マンション売却の瑕疵担保責任は契約不適合責任で判断する|免責特約と告知でトラブルを防ぐ!

木の温もりとタイル壁が調和するカフェ風キッチンのあるおしゃれなLDK
法務

マンションを売却するときに不安になりやすいのが、引き渡し後の不具合に対して売主がどこまで責任を負うのかという点です。

検索では「マンション売却 瑕疵担保責任」と出てきますが、現在の実務では「契約不適合責任」として整理するのが基本です。

言葉が変わっただけと思われがちですが、請求できる内容や手続の起点が変わっているため、理解の差がトラブルの火種になります。

また、売主が個人か宅建業者か、買主が消費者か事業者かによって、特約の効き方や責任期間の設定にも違いが出ます。

この記事では、マンション売却で押さえるべき責任の考え方と、実務でよく使う書面や特約のポイントを整理します。

  1. マンション売却の瑕疵担保責任は契約不適合責任で判断する
    1. 「隠れた瑕疵」より「契約の内容」が基準になる
    2. 買主の権利は「追完・減額・損害賠償・解除」が中心になる
    3. まずは「通知」が起点になりやすい
    4. 個人の売主は特約で期間や範囲を調整することが多い
    5. 宅建業者が売主のときは買主に不利な特約が制限される
    6. 新築や主要構造部は別の制度が前提になる
  2. 契約不適合責任が問題になりやすいマンションの不具合
    1. 雨漏りと漏水は原因特定で責任範囲が変わる
    2. 給排水管や設備は「付帯設備表」の記載が勝負になる
    3. 騒音や臭いは「生活環境の説明」が不足すると揉めやすい
    4. 共用部分の大規模修繕や積立金の情報も実質的な争点になる
  3. 売主と買主の負担を決めるのは契約書と告知書
    1. 「物件状況報告書」は知らないでは済まない領域を増やす
    2. 付帯設備表は「残置物」と「売買対象」を分ける
    3. 特約は「免責」より「対象と期間」を書き切る
    4. 仲介会社の説明義務と売主の告知義務を混同しない
  4. インスペクションと保険で「後出し」を減らす
    1. インスペクションは「目視中心の現況把握」として使う
    2. マンションは「専有」と「共用」の調査範囲を決める
    3. 既存住宅売買瑕疵保険は「検査と保証」のセットで考える
    4. 費用対効果は「売却のしやすさ」と「揉めない価値」で判断する
  5. トラブルが起きたときの進め方と期間の考え方
    1. 最初の連絡は「通知」として残る形にする
    2. 「修補の協議」と「費用負担の線引き」を分けて考える
    3. 時効と期間制限は「通知」と「請求」で段階がある
    4. 弁護士や専門家に相談すべき境界線を持つ
  6. 売却後に揉めないために押さえる要点

マンション売却の瑕疵担保責任は契約不適合責任で判断する

木製デスクと間接照明があるおしゃれなワークスペース

結論として、いまのマンション売却では「瑕疵担保責任」という呼び方よりも、契約内容に合っているかで判断する契約不適合責任が中心です。

民法改正(施行は2020年4月1日)で用語と枠組みが整理されており、契約書に何を約束したかが責任範囲の軸になります。

制度の全体像は、まず法務省の説明資料で方向性を掴むと理解が速いです。

「隠れた瑕疵」より「契約の内容」が基準になる

旧来の「隠れた瑕疵があれば売主が責任」という発想から、契約で合意した種類や品質に適合しているかを問う発想に変わっています。

言い換えると、売買契約書の条項と、重要事項説明や告知書の内容が、そのままリスクの境界線になります。

  • 基準は物件の状態そのものではなく契約内容
  • 修補や代金減額など請求メニューが整理
  • 告知や特約で責任範囲を具体化しやすい

「書面に書かれていないことは約束していない」と言い切れるわけではないため、記載の精度が重要です。

買主の権利は「追完・減額・損害賠償・解除」が中心になる

契約不適合があると、買主は複数の救済手段を選べる形になります。

実務上は、まず修補の相談が出て、折り合いがつかなければ減額や損害賠償に広がる流れが多いです。

  • 追完請求(修補や交換など)
  • 代金減額請求
  • 損害賠償請求
  • 契約解除(要件を満たす場合)

どの手段が現実的かは、原因の特定と、修補コストの見積もりが取れるかで変わります。

まずは「通知」が起点になりやすい

種類や品質の不適合については、買主が不適合を知ってから一定期間内に売主へ通知しないと権利行使が難しくなる仕組みがあります。

制度の骨格は民法566条の考え方で、条文の参照はe-Gov法令検索(民法)が一次情報になります。

場面 引き渡し後に不具合が発覚
最初に必要な行動 買主から売主へ不適合の通知
その後の選択肢 修補協議→減額や賠償の交渉
実務のポイント 写真と日時で事実関係を固める

通知は「いつ何がどの程度起きているか」を具体化するほど、無用な拡大を防げます。

個人の売主は特約で期間や範囲を調整することが多い

個人間売買では、契約不適合責任の期間を短くする特約が置かれることが一般的です。

ただし、短縮したつもりでも、条項の書き方が曖昧だと争点が増えるため、対象範囲と期間をセットで明確化します。

特約の方向性 期間短縮や対象限定
よくある期間感 引渡しから数か月程度に設定
対象の限定例 設備は免責、構造や雨漏りは対象
注意点 告知内容と矛盾させない

「一切責任を負わない」とだけ書くより、何を負わないのかを分解した方が実務では安全です。

宅建業者が売主のときは買主に不利な特約が制限される

売主が宅建業者で買主が一般の方の場合、宅建業法の制限で責任期間を買主に不利に短縮しにくいルールがあります。

実務で出てくる「引渡しから2年以上」がこの文脈で、一次情報はe-Gov法令検索(宅地建物取引業法)で確認できます。

  • 宅建業者売主は期間短縮が原則できない
  • 全部免責のような条項は無効になり得る
  • 消費者契約法の観点も絡む場合がある

買主側の安心が厚い分、売主側は検査や保証スキームを用意して販売する流れになりやすいです。

新築や主要構造部は別の制度が前提になる

新築住宅の主要構造部や雨水の侵入を防止する部分は、品確法の枠組みで10年の責任が原則になる場面があります。

条文や制度の確認はe-Gov法令検索(住宅の品質確保の促進等に関する法律)が基礎になります。

区分 中古マンションの個人間売買
責任設計 特約で期間や対象を調整しやすい
区分 宅建業者が売主
責任設計 買主に不利な短縮が制限される
区分 新築の主要構造部等
責任設計 法律上の特則が前提になる

中古マンションでも、買取再販などで宅建業者が売主になると前提が変わります。

契約不適合責任が問題になりやすいマンションの不具合

木製ダイニングテーブルと子供用キッチンがあるナチュラルなリビング空間

マンションは戸建てと違い、専有部分と共用部分が分かれているため、原因の切り分けが難しい不具合があります。

また、設備や配管は年数に応じて劣化が前提になるため、「不具合」と「経年劣化」を区別する視点が欠かせません。

雨漏りと漏水は原因特定で責任範囲が変わる

天井のシミやクロスの浮きは、専有部分の配管なのか共用部分なのかで対応主体が変わります。

売買トラブルでは「原因がどこか」をめぐって時間がかかるため、発見時点の記録が重要です。

  • 発見日時と状況を写真で残す
  • 上階や管理会社へ連絡履歴を残す
  • 調査報告書が取れるなら取得する

原因が共用部分なら管理組合の対応領域になることがあり、売主の責任論が単純化しません。

給排水管や設備は「付帯設備表」の記載が勝負になる

給湯器やコンロなどの設備は、契約で保証対象にするか、現状有姿で免責にするかが分かれます。

設備の扱いは口頭の説明より、付帯設備表のチェック欄で判断されやすいです。

設備の例 給湯器
争点 故障が売買前からか
設備の例 エアコン
争点 残置か付帯かの整理
設備の例 水栓
争点 水漏れの程度と修補費

設備を残すなら、動作確認の結果と、古さによるリスクの説明を一致させる必要があります。

騒音や臭いは「生活環境の説明」が不足すると揉めやすい

騒音や臭いは、欠陥と断定しにくい一方で、生活への影響が大きくクレームになりやすい領域です。

管理規約や近隣状況、過去のトラブルの有無を説明できるほど、後日の紛争を抑えられます。

  • 上階の足音や生活音の程度
  • 近隣施設の臭いの発生源
  • 管理組合での注意喚起の履歴

「気にならなかった」と言うより、客観化できる事実の提示が有効です。

共用部分の大規模修繕や積立金の情報も実質的な争点になる

売買の対象は専有部分でも、修繕積立金や長期修繕計画の状況は購入判断に直結します。

不適合の議論にならないよう、重要事項説明での扱いと同じ情報を、説明の場でも揃えます。

情報 修繕積立金の額
チェック 直近改定と今後の見込み
情報 長期修繕計画
チェック 実施済み工事と次回予定
情報 管理費の滞納
チェック 売主側の清算方法

説明の不足は「聞いていない」という感情を生みやすく、交渉コストを押し上げます。

売主と買主の負担を決めるのは契約書と告知書

木製ダイニングテーブルと子供用キッチンがあるナチュラルなリビング空間

契約不適合責任は、原則として契約で修正できる任意規定の領域が多いです。

そのため、契約書の条項と、物件状況報告書や付帯設備表の整合が取れているかが、トラブル予防の中心になります。

「物件状況報告書」は知らないでは済まない領域を増やす

物件状況報告書は、雨漏りや漏水、修繕履歴、近隣トラブルなどを整理して買主へ伝えるための土台になります。

記載が曖昧だと、買主は「不具合を隠した」と感じやすく、交渉が強硬になりやすいです。

  • 発生時期と頻度を具体化する
  • 対応した業者名や内容を残す
  • 不明な点は不明と明記する

曖昧さを減らすほど、責任の境界が見えやすくなります。

付帯設備表は「残置物」と「売買対象」を分ける

設備や家具を残す場合、売買対象として引き渡すのか、残置物として現状渡しにするのかで扱いが変わります。

後から揉めるのは「動くと思っていた」「壊れていた」のズレなので、動作状況の記載を揃えます。

分類 付帯設備
扱い 原則として一定の責任が議論になり得る
分類 残置物
扱い 原則として現状渡しで整理しやすい
分類 撤去対象
扱い 引渡しまでに撤去する義務を明確化

分類が曖昧なまま引き渡すと、片付け費用や処分費用が火種になります。

特約は「免責」より「対象と期間」を書き切る

免責特約は強い言葉ですが、何が免責なのかが書けていないと、結局は解釈で争うことになります。

売主を守りつつ買主にも納得感を出すには、対象を絞り、期間を短くし、告知を厚くする設計が現実的です。

  • 対象を設備に限定する
  • 構造や雨水侵入は対象に残す
  • 通知や協議の手順を条文化する

買主の不安をゼロにするより、想定される争点を先に潰すことが重要です。

仲介会社の説明義務と売主の告知義務を混同しない

重要事項説明は仲介会社の役割ですが、告知内容の元データを出すのは売主側です。

売主が知っている事情を共有しないと、説明不足として交渉が難航する原因になります。

主体 売主
主な役割 事実の告知と資料提供
主体 仲介会社
主な役割 重要事項説明と契約書面の整備
主体 買主
主な役割 確認と質問で条件を確定させる

役割分担を意識すると、抜け漏れの責任を押し付け合う状況を防げます。

インスペクションと保険で「後出し」を減らす

ペンダントライトとアイランドキッチンがあるモダンなリビング空間

マンション売却では、契約条項だけでなく、引き渡し前に状態を可視化する仕組みを組み合わせるとトラブルが減ります。

代表的なのがインスペクションと、既存住宅売買瑕疵保険の活用です。

インスペクションは「目視中心の現況把握」として使う

インスペクションは万能な診断ではなく、目視等を中心に現況を把握する位置づけです。

国土交通省の整理としてはインスペクション(既存住宅の点検・調査)が入口になります。

  • 引渡し前に状態を共有できる
  • 買主の不安が減り交渉が進みやすい
  • 売主も告知内容を整理しやすい

結果を契約書や告知書に反映させることで、説明の一貫性が強まります。

マンションは「専有」と「共用」の調査範囲を決める

共同住宅では、専有部分だけを調べても原因が共用部分にあることがあります。

調査範囲を決めずに実施すると、期待値のズレが起きるため、事前に目的を一致させます。

調査対象 専有部分
室内の劣化や設備の状態
調査対象 共用部分
管理組合資料で修繕履歴を確認
調査対象 配管系統
漏水履歴と原因の切り分け

調査の限界を共有すると、検査後に「それは見ていない」の衝突が減ります。

既存住宅売買瑕疵保険は「検査と保証」のセットで考える

既存住宅売買瑕疵保険は、中古住宅の検査と保証がセットになった仕組みとして整理されています。

制度の概要は国土交通省の解説が分かりやすいです。

  • 加入には所定の検査に合格する必要がある
  • 対象となる部分や範囲は商品ごとに異なる
  • 売主と買主の不安を同時に減らしやすい

保険があるから免責でよいではなく、保険で担保する範囲と契約の範囲を整合させるのがポイントです。

費用対効果は「売却のしやすさ」と「揉めない価値」で判断する

検査や保険はコストがかかるため、売却価格を上げる目的だけで判断すると期待外れになりやすいです。

買主の心理的ハードルを下げ、値引き交渉の材料を減らす目的で考えると現実的です。

期待できる効果 不安の軽減で申込みが入りやすい
期待できる効果 引渡し後の揉め事が減りやすい
注意点 保証対象外の不具合は残る
注意点 検査の限界を誤解させない

目的が明確なら、仲介会社とも施策を合わせやすくなります。

トラブルが起きたときの進め方と期間の考え方

グリーンソファと大きな窓が特徴の明るく開放的なリビング

引き渡し後に不具合が見つかった場合、感情で動くほど話がこじれやすいです。

通知と証拠の整理を優先し、当事者間で難しければ専門家を挟む順序が安全です。

最初の連絡は「通知」として残る形にする

電話や口頭だけだと、内容や時期の争いが起きやすくなります。

メールや書面で、いつ何を発見し、どのような対応を求めるかを簡潔に残します。

  • 発見日と不具合の具体的な症状
  • 写真や動画の有無
  • 希望する対応の種類(調査や修補など)

通知の有無が争点になりやすいため、到達が確認できる手段を選ぶと安全です。

「修補の協議」と「費用負担の線引き」を分けて考える

原因が確定しない段階で費用負担だけを争うと、議論が空転します。

先に調査を行い、原因と範囲を確定してから、負担割合を交渉する方がまとまりやすいです。

先に決めること 原因調査の方法と費用負担
次に決めること 修補の内容と見積もり
最後に決めること 減額か修補かの落とし所
注意点 共用部分の場合は管理組合も関与

マンション特有の関係者の多さを前提に、進め方を整理します。

時効と期間制限は「通知」と「請求」で段階がある

種類や品質の不適合では、知った時から一定期間内の通知が要になる設計です。

一方で、通知した後も、消滅時効の議論があり得るため、放置しないことが大切です。

  • 通知をしないと権利行使が難しくなる場合がある
  • 通知した後も請求を先送りしすぎない
  • 契約条項で期間が調整されていることがある

条文の確認はe-Gov法令検索(民法)を起点に、契約書の規定と照合します。

弁護士や専門家に相談すべき境界線を持つ

修補費が大きい場合や、解除を含む主張が出た場合は、当事者交渉だけで解決しにくくなります。

また、宅建業者売主や消費者契約が絡むと特約の有効性が問題になるため、早めの相談が安全です。

相談の目安 高額修繕や継続的な漏水
相談の目安 解除や大幅減額の主張が出た
相談の目安 特約の有効性が争点になった
準備 契約書類と写真と連絡履歴

相談の前に資料を揃えるほど、見通しの精度が上がります。

売却後に揉めないために押さえる要点

グリーンソファと大きな窓が特徴の明るく開放的なリビング

マンション売却の瑕疵担保責任は、現在では契約不適合責任として、契約内容と告知内容の整合でコントロールするのが基本です。

売主が個人の場合は特約で期間や対象を調整しやすい一方で、書き方が曖昧だと争点が増えるため、対象と期間を具体化することが重要です。

漏水や設備不良のように原因が分かれやすい領域では、発見時点の記録と、専有と共用の切り分けが交渉コストを左右します。

インスペクションや既存住宅売買瑕疵保険は、検査と保証を通じて後出しを減らす手段として有効なので、目的と費用対効果を明確にした上で検討します。

最終的には、契約書類一式を「同じ事実」を指すように揃え、説明の一貫性を作ることが、安心して売り切る近道になります。