マンションを売却するときに気になる「保証」は、ひとことで言っても中身が違います。
売主が負う法的な責任の話と、第三者が費用をカバーする保険の話と、仲介会社が提供するサービスの話が混ざりやすいからです。
この3つを切り分けるだけで、契約書の読み方と対策の優先順位が一気に明確になります。
また、マンションは専有部分と共用部分があるため、戸建てよりも「どこまでが対象か」が重要になります。
売却後のトラブルを怖がりすぎず、でも油断もしないために、保証の全体像から整理していきます。
マンション売却の保証は3つに分けて考える
マンション売却の保証は「売主の責任」「保険で備える」「サービスで補う」の3系統に整理すると迷いません。
どれを厚くするかは、築年数と状態と買主の不安の大きさで決まります。
まずは「売主の責任」を中心に考える
売却後に不具合が見つかると、買主は売主に対して契約不適合責任を追及できる場面があります。
これは従来の瑕疵担保責任の考え方を、契約内容に適合しているかで判断する形に整理したものです。
期間や範囲は契約の定め方で変わり、特約が実務上の主戦場になります。
売主が宅建業者か個人かでもルールが変わるため、立場の確認が最初の一歩です。
条文の一次情報はe-Gov法令検索(民法)で確認できます。
- 出発点は売主の責任
- 範囲は契約の書き方で変動
- 売主属性で制限が変わる
- 一次情報で条文確認
次に「保険で備える」を検討する
保証を強くする方法として、既存住宅売買のかし保険のように第三者の補償枠を付ける選択肢があります。
保険は万能ではなく、対象となる部位や条件が決まっています。
ただし買主の心理的ハードルを下げやすく、交渉を前向きに進める材料になりやすい点が強みです。
保険の対象は構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分が中心で、商品により特約で広げられる場合があります。
制度の説明は国土交通省(既存住宅売買瑕疵保険の概要)が分かりやすいです。
| 狙い | 補修費用の備えを用意 |
|---|---|
| 主な対象 | 構造・雨水侵入防止など |
| 条件 | 検査や基準適合が必要 |
| 効果 | 買主の不安を下げやすい |
最後に「サービスで補う」を上乗せする
仲介会社が提供する設備保証やサポートは、実務で効きやすい補助輪になります。
法的責任そのものを消すというより、設備故障の費用負担や手続き負担を軽くしてくれるイメージです。
買主にとっては「入居直後のトラブルが怖い」という不安を埋める要素になりやすいです。
一方で、対象設備や上限金額、適用条件はサービスごとに差が大きい点に注意が必要です。
例として、住宅設備保証の案内は野村の仲介+(あんしん設備補修)などで確認できます。
- 設備保証は実務の不安に効く
- 責任の免除ではなく補助
- 対象と上限を事前確認
- 適用条件の抜け漏れ注意
「保証」と「買取保証」を混同しない
マンション売却の文脈で「保証」と言うと、売却後の責任や保険を指すことが多いです。
一方で買取保証は「一定期間売れなければ不動産会社が買い取る」という売れ残り対策の仕組みです。
目的が違うため、同じ保証として比べると判断を誤りやすくなります。
買取保証は資金計画の確度を上げる代わりに、売却価格が市場成約より下がるケースが一般的です。
仕組みの説明はHOME4U(買取保証付き仲介)が参考になります。
| 保証の種類 | 主な目的 | 注意点 |
|---|---|---|
| 売却後の責任 | 不具合対応のルール | 特約の書き方が重要 |
| かし保険 | 補修費用の備え | 対象部位と条件が限定 |
| 設備保証 | 入居直後の不安軽減 | 対象設備・上限が限定 |
| 買取保証 | 売れ残り回避 | 価格は下がりやすい |
マンション特有の「専有部分と共用部分」を押さえる
マンションは、売主が単独で管理できる専有部分と、管理組合が関わる共用部分に分かれます。
雨漏りや給排水などは原因が共用側にあることもあり、保証や責任の切り分けが難しくなりやすいです。
かし保険や状況調査でも、共用部分に関する確認や管理組合の協力が必要になる場面があります。
住戸型調査でも共用部分が調査対象になる点は、事前に理解しておくとスムーズです。
考え方は住宅瑕疵担保責任保険協会(建物状況調査Q&A)で触れられています。
- 専有と共用で責任線が変わる
- 原因特定が難しいケースがある
- 管理組合の資料が重要
- 調査は共用も関わり得る
売主が守るべきは「隠さない・曖昧にしない」
保証を強くする以前に、トラブルを減らす最大の武器は情報開示です。
知っている不具合や過去の修繕履歴を曖昧にすると、後から契約不適合として争点化しやすくなります。
買主が求めるのは完璧な物件よりも、納得できる説明と再現性のある記録です。
管理規約や長期修繕計画、総会議事録などの共有は、共用部分の不安を下げやすい材料になります。
結果として、保証を過剰に盛らなくても成約しやすい状態を作れます。
| 開示したい資料 | 効果 |
|---|---|
| 修繕履歴 | 不具合の経緯が伝わる |
| 長期修繕計画 | 将来費用の見通しが立つ |
| 総会議事録 | トラブルの有無が見える |
| 設備の取扱説明 | 入居後の不安が減る |
契約不適合責任の基本を押さえる
保証の核は契約不適合責任であり、ここを理解すると特約の意味が読み解けます。
責任の有無は「契約内容に適合しているか」で判断されるため、契約書の記載が実務の基準になります。
責任が問題になるのは「契約と違う」と言えるとき
たとえば雨漏りや配管トラブルが発生したとき、買主は契約で想定された状態と違うと主張する可能性があります。
このとき、物件状況報告や付帯設備表に書かれていない不具合ほど争いになりやすいです。
逆に、現状や不具合が契約書類で明確に共有されていれば、責任追及の余地は小さくなります。
「説明したつもり」では弱く、書面に落ちているかが重要です。
法体系の出発点は民法(契約不適合責任の規定)で確認できます。
- 基準は契約内容
- 書面化が最重要
- 口頭説明だけは危険
- 報告書類の整合が鍵
通知期限の考え方を知っておく
種類や品質に関する不適合は、買主が知ったときから一定期間内に売主へ通知しないと権利行使が制限されます。
いつから数えるのかを誤解すると、売主も買主も判断を誤りやすくなります。
この通知期限のルールは、契約書の特約で調整されることも多いです。
ただし調整できる範囲は立場によって異なるため、次の見出しの宅建業法の制限もセットで理解が必要です。
条文の確認はe-Gov法令検索(民法)から辿れます。
| 論点 | 押さえどころ |
|---|---|
| 起算点 | 不適合を知った時 |
| 実務対応 | 連絡経路を決める |
| 証拠 | メール等で記録 |
| 契約 | 特約の有無を確認 |
売主が宅建業者の場合は「買主に不利な特約」に制限がある
売主が宅建業者で買主が一般の個人等の場合、買主に不利になる特約は宅建業法で制限されます。
通知期間を短くしすぎたり、広く免責にしたりする設計は無効になるリスクがあります。
そのため宅建業者売主の中古マンションでは、責任期間を引渡しから2年以上とする取り扱いが一般的になりやすいです。
具体的な条文はe-Gov法令検索(宅地建物取引業法)で確認できます。
買主としては、契約書にどの条項が置かれているかを把握してから交渉することが重要です。
- 宅建業者売主は特約制限あり
- 買主不利は無効リスク
- 期間設計は2年以上が目安
- 条文で根拠を確認
個人売主でも「書き方次第」で紛争は減らせる
個人が売主のときは、宅建業法の特約制限が直接は及ばない場面が多いです。
その分、契約内容の設計で責任範囲を調整する余地があり、同時に曖昧さが紛争を呼びます。
免責や期間短縮を入れる場合でも、対象を絞り、買主が理解できる説明をセットにすることが大切です。
とくに設備や内装など、劣化が自然な部分は「現況」「経年」を前提に合意しやすい領域です。
反対に、雨漏りや構造など重大領域は保険や検査で別の安心材料を用意すると交渉がまとまりやすいです。
| 調整しやすい領域 | 設備・内装・軽微な不具合 |
|---|---|
| 慎重に扱う領域 | 雨漏り・構造・配管の重大不具合 |
| 有効な工夫 | 書面化と説明の整合 |
| 安心材料 | 検査・保険・保証サービス |
既存住宅売買かし保険で第三者の保証を付ける
法的責任をゼロにするより、第三者の枠を付けて「もしもの補修費用」を見える化する方が効くことがあります。
既存住宅売買かし保険は、一定の検査を前提に、保険対象の瑕疵が見つかった場合の補修費用等をカバーする仕組みです。
個人間売買と宅建業者売主で商品タイプが違う
既存住宅売買のかし保険は、売主が宅建業者の場合と、個人間売買の場合で仕組みが分かれています。
個人間売買タイプでは、検査機関や仲介事業者が関わる形で保証責任をバックアップする設計になっています。
マンションの戸単位売買に対応した商品もあり、住戸単位での売買に合わせた運用がされています。
どのタイプに該当するかで、申込主体や手続きが変わるため、早めに仲介会社へ確認するのが安全です。
制度の整理は住宅瑕疵担保責任保険協会(個人間売買タイプ)が参考になります。
- 宅建業者売主タイプ
- 個人間売買タイプ
- 戸単位売買に対応商品あり
- 申込主体が変わる
対象範囲は「構造」と「雨水」が中心になる
保険は何でも直してくれるわけではなく、対象範囲が定められています。
基本は構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分が中心です。
商品によっては特約で給排水管路等を対象にできる場合もあります。
そのため、買主の不安が設備中心なら設備保証、重大領域ならかし保険、という使い分けが現実的です。
対象範囲の説明は国土交通省(宅建業者販売タイプの概要)にも記載があります。
| 基本対象 | 構造耐力上主要な部分 |
|---|---|
| 基本対象 | 雨水の浸入を防止する部分 |
| 拡張 | 特約で給排水等が追加の場合 |
| 注意 | 内装や軽微設備は対象外になりやすい |
マンションでは管理組合の資料が効いてくる
マンションは共用部分が絡むため、検査や説明で管理組合の資料が重要になります。
長期修繕計画や修繕積立金の状況は、物件の将来負担を左右する情報です。
買主にとっては、将来の一時金や大規模修繕の予定が見えるかどうかが不安の分かれ目になります。
資料を整えることで、保証に過度な期待を寄せる交渉になりにくくなります。
調査や許可の考え方は建物状況調査Q&Aが参考になります。
- 長期修繕計画の提示
- 修繕積立金の残高
- 直近総会議事録
- 共用部の修繕履歴
保険に頼り切らず「検査の性質」を理解する
かし保険の検査は、現時点での一定基準に基づく確認です。
検査に合格したから将来の変化が起きないという保証ではありません。
だからこそ、売主は現況の情報開示を丁寧に行い、買主は対象範囲を理解して加入を判断する必要があります。
過度な期待を防ぐためにも、検査が何を見て何を見ないかを事前に把握しておくと安心です。
検査の位置付けは国土交通省資料(既存住宅売買瑕疵保険の検査の考え方)でも説明されています。
| 検査の役割 | 基準に沿った部位確認 |
|---|---|
| できないこと | 将来劣化の保証 |
| 向くケース | 重大領域の不安が強い |
| 補完策 | 開示資料の充実 |
仲介会社の設備保証とホームインスペクション
買主が最初に怖がるのは、住み始めてすぐの設備故障や小さな不具合です。
ここは法的責任よりも、設備保証サービスと検査の組み合わせが効きやすい領域です。
設備保証は「入居直後の困りごと」を狙い撃ちできる
住宅設備保証サービスは、給湯器や換気設備など、生活に直結する設備の故障時に補修費用をサポートする仕組みです。
売主の責任期間が短い前提の取引でも、買主にとっての体感安心を作りやすい点がメリットです。
ただしサービスは仲介会社ごとに条件が違い、対象設備の範囲や上限、築年数要件が設けられることがあります。
買主が将来売却したときに保証が引き継げないなど、例外条件もあるため約款の確認が必要です。
例として、設備保証の案内は近鉄の仲介(住宅設備保証サービス)などで確認できます。
- 設備故障の不安を下げる
- 対象設備と上限を確認
- 築年数要件に注意
- 適用除外を必ず読む
ホームインスペクションは「説明の根拠」を作る
建物状況調査やホームインスペクションは、現況を客観的に整理するための手段です。
売主にとっては、知らない不具合を減らし、説明の根拠を作りやすくなります。
買主にとっては、見えない部分への不安を数値や所見で減らせるため、価格交渉が極端になりにくいです。
マンションでは共用部分の扱いが絡むため、実施前に管理組合の許可や必要資料の確認が必要になることがあります。
住戸型調査の考え方は建物状況調査Q&Aが参考になります。
| 目的 | 現況の客観整理 |
|---|---|
| 売主の利点 | 説明根拠ができる |
| 買主の利点 | 不安が具体化される |
| 注意 | 管理組合の協力が必要な場合 |
「設備保証」と「かし保険」を役割で使い分ける
設備保証は生活設備の不安に効き、かし保険は構造や雨水など重大領域に効きやすいです。
両方を積むと強い場面もありますが、コストと条件が増えるため目的を絞った方が実務的です。
築浅で設備の安心が武器になるなら設備保証、築古で雨漏り等が気になるなら検査と保険、という判断がしやすいです。
買主がどの不安を強く持っているかを先に聞くと、不要な保証の上乗せを避けられます。
かし保険の対象範囲は住宅瑕疵担保責任保険協会Q&Aでも説明されています。
- 設備保証は生活面
- かし保険は重大領域
- 築年数で選びやすい
- 買主の不安を先に把握
仲介会社の保証は「誰が費用を出すか」を確認する
仲介会社の保証は、費用負担の主体がサービス提供者なのか保険なのかで性質が変わります。
売主負担のオプションなのか、仲介手数料に含まれるのかでもトータルコストが変わります。
また、保証を受けるために事前点検や基準適合が必要な場合があり、直前だと間に合わないことがあります。
契約前に「対象」「上限」「申請方法」「免責」をセットで確認すると、後の食い違いを防げます。
設備保証の例として大蔵屋(住宅設備保証の案内)などがあります。
| 確認項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 対象 | 設備名と範囲 |
| 上限 | 1回上限と期間上限 |
| 条件 | 築年数・点検要否 |
| 免責 | 消耗品・災害等の除外 |
売れない不安には買取保証という選択肢
売却の不安は「売った後」だけでなく「売れるまで」にもあります。
売れ残りの不安を消したいなら、買取保証付き仲介という別軸の保証を検討できます。
買取保証は「期限までに売れない」を解決する仕組み
買取保証は、一定期間内に売れなかった場合に、あらかじめ決めた金額で不動産会社が買い取る設計です。
住み替えの期限や、ローン完済の段取りが決まっている人にとっては、計画が崩れにくいのが利点です。
一方で、買い取りになると市場成約より価格が下がる可能性があり、そこがデメリットになります。
また、買取保証の前提として専任媒介など条件が付くことが多く、自由度は下がりやすいです。
概念整理は買取保証付き仲介の解説が参考になります。
- 期限の不安を消す
- 資金計画が立てやすい
- 価格は下がりやすい
- 媒介条件に注意
買取保証を使うなら「査定の根拠」を聞く
買取保証の買取価格は、最初に提示されることが多いですが、その算定根拠が重要です。
周辺成約事例、管理費と修繕積立金、修繕履歴、方角と階数など、マンション特有の評価要素が反映されます。
根拠が薄いと、いざ買い取りの段階で条件が変わる不安が残ります。
売主としては、どの条件で価格が変動するのかを先に言語化してもらうと納得しやすいです。
買取保証の説明は仲介各社の案内にもあり、例としてスターツの売却サービスなどがあります。
| 質問 | 狙い |
|---|---|
| 事例は何件参照か | 根拠の厚み確認 |
| 価格変動条件は何か | 想定外を減らす |
| 買い取り時期はいつか | 資金計画に落とす |
| 手数料・費用は別か | 手取りを守る |
保証を増やす前に「売れやすさ」を整える
売れない不安が強いと、保証を盛って売ろうとしがちです。
しかし成約の決め手は、相場に合った価格と情報の透明性であることが多いです。
管理状態の資料提示、室内の不具合の説明、内覧時の印象改善は、保証より即効性がある場合があります。
保証は最後の一押しとして活かし、先に売却の基礎体力を整える方が費用対効果が高いです。
結果として買取保証に頼らず成約できれば、手取りが増えやすくなります。
- 価格設定が最優先
- 情報の透明性が武器
- 資料提示で不安を減らす
- 保証は最後の一押し
保証選びは「優先順位の表」を作ると決まる
保証は足し算が簡単ですが、目的が曖昧だとコストだけ増えます。
そこで、売主の不安と買主の不安を分けて、どの保証がどの不安に効くかを表にすると判断が早いです。
築古で重大領域が気になるなら検査と保険、築浅で設備が売りなら設備保証、期限が厳しいなら買取保証という整理ができます。
仲介会社と同じ表を見ながら話すと、提案の比較もスムーズになります。
制度の一次情報は国土交通省(個人間売買タイプの概要)などを参照できます。
| 不安 | 効く手段 |
|---|---|
| 雨漏りや構造 | 検査+かし保険 |
| 設備故障 | 設備保証サービス |
| 売れ残り | 買取保証 |
| 説明の不安 | 資料整備+書面化 |
不安の正体を分けると売却は楽になる
マンション売却の保証は、売主の責任の理解が土台になります。
その上で、重大領域には検査と既存住宅売買のかし保険を、生活領域には設備保証を、期限不安には買取保証を当てはめると整理できます。
保証は増やすほど安心に見えますが、対象と条件を理解して初めて武器になります。
最後に効くのは情報開示であり、資料と書面で「どこまでを合意したか」を明確にすることです。
3系統の保証を適切に組み合わせれば、売主の負担を抑えつつ買主の不安も減らしやすくなります。

