的が曖昧なまま「とりあえず広告」は、支払いだけが残りやすいです。
広告料を合意するときの条件設計
実費であっても、条件設計が弱いと想定外に膨らみます。
| 決める項目 | 例 | 狙い |
|---|---|---|
| 上限額 | ○万円まで | 膨張を防ぐ |
| 実施期間 | 2週間のみ | 惰性を防ぐ |
| 成果指標 | 反響数・内覧数 | 検証する |
| 中止条件 | 反響0なら停止 | 損切りする |
広告料を払うより先に改善したいこと
広告を増やしても、物件の見せ方が弱いと反響は伸びません。
写真、募集文、価格設定、内覧対応の改善が先に来るケースは多いです。
広告料を請求されたときの確認手順と断り方
広告料の話が出たら、感情で拒否するより、契約と根拠を確認して整理するのが安全です。
適正な実費なら合意し、根拠が弱い請求は断るという線引きを作れます。
最初に確認するのは媒介契約書と約款条項
媒介契約書が標準媒介契約約款の考え方に沿っているかを確認します。
条項にない費用を当然のように請求される場合は、根拠の提示を求めるべきです。
「特別に依頼した広告」に該当するかの質問テンプレ
質問は短く、YesかNoで答えられる形にするとブレません。
- これは私が特別に依頼した広告ですか
- 依頼の証跡はどこに残っていますか
- 見積り説明はいつ行いましたか
- 実費の請求書と領収書は出せますか
- 上限額はどこで合意しましたか
断る場合は「合意がない」「実費の裏付けがない」を軸にする
売主負担が成立するのは、依頼と見積り説明が先にあり、実費であることが確認できる場合という整理が基本です。
この前提を外れる請求には、支払えない理由を条項と手続で返すのが有効です。
支払うなら支払うで、証憑と内訳を残しておく
支払った広告料は、後で税務上の検討材料になることがあります。
| 残すもの | 理由 |
|---|---|
| 見積書 | 事前合意の証拠 |
| 発注書・メール | 依頼の証跡 |
| 請求書 | 内訳の確認 |
| 領収書 | 実費支払いの証明 |
税務上の扱いと「譲渡費用」になる条件
広告料を払った場合、税金計算で差し引けるかが気になる人も多いです。
ポイントは「売るために直接かかった費用かどうか」です。
譲渡所得は「取得費+譲渡費用」を引いて計算する
国税庁の案内では、譲渡価額から取得費と譲渡費用を差し引いて課税譲渡所得金額を計算すると示されています。
この枠組みを理解すると、広告料の位置づけを整理しやすくなります。
譲渡費用は「売るために直接かかった費用」である
国税庁は譲渡費用を、土地や建物を売るために直接かかった費用と説明しています。
直接性が薄い支出は、譲渡費用に入らないことがあるので注意が必要です。
広告料が譲渡費用になり得るのは「売却のための広告」と説明できるとき
買主を探すために広告料を支払った場合に譲渡費用に該当し得るという整理は、実務でもよく語られます。
ただし、売却との関係が弱い広告や時期が離れた広告は、説明が難しくなることがあります。
譲渡費用として主張するなら「直接性」を補強する
税務は名目より実態なので、売却との直接性を証憑で補強すると整理がつきます。
| 補強材料 | 直接性の説明例 |
|---|---|
| 広告の内容 | 売却対象物件の募集である |
| 実施時期 | 売却活動期間内である |
| 反響ログ | 内覧や問い合わせに繋がった |
| 契約上の合意 | 特別依頼として実費合意がある |
要点を押さえて不動産売却の広告料で損を防ごう
不動産売却の広告料は、通常の売却活動に含まれる範囲なら原則として別途負担は不要です。
売主負担になり得るのは、特別に依頼した広告や出張などを事前合意し、実費として説明と証憑が揃う場合です。
請求が出たら、媒介契約書の条項、見積り説明、実費の裏付けを順に確認し、合意できるものだけを支払う姿勢が重要です。
支払った広告料は、売却のために直接かかった費用として説明できるなら譲渡費用の検討対象になり得るため、証憑を残しておくと安心です。
参考リンク:標準媒介契約約款(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/notice/noticedata/sgml/1990/26196400/26196400.html。
参考リンク:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001881261.pdf。
参考リンク:No.3255 譲渡費用となるもの(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm。
参考リンク:No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(国税庁)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm。

