マンション一棟の売却相場は「収益」と「利回り」で概算できる|相場ブレの理由と高値で売る準備は?

光に包まれたシンプル&ミニマルなナチュラルリビング
相場

マンション一棟の売却相場は「近隣の成約事例」と「物件が生む収益」を突き合わせて見えてきます。

区分マンションのように㎡単価だけで語れず、利回り・空室・修繕・賃料水準で数千万円単位の差が出やすいのが特徴です。

そこで本記事では、相場の概算手順、相場がブレる理由、価格を上げる準備を順番に整理します。

  1. マンション一棟の売却相場は「収益」と「利回り」で概算できる
    1. まずは「年間家賃収入」から逆算する
    2. 利回りの相場感で売却価格レンジを置く
    3. 直接還元法の計算イメージを持つ
    4. DCF法で「将来の変化」を織り込む
    5. 相場の「基準」は成約事例で補正する
    6. 首都圏は「低利回りでも成立」しやすい傾向がある
  2. 相場がブレる理由は「査定の前提」が人によって違う
    1. 賃料が相場より低いと価格が伸びにくい
    2. 空室率と稼働の見立てで評価が割れる
    3. 修繕・耐用年数・構造で「必要利回り」が変わる
    4. 特殊事情の取引は「相場」として採用できないことがある
  3. 相場を自分で調べるなら「公的データ」と「成約情報」を押さえる
    1. 国交省の不動産取引価格情報を参照する
    2. レインズの成約事例は「複数比較」が前提
    3. 収益物件サイトは「募集賃料の空気感」を見る
    4. 最終的には複数社査定で「前提の違い」を潰す
  4. 売却価格を上げるなら「収益の見せ方」と「リスクの潰し込み」
    1. 満室に近い状態は「説明コスト」を下げる
    2. 賃料の「是正ストーリー」を用意する
    3. 修繕履歴と将来計画を「資料」で出す
    4. 「出口」まで含めた説明は買主の安心材料になる
  5. 売却で損しないために税金と費用の「論点」を先に潰す
    1. 譲渡所得は「売却価格−取得費−譲渡費用」で考える
    2. 保有期間で税率が変わるので「日付」を確認する
    3. 契約書の印紙税や登記費用も「地味に効く」
    4. 買取と仲介では「価格の前提」が違う
  6. 相場の上側で売るために必要なのは「概算→根拠→交渉材料」の順番

マンション一棟の売却相場は「収益」と「利回り」で概算できる

木製ベンチと観葉植物があるシンプルなダイニングスペース

一棟物は「年間の純収益(NOI)」を「市場の利回り(還元利回り/キャップレート)」で割る考え方がベースになります。

相場の数字はエリアや築年、構造で大きく動くため、まずは概算レンジを自分で出せる状態にするのが近道です。

まずは「年間家賃収入」から逆算する

最初に、満室想定ではなく現況ベースで年間家賃収入を押さえます。

次に、管理費・修繕費・固定資産税等を差し引き、年間の純収益(NOI)を作ります。

相場の入り口は「収益の実力」なので、ここが曖昧だと概算が全部ズレます。

  • 現況賃料(家賃・共益費)
  • 空室・滞納の実績
  • 管理委託費・清掃費
  • 修繕の年平均(計画の有無)
  • 固定資産税・都市計画税

利回りの相場感で売却価格レンジを置く

概算は「NOI÷還元利回り」で置けます。

還元利回りはエリアの賃貸需要や地価、流通性で変わり、首都圏は低めに推移しやすいとされます。

例えば首都圏の一棟マンション市場は利回り6%台で推移という整理もあり、同じNOIでも利回りが低いほど価格は上がります。

利回りや価格の水準は、月次レポート等を引用した解説でも触れられているため、目安として参照すると整理しやすいです。

  • 利回りが低い=価格が高い
  • 利回りが高い=価格が低い
  • 都心ほど低利回りになりやすい
  • 郊外ほど高利回りになりやすい

首都圏の利回り水準や価格帯の目安に触れた解説も確認しておくと、相場の前提を揃えやすいです。

直接還元法の計算イメージを持つ

収益還元法のうち、直接還元法は「一期間の純収益」を還元利回りで割って価格を求めます。

利回りが1%動くだけで価格が大きく変わるため、相場のブレはここで生まれやすいです。

計算式の考え方は実務でも一般的に用いられ、投資判断や査定の説明にも使われます。

項目
年間純収益(NOI) 1,000万円
還元利回り 4%
概算価格 約2億5,000万円

直接還元法とDCF法の違い・計算例は、収益還元法の解説で確認できます。

直接還元法とDCF法の違いの整理

DCF法で「将来の変化」を織り込む

賃料の上げ下げ、空室率、修繕の山、出口価格など将来の変化が大きい物件はDCF法で考えると整理しやすいです。

DCFは期間ごとのキャッシュフローを割引率で現在価値に戻し、最後に売却益も含めて評価します。

採用する割引率や最終還元利回りの説明が重要で、鑑定評価でも説明責任が重視されています。

  • 賃料改定余地が大きい
  • 大規模修繕が近い
  • 空室が多く改善計画がある
  • 用途地域や再開発の影響がある

不動産鑑定評価基準(DCF法の説明等)

相場の「基準」は成約事例で補正する

収益還元だけだと、近隣で実際にいくらで売れたかという市場の答えが抜けやすいです。

そこで成約事例を複数拾い、立地・築年・規模・利回り等を補正して、自分の物件の位置を決めます。

同じエリアでも条件が違えば価格は動くので、単発の事例で決めないことが大切です。

見る項目 チェック観点
立地 駅距離・生活利便
築年 修繕履歴・耐用年数
規模 戸数・延床
賃料水準 周辺相場との差
利回り 想定と実績の差

首都圏は「低利回りでも成立」しやすい傾向がある

賃貸需要の強さや地価下落リスクの見方から、首都圏は相対的に低利回りでも取引が成立しやすいと整理されることがあります。

同じ収益でも利回りが低い市場ほど売却価格が上がるため、相場の比較は「利回り前提」を揃える必要があります。

首都圏でも都心と郊外で差が大きく、平均値だけで判断すると見誤りやすい点に注意が必要です。

  • 都心:価格が高く利回りは低め
  • 郊外:価格は抑えめで利回りは高め
  • 同一首都圏でも駅距離で差が出る

首都圏の利回り水準と価格の整理

相場がブレる理由は「査定の前提」が人によって違う

木製デスクと間接照明があるおしゃれなワークスペース

一棟の相場は、同じ物件でも査定の前提が変わると数字が大きく動きます。

ブレの正体を把握すると、査定結果の見比べ方と交渉の進め方が分かります。

賃料が相場より低いと価格が伸びにくい

相場より低い賃料で貸していると利回りが低く見え、査定価格が伸び悩む要因になるとされます。

一度設定した賃料の増額は容易でないため、売却前に「賃料の是正余地」をどう扱うかが重要です。

買主は将来の収益改善をどこまで織り込めるかで、提示価格を調整します。

  • 現況賃料と周辺相場の差
  • 是正までに要する期間
  • 更新・解約のタイミング
  • 募集条件の改善余地

賃料水準が査定に与える影響の説明

空室率と稼働の見立てで評価が割れる

空室が多い物件は、現況収益が低いだけでなく運営リスクが上がるため、利回り前提が厳しくなりやすいです。

一方で、募集条件や設備更新で改善可能と見られれば、DCFで上振れを評価するケースもあります。

査定書の「空室率の置き方」を必ず確認すると、ブレの理由が見えます。

論点 確認するポイント
空室率 何%を前提にしたか
募集条件 賃料・礼金・広告料
競合 近隣の供給状況
改善余地 設備・間取り・外観

修繕・耐用年数・構造で「必要利回り」が変わる

大規模修繕が近い、設備が古い、法定点検に課題があるなどは、将来費用を通じて評価を下げやすい要素です。

買主が求める利回りが上がれば、同じNOIでも価格は下がります。

修繕履歴や計画が整っているほど、前提を楽に置けるため見積りが安定します。

  • 外壁・屋上防水の履歴
  • 給排水管の更新状況
  • 共用部設備の更新年
  • 長期修繕計画の有無

特殊事情の取引は「相場」として採用できないことがある

親族間取引や清算、競売等の特殊事情がある事例は、相場としての代表性が弱くなります。

鑑定評価の運用上も、特殊事情の取引が混じる場合は補正等の考え方が示されています。

成約事例を見るときは、複数事例を比較し、異常値を除外する姿勢が必要です。

相場にしにくい理由
競売・公売 条件が通常と異なる
親族間取引 恩恵的価格になり得る
倒産時の取引 金融逼迫が影響する

不動産鑑定評価基準運用上の留意事項(特殊事情等)

相場を自分で調べるなら「公的データ」と「成約情報」を押さえる

黒ソファが映えるシンプルで開放感あるモダンなリビング

査定に出す前でも、根拠のあるデータを当てると「妥当なレンジ」が見えてきます。

無料で触れられる情報と、仲介会社が持つ情報の役割を分けて使うのがコツです。

国交省の不動産取引価格情報を参照する

国土交通省は、実際の取引価格情報を検索できる仕組みを提供しています。

近隣の取引を拾って、立地・築年・規模が近いものを複数比較すると相場の土台ができます。

一棟の成約が少ないエリアでは精度が落ちるため、範囲を広げて傾向を掴みます。

  • 同一市区町村だけに絞らない
  • 築年レンジを広めに取る
  • 駅距離など条件を揃える
  • 複数件で中央値を見る

不動産情報ライブラリ(取引価格情報の検索)

レインズの成約事例は「複数比較」が前提

レインズの成約事例は有力な材料ですが、特殊事情を含むケースもあるため複数比較が必要です。

また、成約事例が少ないと市場判断の精度が低下しうる点も指摘されています。

売出事例ではなく成約事例で見る姿勢を持つと、相場のブレを抑えられます。

注意点 理由
単発で判断しない 特殊事情の影響がある
売出ではなく成約 成立価格が相場の答え
件数が少ない 精度が落ちる

レインズ成約事例の見方の解説

収益物件サイトは「募集賃料の空気感」を見る

ポータルや収益物件サイトは、成約価格ではなく売出の水準を掴む用途に向きます。

同エリア・同規模で「利回り表示がどのレンジか」を見ると、買い手が求める水準が見えます。

ただし売出は強気価格も混ざるので、成約データとセットで使うのが安全です。

  • 利回り表示のレンジを観察
  • 同じ沿線で比較
  • 長期掲載は割高の可能性
  • 空室や修繕コメントを確認

最終的には複数社査定で「前提の違い」を潰す

一棟の価格は前提で動くため、複数社に査定を取り、前提を揃えて比較するのが現実的です。

どの査定手法を重視したか、利回りを何%で置いたか、空室率をどう見たかを確認します。

査定額の高低ではなく「説明が筋が通っているか」を基準にすると判断が安定します。

質問 意図
利回り前提は何%か 価格差の原因を特定
空室率の置き方 リスク評価の差を見る
修繕費をどう見たか 将来費用の扱いを確認
成約事例は何件か 根拠の厚みを確認

売却価格を上げるなら「収益の見せ方」と「リスクの潰し込み」

白いカーテンとL字ソファがあるシンプルなリビングルーム

一棟マンションは、買主が将来の運営リスクをどう見積もるかで価格が決まります。

つまり、収益の再現性を示し、リスクを小さく見せられるほど相場の上側を狙いやすくなります。

満室に近い状態は「説明コスト」を下げる

稼働率が高いと、現況収益の信頼性が上がり、直接還元で評価しやすくなります。

買主が空室改善の不確実性を織り込む必要が減るため、利回り前提が緩みやすいです。

短期的に満室を作るより、入居の質と募集条件の妥当性を整えるのが近道です。

  • 募集条件の市場整合
  • 入居審査と滞納リスク
  • 管理状況の見える化
  • 退去予兆の管理

賃料の「是正ストーリー」を用意する

賃料が相場より低い場合は、いきなり満額是正を主張すると買主に疑われます。

更新時期・退去時の再募集条件・設備更新の計画を示すと、DCFで上振れが説明しやすくなります。

現況と将来計画を分けて提示することで、過度な期待値を避けつつ評価を取りに行けます。

整理 書く内容
現況 現在の賃料・稼働
ギャップ 周辺相場との差
手段 更新・再募集・設備
時期 いつ是正できるか

賃料水準が価格に影響しうる点の説明

修繕履歴と将来計画を「資料」で出す

一棟物は、修繕が不透明だと買主が多めにリスクを上乗せしがちです。

請求書・写真・点検記録・長期修繕計画などで根拠を見せると、利回り前提の硬さが和らぎます。

資料が揃うだけで、同条件の物件より相場が上に寄ることがあります。

  • 大規模修繕の時期と内容
  • 設備更新の履歴
  • 法定点検の実施状況
  • 管理会社の報告書

「出口」まで含めた説明は買主の安心材料になる

買主は保有中の収益だけでなく、将来いくらで売れるかも見ています。

近隣の取引事例や公的データで、売却時の相場が極端に崩れにくい前提を示せると強いです。

相場データと収益データが整うほど、値引き交渉の余地が縮みます。

示す材料
取引価格情報 近隣の成立価格
賃貸需要 人口・利便性
物件の競争力 設備・間取り

取引価格情報の参照先

売却で損しないために税金と費用の「論点」を先に潰す

鮮やかなブルーソファが映える明るくポップなカフェ風リビング

売却益が出ると譲渡所得税が発生し、手残りが想定より減ることがあります。

一棟は金額が大きいので、税金・諸費用・契約条件を先に整理しておくほど判断が速くなります。

譲渡所得は「売却価格−取得費−譲渡費用」で考える

譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。

取得費には購入代金だけでなく、購入時の諸費用や建物の減価償却が関係するため、手元資料の整理が重要です。

譲渡費用には仲介手数料などが入るため、見込みで先に枠を置くと資金計画が安定します。

区分 代表例
取得費 購入代金・諸費用・償却
譲渡費用 仲介手数料・測量等
譲渡所得 売却−取得−譲渡費用

譲渡所得の計算方法の解説

保有期間で税率が変わるので「日付」を確認する

不動産の譲渡所得は、保有期間が5年以下か5年超かで税率が変わります。

売買契約日ではなく「譲渡した年の1月1日時点での所有期間」で判定されるため、境目付近は特に注意が必要です。

税率差が大きい場合、売却時期の調整が手残りに直結します。

  • 所有期間の判定日を確認
  • 取得日と譲渡日を整理
  • 相続や贈与の扱いを確認
  • 特例適用の可能性を確認

税率区分の説明を含む解説

契約書の印紙税や登記費用も「地味に効く」

売買契約書には印紙税がかかり、金額が大きいほど負担も増えます。

また、抵当権抹消など登記関連の費用も発生するため、引渡し前後の支出を見込んでおきます。

一棟は契約金額が大きい分、数万円単位の費用差でも積み上がります。

費用 発生タイミング
印紙税 売買契約書作成時
登記費用 引渡し時
仲介手数料 契約時・決済時など

売却時にかかる税金・費用の整理

買取と仲介では「価格の前提」が違う

早期に現金化したい場合は買取も選択肢ですが、一般に市場価格より低くなる傾向があります。

仲介は時間をかけて買主を探す分、価格を狙える余地があります。

どちらが得かは「時間」と「確実性」と「手残り」の優先順位で決めるとブレません。

  • 買取:早いが価格は下がりやすい
  • 仲介:時間はかかるが上振れ余地
  • 共通:資料整備で条件は改善する
  • 比較:複数社で条件を揃える

買取相場の目安に触れた解説

相場の上側で売るために必要なのは「概算→根拠→交渉材料」の順番

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最初はNOIと利回りで概算レンジを作り、次に公的データと成約事例で根拠を厚くします。

そのうえで賃料・空室・修繕の論点を資料で潰すほど、買主の必要利回りが下がり価格が伸びやすくなります。

最後は複数社査定で前提差を見える化し、説明が筋の通った提案を採用すると相場のブレに振り回されません。

「相場を知ってから査定」ではなく、「相場を作ってから査定に出す」と、売却判断は一段ラクになります。