法人のマンション売却では、消費税が「かかる部分」と「かからない部分」が同時に混在しやすいです。
土地は原則として消費税が非課税ですが、建物は条件を満たすと課税になり得ます。
さらに、売主が課税事業者かどうかや、インボイス制度の対応状況で実務が大きく変わります。
本記事では、法人がマンションを売却する場面で迷いやすい論点を、契約書の書き方まで含めて整理します。
法人がマンションを売却すると消費税はかかる?
結論として、法人がマンションを売却する場合は「建物部分」に消費税がかかる可能性が高いです。
一方で「土地部分」は原則として消費税が非課税であり、契約金額を土地と建物に分けて考える必要があります。
また、売主が課税事業者か免税事業者かで申告の要否が変わり、インボイス制度の有無で買主対応も変わります。
まずは課税の3要件を押さえる
消費税は、事業者が事業として対価を得て行う取引のうち、非課税取引に当たらないものが対象です。
不動産でも、売却がこの枠組みに入るかどうかが起点になります。
- 売主が事業者であること
- 事業として対価を得て行うこと
- 非課税取引に該当しないこと
- 国内取引であること
土地は非課税でも例外がある
土地の譲渡や貸付けは、原則として消費税の非課税取引とされています。
ただし、貸付けが短期であったり、施設利用に伴う土地使用であったりすると課税になる例外があります。
| 論点 | 原則 | 注意点 |
|---|---|---|
| 土地の譲渡 | 非課税 | 土地と建物を一括譲渡する場合は建物のみ課税 |
| 土地の貸付け | 非課税 | 1か月未満は課税の可能性 |
| 施設利用型 | 課税の可能性 | 駐車場などは取引実態で判定 |
土地の非課税と例外の考え方は国税庁の整理が実務でも基準になります。
参考として、土地の取扱いは国税庁(No.6225)や国税庁(No.6201)を確認してください。
建物部分が課税になりやすいのは法人の特性
法人は私的売買という位置づけになりにくく、資産売却が事業取引として整理されやすいです。
そのため、マンション売却でも建物部分が課税になりやすいという前提で設計すると安全です。
- 賃貸用として保有していた区分マンション
- 社宅として使用していたマンション
- 事務所や店舗として使用していた一室
- 販売用在庫として保有していた物件
課税事業者かどうかで申告の要否が変わる
建物売却が課税取引に当たっても、売主が免税事業者なら申告義務が原則としてありません。
ただし、インボイス登録を受けている場合は、基準期間の売上が1,000万円以下でも免除されない点に注意が必要です。
| 区分 | 消費税申告 | 実務上の注意 |
|---|---|---|
| 課税事業者 | 原則必要 | 建物売却を課税売上として計上 |
| 免税事業者 | 原則不要 | インボイス登録の有無で変動 |
| インボイス登録あり | 免除されない | 登録日以降の課税取引が対象 |
納税義務の免除とインボイス登録の関係は国税庁(No.6501)を参照してください。
消費税額の基本計算を先に決める
建物売却が課税なら、契約が外税か内税かで計算が変わります。
実務では「税込総額から逆算して税額を抜く」場面も多いです。
- 外税:建物税抜価格×10%=消費税
- 内税:税込価格÷1.10=税抜価格、税込価格-税抜価格=消費税
- 土地は非課税なので税計算から除外
売買契約書での区分表示がトラブルを減らす
土地建物の金額区分が曖昧だと、課税標準の計算や買主の仕入税額控除で揉めやすいです。
契約書には、土地代金、建物代金、建物の消費税額、支払条件を明確にするのが基本です。
- 土地代金(非課税)を明記する
- 建物代金(課税)を明記する
- 消費税額と適用税率を明記する
- 手付金や残代金の期日を明記する
買主の仕入税額控除とインボイスの関係も確認する
買主が課税事業者で仕入税額控除を行うなら、適格請求書等の保存が要件になります。
売主がインボイスを交付できない場合、買主側の税務処理が変わるため事前調整が重要です。
| 買主の立場 | 重視点 | 準備書類 |
|---|---|---|
| 課税事業者 | 仕入税額控除 | 適格請求書・帳簿の保存 |
| 免税事業者 | 控除なし | 証憑整理の負担は比較的軽い |
| 金融機関融資あり | 契約整合性 | 売買契約書・領収書・登記関連 |
インボイス制度の概要は国税庁(No.6498)が起点になります。
マンション売却で消費税が課税されるケース
課税になりやすいのは「法人が事業として保有していたマンションの建物部分」を売る場合です。
特に賃貸運用や事業利用をしていた物件は、課税取引として整理されることが多いです。
ここでは典型パターンを押さえて、どこに消費税が乗るかを具体化します。
賃貸用マンションを収益物件として売る
賃貸用として保有していたマンションを売却する場合、建物の譲渡が課税売上になり得ます。
土地は非課税でも、建物部分が課税になる前提で契約区分を設計します。
- 区分マンションを家賃収入目的で保有
- 一棟ではなく一室でも基本構造は同じ
- 建物の譲渡が課税売上として計上される可能性
一室を事務所や店舗として使っていた
事業用に供していた建物の譲渡は、課税対象として整理されるのが基本です。
売却時は、建物価額と税額の表示が買主側の処理に直結します。
| 利用形態 | 建物の扱い | 実務メモ |
|---|---|---|
| 事務所 | 課税の可能性 | 造作や設備の譲渡も整理する |
| 店舗 | 課税の可能性 | 原状回復費用の扱いも確認 |
| 倉庫 | 課税の可能性 | 附属設備の範囲に注意 |
社宅として使っていた場合の判断軸
社宅は福利厚生の一環でも、法人が保有し処分する行為は事業取引として整理されやすいです。
社宅としての賃貸が非課税であっても、売却が直ちに非課税になるわけではありません。
- 賃貸(居住用)は非課税の整理になりやすい
- 売却(建物譲渡)は課税の整理になりやすい
- 仕入税額控除の計算への影響を確認
不動産業として短期転売する場合
販売用在庫として仕入れて転売するケースは、課税売上としての整理がより明確です。
契約書・請求書の整合性が監査や税務調査でも見られやすい領域です。
| ポイント | 起きやすい課題 | 対策 |
|---|---|---|
| 区分表示 | 土地建物の按分が曖昧 | 按分根拠を残す |
| 請求書 | 税率・税額の記載漏れ | インボイス要件で点検 |
| 決算 | 期ズレで資金繰り悪化 | 決済日と申告期を調整 |
マンション売却で消費税がかからないケース
法人のマンション売却でも、すべてに消費税がかかるわけではありません。
土地部分は原則非課税であり、また売主が免税事業者なら申告義務が生じない場合があります。
ただし、非課税と不課税の混同や、インボイス登録の有無で判断を誤りやすいので注意が必要です。
土地部分は原則として非課税である
土地の譲渡は消費税の非課税取引として整理されるのが原則です。
土地と建物を一括して譲渡した場合でも、土地は非課税で建物部分のみ課税になる整理が示されています。
| 売却対象 | 消費税 | 根拠確認の導線 |
|---|---|---|
| 土地 | 非課税 | 国税庁(No.6225) |
| 土地+建物一括 | 建物のみ課税 | 国税庁(No.6301) |
| 借地権等 | 非課税の整理が基本 | 土地の上に存する権利として扱う |
売主が免税事業者であれば申告が不要なことがある
基準期間の課税売上高が1,000万円以下で免税となる場合、課税取引があっても申告義務が原則としてありません。
ただし、インボイス登録がある場合は免除されないため、売却前にステータス確認が必要です。
- 基準期間の課税売上高で免税判定をする
- インボイス登録の有無で結論が変わる
- 登録日以降の課税取引が申告対象になり得る
非課税と「対象外」を混同しない
土地が非課税であることと、売却取引が消費税の枠組みから外れることは別概念です。
判断を誤ると、契約書の記載や会計処理で後から修正が発生します。
- 非課税:制度上あえて課税しない取引
- 課税:税率10%で課税標準を計算する取引
- 区分ミス:土地と建物の混在で起きやすい
消費税の計算でつまずきやすいポイント
法人のマンション売却は、税務上の計算論点が契約実務に直結します。
特に「土地建物の按分」「諸費用の税区分」「仕入税額控除の影響」でミスが出やすいです。
ここでは、現場で揉めやすい論点をチェックリスト化します。
土地と建物の按分は根拠が重要
土地と建物を一括金額で契約すると、課税対象の建物価額を合理的に按分する必要があります。
按分根拠が弱いと、税務上の否認リスクや買主との交渉コストが増えます。
| 按分方法 | 使われやすい根拠 | 注意点 |
|---|---|---|
| 契約書区分 | 土地代金・建物代金を明記 | 市場実態とかけ離れない |
| 固定資産税評価 | 評価額の比率で按分 | 評価時点と売却時点のズレ |
| 鑑定等 | 鑑定評価や査定資料 | コストがかかる |
土地と建物を一括譲渡した場合の課税標準の考え方は国税庁(No.6301)が参考になります。
築古で建物価額が小さいと税額が誤算になりやすい
築年数が進むと建物価額が小さくなり、税額も小さいと見込みがちです。
しかし、契約上の按分や諸費用の消費税まで含めると、資金繰りの誤差が出ます。
- 建物価額がゼロ扱いにならないよう根拠を整える
- 内税契約だと税抜計算で感覚がズレる
- 仲介手数料などの課税費用を合算する
仲介手数料や報酬の消費税も忘れやすい
マンション売却では、売買そのものだけでなく付随費用にも消費税が関係します。
課税事業者であれば、仕入税額控除の対象にもなるため、請求書管理が重要です。
- 仲介手数料は課税取引として請求されることが多い
- 司法書士報酬など役務提供は課税になりやすい
- 印紙税は消費税とは別税目として整理する
課税売上割合と仕入税額控除に波及する
売上に課税と非課税が混在する法人では、仕入税額控除が売上構成で変わります。
居住用賃貸は非課税の整理になりやすく、売却で課税売上が増えると年度計算が変わることがあります。
| 状況 | 起きやすい変化 | 検討事項 |
|---|---|---|
| 非課税売上が多い | 控除できない仕入が増える | 個別対応方式等の選択 |
| 売却で課税売上が増える | 控除可能額が変動 | 期中売却の影響を試算 |
| 設備投資がある | 控除額のブレが大きい | 証憑と区分経理の徹底 |
法人のマンション売却とインボイス制度の実務
2023年10月1日から、仕入税額控除の要件が適格請求書等保存方式に移行しています。
そのため、法人間取引では「売主がインボイスを出せるか」が取引条件として問われることがあります。
売却前に、登録状況と書類設計を確認しておくと交渉がスムーズです。
売主が適格請求書発行事業者なら交付方法を決める
適格請求書は、登録を受けた適格請求書発行事業者でなければ交付できません。
不動産売買では、売買契約書や請求書、領収書をインボイス要件に合わせて整える運用が一般的です。
- 登録番号を記載する
- 税率ごとの対価と税額を区分する
- 取引年月日と取引内容を明確にする
制度概要は国税庁(No.6498)を確認してください。
適格請求書の記載事項を満たすか点検する
記載要件は「適用税率」と「税率ごとの消費税額等」など、要件が具体的です。
不動産売買では土地と建物が混在するため、税率区分の表現が曖昧だと差し戻しが起きます。
| 主な記載事項 | 不動産売買での注意 | 確認導線 |
|---|---|---|
| 登録番号 | 売主情報に必ず付す | 国税庁(No.6625) |
| 取引内容 | 土地と建物を明確に区分 | 国税庁(No.6625) |
| 税率ごとの税額 | 建物の消費税額を明示 | 国税庁(No.6625) |
| 保存 | 帳簿と請求書等の保存が要件 | 国税庁(No.6496) |
免税のまま売るか登録して売るかは取引相手で変わる
買主が仕入税額控除を重視する場合、売主にインボイス対応を求めることがあります。
一方で、登録すると納税義務が発生するため、税負担と売却条件を同時に比較する必要があります。
- 買主が課税事業者かどうかを確認する
- 価格交渉でインボイスの影響を織り込む
- 登録による納税義務の発生を試算する
登録日をまたぐと課税期間の扱いが変わる
免税事業者が課税期間の途中で登録した場合、登録日以降の課税資産の譲渡等が申告対象となります。
決済日や引渡日をどこに置くかで、当期の申告負担が変わり得ます。
| 場面 | 影響 | 実務の対応 |
|---|---|---|
| 登録前に引渡し | 原則として登録の影響は限定的 | 証憑の日付整合性を取る |
| 登録後に引渡し | 課税取引として申告対象 | 資金繰りと納税見込みを立てる |
| 契約と引渡しがズレる | 判定が複雑化 | 税理士と事前に論点整理 |
途中登録の取扱いは国税庁(No.6501)を確認してください。
法人のマンション売却をスムーズに進める要点
法人のマンション売却では、消費税は「土地は非課税、建物は課税の可能性」という分解が出発点です。
次に、売主が課税事業者か免税事業者か、そしてインボイス登録の有無を確認して申告と書類を決めます。
契約書では土地建物の区分と税額の表示を明確にし、按分根拠を社内に残すと後日の修正を避けやすいです。
買主が課税事業者なら、適格請求書の記載事項と保存要件を満たす設計にして交渉を円滑にします。
不安が残る場合は、決済日と登録状況を含めて事前に試算し、税務と契約実務を同時に整えるのが安全です。

