相続した不動産を売却したいと思っても、名義や相続人の合意、税金の有無など、確認すべき点が多くて手が止まりがちです。
先に全体の流れをつかみ、いつ何を決めて何を準備するかを整理すると、ムダな出費や売却の遅れを減らしやすくなります。
特に「相続登記が終わっていない」「相続人が複数いる」「取得費が分からない」は、売却の詰まりポイントになりやすいです。
ここでは、相続した不動産を売却するための手順を7ステップで示し、税金と名義変更の要点もあわせて整理します。
相続した不動産を売却する手順は7ステップ
相続した不動産を売却する手順は、相続関係の確定→合意形成→名義変更→売却→確定申告という順で進みます。
先に詰まりやすい部分を潰しておくと、売却活動そのものがスムーズになります。
相続人と遺言を確認する
最初にやるべきことは、誰が相続人になるのかを確定し、遺言書があるかを確認することです。
相続人の確定が曖昧なままだと、後で合意がひっくり返り、売却手続きが止まる原因になります。
遺言書が見つかった場合は、形式によって家庭裁判所での手続きが必要になることがあります。
- 戸籍で相続人を確定する
- 遺言書の有無を確認する
- 遺言の内容で不動産の帰属を確認する
遺産分割協議で売却方針を決める
相続人が複数いる場合、不動産を「売って現金で分ける」のか、「誰かが取得して代償金を払う」のかで、手続きが大きく変わります。
売却を選ぶなら、売却の目的、希望時期、最低希望価格の考え方まで合意しておくと揉めにくいです。
遺産分割協議書は、登記や金融機関手続きで求められることが多いため、形式も整えて作ります。
| 決めること | ポイント |
|---|---|
| 売却するか保有するか | 固定資産税と管理負担も含めて判断 |
| 売却の方式 | 仲介か買取かを概ね決める |
| 手取りの分け方 | 税金と費用を差し引いた後で整理 |
| 意思決定の窓口 | 連絡担当を1人決める |
相続登記を済ませる
相続した不動産を売るには、原則として売主名義に直してから売買契約と決済に進みます。
相続登記は2024年4月1日から申請が義務化され、正当な理由なく怠ると過料の対象になる可能性があります。
登記が済んでいない状態では、買主の住宅ローン審査や決済の段階で止まりやすいので、売却前に着手するのが安全です。
- 相続登記の制度概要:法務省(相続登記の申請義務化について)
- 期限やQ&A:法務省(相続登記の申請義務化に関するQ&A)
- 実務の注意点:法務局(相続登記の申請義務化の案内例)
不動産の価値と売り方を決める
相続した不動産を売却する前に、机上査定と訪問査定で相場観を持ち、売り出し方針を決めます。
相場より高すぎる売出しは長期化しやすく、相場より低すぎる売出しは手取りを減らす原因になります。
土地か建物か、空き家か居住中かで、修繕の要否や売りやすさも変わります。
| 確認項目 | 目安の考え方 |
|---|---|
| 近隣の成約相場 | 類似条件の成約価格を優先 |
| 売却スケジュール | 急ぐなら買取も比較 |
| 現況の課題 | 雨漏りやシロアリ等は早期把握 |
| 境界の状況 | 不明確なら測量の検討 |
売却活動と内覧を進める
仲介で売る場合は媒介契約を結び、販売図面の作成、ポータル掲載、内覧対応へ進みます。
空き家なら清掃と換気で印象が上がりやすく、居住中なら生活感のコントロールがポイントになります。
内覧の反応が悪い場合は、価格だけでなく、写真、動線、告知事項の整理も見直します。
- 内覧前に簡易清掃をして明るさを確保する
- 修繕の要否を「やる・やらない」で決めておく
- 境界や越境の話が出たら資料を揃える
売買契約と決済を行う
買主が決まったら、重要事項説明と売買契約を結び、手付金の受領や引渡し条件を確定します。
決済日には、残代金の受領と同時に所有権移転登記を申請し、鍵の引渡しまで一気に進みます。
相続した不動産を売却する場面では、登記の準備と書類の不備が最大の遅延原因になるため、早めの段取りが重要です。
| タイミング | やること |
|---|---|
| 契約前 | 売買条件・告知事項・付帯設備を整理 |
| 売買契約 | 手付金・解除条件・引渡し日を確定 |
| 決済前 | 登記書類・印鑑証明・残代金の段取り |
| 決済当日 | 残代金受領・登記申請・鍵引渡し |
確定申告で税金を精算する
相続した不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得として原則は確定申告が必要です。
一方で、特例の適用や損失が出た場合の扱いなど、申告の要否は条件で変わります。
売却の領収書や取得費の根拠資料は、申告の計算で使うため、売却活動の時点から保管しておきます。
- 譲渡所得の考え方:国税庁(譲渡所得の計算)
- 取得費の考え方:国税庁(取得費となるもの)
- 譲渡費用の考え方:国税庁(譲渡費用となるもの)
相続した不動産を売却すると税金はいくらかかる
相続した不動産を売却したときに関係する代表的な税金は、売却益にかかる譲渡所得の税金です。
税額は「いくらで売ったか」だけでは決まらず、取得費や譲渡費用、所有期間、特例の有無で大きく変わります。
譲渡所得は売値から差し引いて計算する
譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するのが基本です。
取得費には、被相続人が買ったときの代金や購入手数料などが含まれ、建物は減価償却相当額の調整が必要です。
譲渡費用は、売るために直接かかった費用であり、修繕や維持費のすべてが入るわけではありません。
| 項目 | 意味 | 参考 |
|---|---|---|
| 譲渡価額 | 売買代金など | 取引の契約書で確認 |
| 取得費 | 購入代金や購入手数料等 | 国税庁(取得費) |
| 建物の取得費 | 減価償却相当額の控除が必要 | 国税庁(建物の取得費) |
| 譲渡費用 | 売却のために直接かかった費用 | 国税庁(譲渡費用) |
所有期間で税率が変わる
譲渡所得の税率は、所有期間が5年を超えるかどうかで「長期」と「短期」に分かれます。
判定は売った年の1月1日時点で行うため、売却時期を数か月ずらすだけで区分が変わることがあります。
相続した不動産では、原則として被相続人の取得日を引き継いで所有期間を判定するため、短期になりにくいケースもあります。
- 所有期間の区分:国税庁(土地や建物を売ったとき)
- 短期の税額計算:国税庁(短期譲渡所得の税額)
- 制度の全体像:国土交通省(土地の譲渡に係る税制)
取得費が分からないと税金が増えやすい
相続した不動産を売却するときに取得費が不明だと、計算上の利益が大きく見えて税負担が増えやすくなります。
売買契約書、領収書、登記簿の情報、当時のパンフレットなど、根拠資料を探す価値があります。
取得費の考え方は国税庁の整理が分かりやすいので、判断に迷う場合は一次情報に当たるのが安全です。
| 探す資料 | 見つかる情報 |
|---|---|
| 売買契約書 | 購入価格や手数料の手掛かり |
| 領収書・明細 | 購入手数料・改良費の根拠 |
| 登記簿 | 取得時期・権利関係の確認 |
| 当時の資料 | 分譲価格や設備情報の補助 |
相続特有の特例を使える場合がある
相続した不動産を売却したときは、相続税を払っている場合に「取得費加算の特例」が使えることがあります。
また、被相続人が住んでいた家屋等を一定要件で売る場合は、「空き家の3,000万円特別控除」の対象になることがあります。
要件や期限が細かいため、該当しそうなら早めにチェックし、必要書類の収集計画も立てます。
- 取得費加算の特例:国税庁(相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)
- 空き家特例:国税庁(被相続人の居住用財産の特例)
- 制度概要:国土交通省(空き家の譲渡所得3,000万円控除)
名義が整わないと売れない場面が多い
相続した不動産を売却するうえで、最初の関門は「名義」と「権利関係」です。
買主や金融機関は、売主が正当な権利者であることを前提に進めるため、名義が整わないと契約や決済で止まります。
相続登記が未了だと決済で止まりやすい
相続登記が終わっていないと、売買代金を受け取って引き渡す決済の場面で、所有権移転ができずトラブルになりやすいです。
登記の段取りは司法書士が中心になることが多いですが、戸籍収集などは早期に着手できます。
相続登記の義務化や期限は法務省の一次情報で確認できます。
- 制度の説明:法務省(相続登記の申請義務化について)
- よくある質問:法務省(Q&A)
- 案内ページ例:法務局(周知ページ)
共有名義は売却の意思決定が重くなる
相続人が複数で共有名義になっている不動産は、売却の意思決定が難しくなりがちです。
買主側から見ても、共有者全員が売主として関与し、書類と意思が揃う必要があるため、遅延リスクが上がります。
売却を前提にするなら、遺産分割で単独名義に寄せる設計が現実的なこともあります。
| 状態 | 起こりやすい問題 |
|---|---|
| 共有名義のまま売る | 全員の署名押印と実印が必要になりがち |
| 共有者が遠方 | 書類のやり取りが長期化しやすい |
| 共有者の意見が割れる | 価格や時期で合意が難航 |
| 単独名義に整理 | 手続きは増えるが売却は進めやすい |
遺産分割が長引くなら代替手段も知る
遺産分割協議がまとまらないと、相続した不動産を売却したくても進められない場面があります。
その場合、話し合いの前提整理や、手続き上の救済策を理解しておくと、放置リスクを減らせます。
制度の枠組みは一次情報で確認し、実務は専門家の助言を得るのが安全です。
- 相続登記の考え方:法務省(相続登記Q&A)
- 申請義務化の概要:法務省(申請義務化)
- 登記を放置するリスクを理解する
登記や売却で使う書類を先にリスト化する
相続した不動産を売却するときは、登記用と売買用で書類が重複し、提出回数も増えがちです。
途中で「この書類が足りない」となると、役所の取得からやり直しになり、売却スケジュールが崩れます。
最低限の書類を先にリスト化し、取れるものから集めると進行管理が楽になります。
| カテゴリ | 代表例 |
|---|---|
| 相続関係 | 戸籍一式、相続関係説明図 |
| 遺産分割 | 遺産分割協議書、印鑑証明 |
| 不動産 | 登記事項証明書、固定資産税関係 |
| 売買 | 本人確認書類、実印、銀行口座 |
売却方法は仲介と買取で結果が変わる
相続した不動産を売却する方法は大きく「仲介」と「買取」に分かれます。
高く売りたいのか、早く確実に売りたいのかで適した方法が変わり、選び方を誤ると後悔しやすいです。
仲介と買取の違いを先に押さえる
仲介は市場で買主を探すため、相場に近い価格で売れる可能性があります。
買取は不動産会社等が買主になるため、早い一方で価格が下がりやすい傾向があります。
空き家の管理が難しい、相続人間で早く整理したい、といった事情があるなら買取も比較対象になります。
| 方式 | 向きやすい状況 |
|---|---|
| 仲介 | 価格重視で時間に余裕がある |
| 買取 | 期限がある、手間を減らしたい |
| 買取保証 | まず仲介で挑戦し期限後に買取へ |
| 個人間売買 | 相手探しと契約管理ができる場合 |
媒介契約の種類で動き方が変わる
仲介で売る場合は、不動産会社と媒介契約を結んで売却活動を進めます。
媒介契約には一般媒介、専任媒介、専属専任媒介があり、依頼の縛りや報告頻度が異なります。
制度の説明は指定流通機構の案内が参考になります。
- 媒介契約制度:REINS(媒介契約制度)
- 標準媒介契約約款:国土交通省(標準媒介契約約款PDF)
- 契約形態は売主の方針で選ぶ
査定は条件を揃えて比較する
相続した不動産を売却する場面では、査定額が高い会社が正解とは限りません。
査定額の根拠が「近隣成約」「販売期間の想定」「値下げ戦略」まで説明されているかを重視するとズレが減ります。
同じ前提条件で複数社に査定を依頼し、説明の質と販売戦略を比較します。
| 比較ポイント | 見方 |
|---|---|
| 根拠データ | 近隣成約と類似条件の提示 |
| 販売戦略 | 初動価格と見直し基準 |
| リスク説明 | 告知事項と交渉ポイント |
| 担当の実務力 | 連絡頻度と段取りの具体性 |
相続不動産は告知事項の整理が重要になる
相続した不動産を売却する場合、売主が現地の状況を把握できていないことがあります。
雨漏りやシロアリ、越境、過去の修繕履歴など、分かる範囲を整理して共有するだけで、後のトラブルを減らしやすいです。
不明点は不明として扱い、必要なら専門調査を検討します。
- 設備の不具合を分かる範囲で列挙する
- 境界と越境が疑わしいなら早めに相談する
- 書面で残る形で説明する
必要書類と費用の目安を先に把握する
相続した不動産を売却すると、登記、仲介、測量、解体、税金など、費用が複数レイヤーで発生します。
費用項目を先に見える化しておくと、手取りの見積もりと相続人間の分配の話が進めやすくなります。
売却で出やすい費用を一覧にする
相続不動産の売却費用は、物件の状態と売り方で変動します。
ただし、仲介手数料、登記関連費、税金は多くのケースで検討対象になります。
まずは「必ず出やすい費用」と「状況次第の費用」を分けて整理します。
| 費用項目 | 発生しやすい場面 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 仲介で成約した場合 |
| 登記関連費 | 相続登記や決済の登記 |
| 測量費 | 境界不明確や土地取引で要請 |
| 解体・残置物処分 | 空き家整理が必要な場合 |
| 譲渡所得の税金 | 売却益が出た場合 |
確定申告に備えて領収書を集める
譲渡所得の計算では、譲渡費用として認められる支出と、そうでない支出が分かれます。
どれが譲渡費用に該当するかは一次情報に沿って判断し、迷うものは専門家に確認するのが安全です。
少なくとも売却に直接関係する支出の領収書は、まとめて保管しておきます。
- 譲渡費用の考え方:国税庁(譲渡費用となるもの)
- 取得費の考え方:国税庁(取得費となるもの)
- 売却関連書類は時系列で保存する
空き家は管理コストとリスクも費用として考える
空き家のまま放置すると、固定資産税、火災保険、草木の管理、近隣対応などの負担が続きます。
状態が悪化すると売却価格が下がったり、解体や修繕が必要になったりして、結果として手取りが減ることがあります。
売るか貸すか迷う場合でも、管理の現実コストを入れて判断するとブレにくいです。
- 固定資産税と保険の継続負担
- 劣化による修繕・解体リスク
- 近隣トラブルの対応コスト
税金の特例は期限と要件を先に確認する
相続した不動産を売却するときの特例は、期限や要件が細かく、売却後に気づくと間に合わないことがあります。
取得費加算の特例は適用できる期間が決まっており、空き家特例も対象期間や要件が整理されています。
該当しそうなら、売却活動の早い段階で一次情報を読み、必要書類の入手経路まで確認します。
| 特例 | 一次情報 |
|---|---|
| 取得費加算の特例 | 国税庁(No.3267) |
| 空き家の3,000万円控除 | 国税庁(No.3306) |
| 制度概要 | 国土交通省(空き家特例) |
不安が残るなら専門家に早めに相談する
相続した不動産を売却する手続きは、相続関係、登記、売買実務、税金が同時に絡むため、どこかで詰まると全体が止まりやすいです。
相続人間の合意が難しい場合や、取得費が不明な場合、特例の適用が微妙な場合は、早めに司法書士や税理士、不動産会社に相談すると判断が速くなります。
相談前に「相続人の状況」「不動産の現況」「売却の期限」「税金の見込み」を簡単にメモしておくと、初回から具体的な話になりやすいです。
流れを7ステップで押さえ、名義と税金の要点を先に整理しておけば、相続した不動産の売却は現実的に前へ進められます。
