不動産売却のインボイスは原則不要だが例外がある|課税・非課税と実務の分かれ目は?

キャメル色ソファと個性的なインテリアが魅力の北欧風リビング
税金

不動産売却にインボイスが必要なのか気になる背景には、消費税の扱いが取引相手によって変わる不安があります。

結論としては、個人が自宅を売るようなケースではインボイスを求められる場面は多くありません。

一方で、事業として建物を売る場合や、買主が課税事業者で仕入税額控除を重視する場合は、インボイスの有無が条件交渉に直結します。

このページでは「どんな売却で必要になり、どんな売却で気にしなくてよいのか」を、土地と建物の違いから実務の手順まで整理します。

  1. 不動産売却のインボイスは原則不要だが例外がある
    1. 個人が自宅を売るだけなら気にしなくてよい
    2. 土地は非課税でインボイスの対象外になりやすい
    3. 建物は条件次第で課税になり得る
    4. 買主が課税事業者だとインボイスの有無が条件になりやすい
    5. 仲介手数料は課税でインボイスの話が出やすい
    6. 免税事業者の売主だと値引き交渉が起きやすい
    7. まず確認すべきは「売主の立場」と「建物の有無」
    8. 登録番号は公表サイトで客観的に確認できる
  2. インボイスが関係する取引と関係しない取引を整理
    1. 関係しにくいのは非課税取引と消費者取引
    2. 関係しやすいのは課税事業者同士の建物売買
    3. 「必要になる条件」を先に固定すると迷わない
    4. 混同しやすい税金と費用を切り分ける
  3. 不動産売却で消費税が発生する典型パターン
    1. 課税事業者か免税事業者かで前提が変わる
    2. 「事業としての譲渡」に当たると課税になり得る
    3. 土地と建物の按分がインボイス実務の核心になる
    4. 居住用でも「周辺費用の課税」で影響が残る
  4. 免税事業者の売主と取引する場合の経過措置
    1. 80%控除と50%控除の期間を押さえる
    2. 買主側は保存要件と社内処理の形を整える
    3. 売主側は登録の損得を「売却後」まで含めて判断する
    4. 価格交渉は「税額相当」だけで決まらない
  5. 売主・買主・仲介会社がやるべき実務チェック
    1. 売主が先に確認するチェックリスト
    2. 買主が契約前に確認するチェックリスト
    3. 書面に残すべき事項をテンプレでそろえる
    4. 仲介手数料のインボイス対応は別枠で管理する
  6. インボイスの不安を減らすための要点

不動産売却のインボイスは原則不要だが例外がある

グレーソファと小さなテレビが置かれたシンプルなファミリーリビング

不動産売却でインボイスが問題になるのは、消費税が課税される取引で、買主が仕入税額控除を取りたいときです。

まずは「売却に消費税が関係するか」と「相手が課税事業者か」を押さえると、判断が一気に簡単になります。

個人が自宅を売るだけなら気にしなくてよい

インボイス制度は、課税事業者が仕入税額控除を受けるために、一定事項が記載された請求書等の保存を求める仕組みです。

つまり買主が一般の個人で、そもそも仕入税額控除を行わない取引なら、インボイスが論点になりにくいです。

  • 買主が一般消費者である
  • 売主が事業として売っていない
  • 請求書よりも契約書と領収書が中心の手続きになる

不安な場合でも、売買のどこで消費税が発生し得るかを先に確認すると、過剰に構えずに済みます。

土地は非課税でインボイスの対象外になりやすい

不動産のうち土地の譲渡は、消費税の非課税取引として整理されています。

土地代そのものに消費税を乗せない以上、土地部分だけを見ればインボイスで税率や税額を伝える必要が生じにくいです。

項目 扱い
土地の譲渡 非課税取引として扱われる
根拠の確認先 国税庁 No.6225
関連する注意点 駐車場など一部は課税になり得る

売買代金を土地と建物で分けて考える視点が、インボイス要否の入口になります。

建物は条件次第で課税になり得る

建物の譲渡は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡に当たると、課税の対象になり得ます。

たとえば個人でも、事業用資産として使っていた建物や賃貸用の建物を売却する場合に、課税となる説明があります。

  • 店舗として使っていた建物を売る
  • 賃貸用の建物を売る
  • 事業として反復継続して売買している

整理の出発点として、国税庁 No.3240の考え方を確認すると判断がぶれにくいです。

買主が課税事業者だとインボイスの有無が条件になりやすい

買主が課税事業者であれば、課税仕入れに係る消費税を仕入税額控除できるかが実務上の大きな関心になります。

インボイス制度の下では、原則として適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件になるため、買主側から発行可否を確認されやすいです。

買主の属性 インボイス確認の重要度
一般消費者 低い
課税事業者 高い
免税事業者 低い
判断の基礎 国税庁 No.6498

買主が法人や個人事業主の場合は、売却対象が建物を含むかどうかまで踏み込んで確認されることがあります。

仲介手数料は課税でインボイスの話が出やすい

不動産会社に支払う仲介手数料は消費税の課税対象となるため、買主や売主が課税事業者だとインボイスの保存要件が問題になりやすいです。

売買そのものが非課税寄りでも、周辺費用だけはインボイス対応が必要というケースが現場ではよく起きます。

  • 仲介手数料
  • 管理会社への業務委託料
  • 事業用の各種手数料

仲介会社が適格請求書発行事業者かどうかは、取引前に確認しておくと後戻りが減ります。

免税事業者の売主だと値引き交渉が起きやすい

売主が免税事業者で適格請求書を発行できない場合、買主が課税事業者だと仕入税額控除が制限される可能性があります。

その結果として、買主が見込む税負担分を売買代金の交渉材料にすることがあり、条件調整の論点が増えます。

論点 起きやすいこと
売主が未登録 買主が税負担を織り込む
売主が登録済み 買主の不確実性が減る
調整の方向 価格・手数料・引渡条件で折衝

免税のままにするか登録するかは、売却価格だけでなく将来の消費税負担も含めて検討が必要です。

まず確認すべきは「売主の立場」と「建物の有無」

インボイス要否は細部に入るほど複雑に見えますが、入口の確認項目は多くありません。

先に当てはめるだけで、おおむねの方針が決まり、専門家に相談するときも話が早くなります。

  • 売主は課税事業者か免税事業者か
  • 売却対象に建物が含まれるか
  • 買主は課税事業者か
  • 仲介手数料など課税の周辺費用があるか

この4点を押さえたうえで、次章の「関係する取引と関係しない取引」を確認してください。

登録番号は公表サイトで客観的に確認できる

取引先が適格請求書発行事業者かどうかは、登録番号の有無で判断します。

登録番号は「T+13桁」で構成されることが示されており、マイナンバーを使わない点も明記されています。

確認したいこと 参照先
登録番号の意味 登録番号とは
登録の有無の検索 適格請求書発行事業者公表サイト
実務のポイント 契約前に相手の登録状況を確認する

口頭確認だけに頼らず、証跡として検索結果を保存しておくと社内処理が安定します。

インボイスが関係する取引と関係しない取引を整理

黒いレザーソファとアイランドキッチンがある高級感のあるリビングダイニング

インボイスが関係するのは「課税取引で、仕入税額控除を使う場面」に限られます。

逆にいえば、非課税取引や買主が一般消費者の取引では、制度の影響は間接的になります。

関係しにくいのは非課税取引と消費者取引

土地の譲渡のように非課税取引として扱われるものは、消費税額を伝える必要が生じにくいです。

また、買主が一般消費者であれば仕入税額控除の制度自体を使わないため、インボイスの保存要件が問題になりにくいです。

  • 土地の譲渡は非課税と整理される
  • 居住用の自宅売却は事業取引になりにくい
  • 買主が消費者なら控除の論点が出にくい

非課税の考え方は、国税庁 No.6201もあわせて確認すると全体像がつかめます。

関係しやすいのは課税事業者同士の建物売買

消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等を課税対象とする考え方です。

建物を含む売買で、売主が課税事業者として課税売上に計上するなら、買主はインボイスを求める合理性が出ます。

条件 インボイスの重要度
売主が課税事業者 高い
対象が建物を含む 高い
買主が課税事業者 高い
課税対象の基本 国税庁 No.6105

3条件がそろうほど、請求書の形式や記載事項まで具体的に詰める必要が出てきます。

「必要になる条件」を先に固定すると迷わない

インボイスを用意するかどうかは、制度の説明よりも取引条件の当てはめが重要です。

次の条件に当てはまるほど、契約前に発行可否を合意しておく価値が高まります。

  • 買主が仕入税額控除を使う
  • 取引が課税取引に当たる
  • 請求書等の交付と保存が必要になる
  • 取引額が大きく税額影響が無視できない

条件が弱い場合は、過度にインボイス対応へ寄せるより、契約書の明確化を優先した方が実務的です。

混同しやすい税金と費用を切り分ける

不動産売却では、印紙税や登録免許税、司法書士報酬など、消費税とは別軸の費用が並びます。

インボイスの話は主に消費税の計算と控除の要件なので、他の税金と混ぜると判断が濁ります。

項目 インボイスとの関係
印紙税 消費税とは別の税目
登録免許税 消費税の課税取引とは別枠
仲介手数料 消費税課税になり得て影響が出やすい
司法書士報酬 役務提供として課税になり得る

まず費目を分けてから、課税費用だけをインボイス視点で確認すると整理が崩れません。

不動産売却で消費税が発生する典型パターン

グレーを基調にした上品で落ち着いた大人のリビングダイニング

インボイス以前に、そもそも売却に消費税が発生するかどうかが最重要です。

消費税が発生しない取引なら、インボイスの議論は周辺費用に限定されます。

課税事業者か免税事業者かで前提が変わる

売主が課税事業者として消費税を納める立場かどうかで、売却の見え方が変わります。

免税事業者は原則として消費税の納税義務が免除され、適格請求書の発行もできないため、買主側の控除可否に影響が出ます。

売主の区分 売却時の実務イメージ
課税事業者かつ登録済み インボイス発行が前提になりやすい
課税事業者だが未登録 登録の有無が争点になりやすい
免税事業者 買主が課税事業者だと条件交渉が起きやすい

売主側は「登録すると何が増えるか」まで含めて判断しないと、売却後の税負担で後悔しやすいです。

「事業としての譲渡」に当たると課税になり得る

課税対象の基本は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等という考え方です。

個人でも事業用建物等を譲渡する場合は課税の対象となり得る点が示されています。

  • 賃貸用の建物を事業として運用していた
  • 店舗や事務所として使っていた
  • 事業の設備として保有していた

典型例の整理は、国税庁 No.3240を起点に読むと理解が早いです。

土地と建物の按分がインボイス実務の核心になる

土地は非課税、建物は条件次第で課税になり得るため、売買代金を土地と建物に分けることが実務上の要点です。

一括で「不動産一式」とすると、課税・非課税の整理が曖昧になり、買主側の経理処理が止まりやすくなります。

契約書で明確にしたい点 理由
土地代金 非課税として扱われやすい
建物代金 課税の可能性があり税額算定に直結する
消費税額の記載 課税なら税率と税額を明確化する

按分は評価や算定根拠が絡むため、税理士や不動産会社と早めに前提をそろえることが重要です。

居住用でも「周辺費用の課税」で影響が残る

自宅売却がインボイスの主戦場になりにくくても、周辺費用には消費税が乗るものがあります。

特に仲介手数料は代表例で、課税事業者である買主や売主は、保存要件としてインボイスを求める場面があります。

  • 不動産会社の仲介手数料
  • 測量や各種証明の取得代行費用
  • 事業用に近い役務提供の報酬

売買本体と周辺費用を分けて考えるだけで、インボイス対応の範囲が見えやすくなります。

免税事業者の売主と取引する場合の経過措置

アイランドキッチンから見た吹き抜け階段と無垢フローリングのリビング

インボイスが発行できない相手との取引では、買主側の仕入税額控除が原則できないのが出発点です。

ただし一定期間は、一定割合を控除できる経過措置が設けられており、交渉や会計処理の前提になります。

80%控除と50%控除の期間を押さえる

免税事業者等からの課税仕入れについては、一定期間に限り仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。

期間が進むと控除割合が変わるため、取引時期によって買主側が想定する負担が変動します。

期間 控除割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日 仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日〜令和11年9月30日 仕入税額相当額の50%
根拠資料 国税庁Q&A(経過措置)

売却の引渡日や課税期間の区切りによって扱いが変わるため、日付の確定は早めに行うべきです。

買主側は保存要件と社内処理の形を整える

経過措置を使う場合でも、帳簿や請求書等の保存など、制度上の要件を満たす必要があります。

実務では、取引先が未登録であることを前提に、社内の証憑をそろえておくことが重要になります。

  • 取引内容が分かる契約書や請求書等を保存する
  • 相手が免税事業者等である旨を管理できるようにする
  • 経過措置の対象期間を会計処理に反映する

要件の考え方は、国税庁 No.6498も参照しながら、顧問税理士の運用ルールに合わせてください。

売主側は登録の損得を「売却後」まで含めて判断する

売主が免税事業者の場合、登録して適格請求書を発行できるようにする選択肢があります。

ただし登録により課税事業者としての申告や納税が発生し得るため、売却の一回だけで判断すると危険です。

選択肢 主なメリット
登録する 買主の控除不安が減り交渉が進みやすい
登録しない 事務負担や納税影響を増やさずに済む可能性がある
判断の視点 売却規模と今後の課税売上見込みを比較する

登録手続そのものは国税庁の案内にまとまっているため、制度の入口は一次情報で確認できます。

価格交渉は「税額相当」だけで決まらない

未登録を理由に値引きを求められても、必ずしも税額相当がそのまま値引きになるわけではありません。

実際には物件の競争力や引渡条件、修繕負担など別の条件とセットで調整されることが多いです。

  • 売買代金の調整
  • 引渡時期や契約不適合責任の範囲
  • 設備や修繕の引継ぎ条件
  • 仲介手数料や付帯サービスの条件

交渉の前提となる経過措置は期間で変わるため、取引時点の控除割合を共有してから条件調整に入ると揉めにくいです。

売主・買主・仲介会社がやるべき実務チェック

観葉植物とホワイトインテリアが調和した開放感のあるリビングダイニング

インボイス対応は、制度理解よりも「契約前に確認し、書面で残す」ことがトラブル防止につながります。

立場ごとのチェックリストを作っておくと、担当者が変わっても判断が再現できます。

売主が先に確認するチェックリスト

売主は「自分の売却が課税取引に当たるか」と「登録の有無」を先に確定させる必要があります。

これを曖昧にしたまま媒介契約や売買契約へ進むと、買主側の審査で止まる原因になります。

  • 売却対象に建物が含まれるか
  • 事業用資産の譲渡に当たるか
  • 課税事業者か免税事業者か
  • 適格請求書発行事業者として登録しているか

土地の非課税や課税対象の基本は国税庁の整理が参考になるため、一次情報に当たりながら判断すると安全です。

買主が契約前に確認するチェックリスト

買主が課税事業者なら、仕入税額控除の可否は社内稟議や金融機関の審査にも影響します。

契約書にサインしてから「インボイスが出ない」と判明すると、価格だけでなく決裁そのものが揺らぐことがあります。

  • 売主の登録番号と登録状況
  • 土地と建物の金額区分
  • 消費税の税率と税額の明示方法
  • 未登録時の経過措置の扱い

登録状況は、適格請求書発行事業者公表サイトで客観的に確認できます。

書面に残すべき事項をテンプレでそろえる

インボイス対応の本質は、後から見て税区分が説明できる状態にしておくことです。

契約書や請求書等の形式は案件ごとに違っても、押さえる項目は共通化できます。

項目 書面化の狙い
土地代金と建物代金の区分 非課税と課税の整理を明確にする
消費税の税率と税額 課税の場合に税額計算の根拠を残す
登録番号 適格請求書発行事業者であることを示す
引渡日と精算日 経過措置や課税期間との関係を整理する

テンプレ化しておくと、売主が個人でも法人でも、同じ観点でチェックできます。

仲介手数料のインボイス対応は別枠で管理する

仲介手数料は課税になり得るため、売買本体よりも先にインボイス対応が問題になりやすいです。

仲介会社が登録済みかどうかで、課税事業者側の経理処理の負担が大きく変わります。

支払先 確認したい点
不動産会社 登録番号の有無と請求書の記載
司法書士 報酬の課税区分と請求書の形式
管理会社 委託料の税率と証憑の保存

売買本体が非課税寄りでも、周辺費用のインボイス対応だけは必要という整理を徹底してください。

インボイスの不安を減らすための要点

白とネイビーのソファが主役のスタイリッシュなオープンリビング

不動産売却のインボイスは、全員が同じように対応する制度ではありません。

土地は非課税になりやすく、建物は売主の立場と用途次第で課税になり得るという基本を押さえることが最短ルートです。

買主が課税事業者なら、仕入税額控除のためにインボイスの有無が条件になりやすい一方で、買主が一般消費者なら論点が小さくなります。

免税事業者との取引では経過措置があるため、取引時期と控除割合を共有したうえで条件調整に入ると揉めにくいです。

実務では、登録状況を公表サイトで確認し、土地建物の区分や税額の扱いを契約書で明確に残すことが最大の予防策になります。

判断が割れるケースは、課税判定と按分の根拠づくりが核心になるため、早い段階で税理士と不動産会社に同じ前提を渡して整合させてください。