不動産売却で「一般媒介にしますか」と言われても、何が変わるのかが曖昧なままだと判断がぶれます。
一般媒介は複数社に同時に依頼できる一方で、情報整理と意思決定を売主が主導する必要があります。
専任媒介や専属専任媒介とは、報告頻度やレインズ登録義務の有無が大きく異なります。
契約書の見落としがあると、広告費や連絡体制で揉めやすくなるため、最初に「運用ルール」を決めるのが近道です。
不動産売却の一般媒介は複数社に依頼できる契約
一般媒介は、売主が複数の不動産会社へ同時に売却活動を依頼できる契約形態です。
専任系と違い、レインズ登録や定期報告の義務が法律で一律に課されていないため、運用の自由度が高いのが特徴です。
ただし自由度が高い分、窓口管理や情報の整合性は売主側の設計次第で成果が変わります。
一般媒介でできることの範囲
一般媒介では、同一物件について複数の宅建業者へ媒介を重ねて依頼できます。
売主が自分で買主を見つけて直接契約することも、契約内容に反しない範囲で選べます。
反面、各社に同じ条件で動いてもらうには、価格や募集条件の共有が欠かせません。
- 複数社へ同時に売却依頼が可能
- 窓口や連絡方法は売主が設計
- 募集条件の統一で情報のブレを防ぐ
- 内覧調整と申込み管理が重要
専任媒介・専属専任媒介との違い
専任媒介と専属専任媒介は、宅建業法に基づきレインズ登録や業務報告などの義務が定められています。
たとえば報告義務は、専任媒介が2週間に1回以上、専属専任媒介が1週間に1回以上と整理されています。
一般媒介はこれらの義務が一律ではないため、比較すると「管理の手間と自由度」のトレードオフになります。
| 契約形態 | 複数社へ依頼 | レインズ登録 | 業務報告の目安 |
|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 可能 | 任意 | 契約で取り決め |
| 専任媒介 | 不可 | 義務 | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | 不可 | 義務 | 1週間に1回以上 |
一般媒介が向いているケース
一般媒介が向くのは、不動産会社を比較しながら売却活動を進めたい売主です。
地域性や物件特性により得意な会社が分かれる場合、複数社の販売網を同時に使える利点が出ます。
一方で、連絡が増えることを負担に感じるなら、窓口の一本化も検討が必要です。
- 相場観を掴みつつ会社を比較したい人
- 物件種別ごとに得意会社が違うエリア
- 売主側で条件管理ができる人
- 内覧対応の体制を作れる人
最初に決める基本方針
一般媒介で成果を出すには、スタート時点で運用ルールを決めておくのが重要です。
募集価格と値下げ条件、内覧の受付方法、申込みが入ったときの優先順位を先に固定します。
ルールが曖昧だと、不動産会社ごとに提案が分散して判断が遅れます。
| 決める項目 | 例 |
|---|---|
| 募集価格の統一 | 全社同一価格で開始 |
| 値下げの条件 | 内覧数と期間で判断 |
| 内覧の窓口 | 代表会社に集約 |
| 申込みの扱い | 条件の良い順で交渉 |
一般媒介のメリットは競争が働く
一般媒介の強みは、複数社が並走することで提案が比較でき、活動の停滞に気づきやすい点です。
専任系に比べて「一社の都合」に依存しにくく、売主が主導権を持ちやすくなります。
ただし競争が機能するには、情報の統一とルール設計が前提です。
販売チャネルが増えやすい
会社ごとに得意な購入層や情報発信のルートが異なるため、接点が増えやすくなります。
同じ物件でも、得意なエリアや顧客層に刺さる見せ方が違うことがあります。
複数社の視点を同時に取り入れることで、訴求の改善スピードが上がります。
- 会社ごとに顧客層が違う
- チラシやWEB運用の強みが違う
- 案内ルートが複線化しやすい
- 反響の比較ができる
レインズ登録を任意で活用できる
一般媒介では、レインズへの登録義務はありませんが、任意登録によって相手方探索の範囲を広げることが可能とされています。
レインズへの登録が必要かどうかは、不動産会社の方針や売主の同意の取り方で運用が変わります。
任意登録を希望する場合は、契約前に「登録するか」「証明書の交付はどうするか」を確認しておくと安心です。
| 確認ポイント | 見るべき理由 |
|---|---|
| 任意で登録するか | 情報共有の範囲が変わる |
| 登録後の説明 | 取引状況の透明性に関わる |
| 登録証明書の扱い | 登録の事実確認に使える |
囲い込みを疑うより先に仕組みで防ぐ
売却では、売主側と買主側を同じ会社が仲介する「両手仲介」を狙って、他社からの紹介を絞る行為が問題視されることがあります。
国土交通省の周知資料では、物件の取引状況を隠し紹介を行わないような行為を「囲い込み」とし、売主の利益を損なう可能性があると説明されています。
一般媒介は複数社が並走するため、反響や問い合わせ状況の比較がしやすく、兆候に気づきやすい構造です。
- 問い合わせの有無を複数社で照合できる
- 内覧数と反響のズレに気づける
- 情報開示の姿勢を比較できる
- 活動が弱い会社は入れ替えやすい
担当者の力量差を分散できる
売却の成果は、担当者の提案力と行動量に左右されます。
一般媒介では、担当者の相性が合わない場合でも、別会社の動きで穴を埋められます。
ただし「誰が主担当か」が曖昧だと、全員が様子見になることがあるため、役割分担が重要です。
| 設計 | 狙い |
|---|---|
| 主担当を決める | 窓口を一本化する |
| 比較用の担当を置く | 提案の質を見極める |
| 情報共有のルール | 条件のブレを防ぐ |
一般媒介のデメリットは主導権を自分で握る必要
一般媒介は自由度が高い反面、売主が管理する項目が増えます。
連絡の増加と情報のばらつきが起きると、売却判断が遅れて機会損失につながります。
デメリットを理解したうえで、運用負荷を下げる工夫を先に入れておくことが大切です。
連絡窓口が増えてストレスになりやすい
一般媒介では、内覧希望や申込みの連絡が複数社から入る可能性があります。
対応が遅れると、買主側の熱量が下がりやすくなります。
主担当を決めて窓口を集約すると、負荷を大きく下げられます。
- 窓口を一本化して転送する
- 連絡手段をメールに寄せる
- 内覧可能日を事前に提示する
- 即答できない条件を先に決める
募集条件がブレると信用を落とす
会社ごとに価格や条件の表現が違うと、買主は不安を感じます。
特に価格の不一致は「何か事情があるのでは」と疑われやすく、交渉で不利になります。
全社で同一条件に揃え、変更時は同日に更新する運用が安全です。
| ブレやすい項目 | 対策 |
|---|---|
| 募集価格 | 全社同日で改定 |
| 引渡し時期 | 最短と希望を明記 |
| 付帯設備 | 残す物を固定 |
| 告知事項 | 説明文を統一 |
会社 forwarding で広告が重複しやすい
複数社が同じ媒体に掲載すると、広告が重複して見えることがあります。
重複そのものが直ちに違法という話ではありませんが、見せ方が悪いと物件の印象を落とします。
代表会社を決めて主要媒体を担当させ、他社は顧客紹介に寄せると整理しやすくなります。
- 主要ポータルは代表会社に寄せる
- 写真とキャッチコピーを統一
- 掲載の有無を週次で棚卸し
- 反響経路を会社別に記録
優先度が下がる可能性を織り込む
不動産会社から見ると、一般媒介は成約しても必ず自社の仲介になるとは限りません。
そのため、専任系よりもリソース配分が薄くなる可能性があります。
だからこそ、依頼時点で「何をどこまでやってくれるか」を言語化して合意しておくのが重要です。
| 確認する行動 | 目安 |
|---|---|
| 販売計画の提示 | 媒体と訴求の方針 |
| 反響共有の頻度 | 週1回など |
| 内覧後のフィードバック | 当日〜翌日 |
一般媒介の明示型と非明示型を理解する
一般媒介には、他社にも依頼している事実や会社名を通知する「明示型」と、通知を要しない「非明示型」があります。
明示型は、依頼先の宅建業者へ他の依頼先を知らせる義務があると整理されています。
どちらにするかで連絡設計とトラブルの起きやすさが変わるため、契約書の型式を確認することが重要です。
明示型は「どこに頼んだか」を伝える前提
明示型では、依頼者が他にどの宅建業者へ依頼しているかを通知する義務があるとされています。
通知があることで、会社側は競合状況を前提に動き方を考えられます。
一方で、売主側も情報更新の手間が増えるため、運用ルールが必要です。
| 論点 | 影響 |
|---|---|
| 通知義務 | 依頼先変更の連絡が必要 |
| 情報共有 | 提案の重複が減りやすい |
| 管理負荷 | 売主の事務が増える |
非明示型は自由度が高いが誤解が起きやすい
非明示型は、他社へ依頼しているかどうかや、依頼先の会社名を通知する必要がない形です。
売主にとっては手間が少ない一方で、会社側が「競合の存在」を把握できず、連絡や内覧調整で齟齬が出ることがあります。
非明示型でも、代表会社を決めて共有事項を揃えれば実務は安定します。
- 代表会社に内覧調整を集約する
- 募集条件の更新は同日で統一
- 申込みが入ったら全社へ即時共有
- 価格改定の基準を先に共有する
契約期間は「慣行」と「約款」の扱いで考える
一般媒介は、法律上の有効期間に一律の制約がないと整理されています。
ただし標準媒介契約約款では、専任媒介と同様に3か月以内を想定する設計も示されています。
長く結びすぎると、見直しの機会を失うため、まずは短めに区切って検証する方が安全です。
| 設定例 | 狙い |
|---|---|
| 1〜3か月 | 反響を見て見直す |
| 自動更新なし | 惰性の継続を防ぐ |
| 更新条件を明記 | 活動内容を評価する |
契約書で確認したい項目
一般媒介は自由に運用できる分、契約書の記載が実務のルールになります。
仲介手数料そのものだけでなく、広告費や特別な依頼の費用負担、報告方法を確認するとトラブルを防げます。
チェックは「費用」と「報告」と「募集条件」の3系統に分けると漏れにくくなります。
費用負担の境界を明確にする
通常の売却活動は仲介手数料の範囲内という理解が一般的ですが、特別な広告などを依頼すると別途費用が発生し得ます。
どこからが特別依頼かが曖昧だと、後から請求されて揉めやすくなります。
契約書で「実施内容」と「金額の上限」をセットで確認しておくのが安全です。
- 特別広告の依頼条件
- 費用の見積りと上限
- 実施前の事前承諾の要否
- キャンセル時の扱い
報告の頻度と形式を取り決める
一般媒介では、専任系のように法律で一律の定期報告義務が課される形ではありません。
だからこそ、売主側が欲しい情報を定義し、頻度と形式を決めた方が管理が楽になります。
報告内容をテンプレ化すると、複数社でも比較しやすくなります。
| 報告項目 | 例 |
|---|---|
| 反響数 | 週次で件数 |
| 内覧数 | 日付と所要時間 |
| 改善提案 | 価格か訴求か |
| 競合状況 | 近隣の成約事例 |
レインズの扱いを「任意登録」前提で確認する
一般媒介ではレインズ登録は任意であり、登録する場合は売主の同意のもとで運用されると説明されています。
登録した場合のメリットは情報共有の拡大ですが、登録後に何をどう見える化するかは会社によって差があります。
登録の可否に加えて、登録後の説明や証明書の扱いも確認すると安心です。
- 登録するなら誰が行うか
- 登録後に売主へ何を共有するか
- 取引状況の更新ルール
- 問い合わせ対応のフロー
解除条件と申込み時の優先順位を決める
一般媒介では会社の入れ替えがしやすい一方で、解除の手続きが曖昧だと現場が混乱します。
申込みが入ったときに「どの会社が交渉窓口になるか」を決めておくと、スピードが上がります。
事前にルール化しておけば、良い条件の申込みを逃しにくくなります。
| ルール | 例 |
|---|---|
| 解除の通知方法 | 書面またはメール |
| 解除のタイミング | 内覧ゼロが一定期間 |
| 申込み窓口 | 主担当が一本化 |
| 交渉の優先順位 | 条件の良い順で交渉 |
一般媒介で売却を前に進める要点
一般媒介は、複数社の強みを活かせる一方で、情報統一と窓口設計がないと混乱しやすい契約です。
明示型か非明示型かを確認し、募集条件の統一と報告テンプレを先に作ると運用が安定します。
レインズの任意登録を希望するなら、登録の有無だけでなく、登録後の説明と取引状況の共有方法まで確認しておくと安心です。
反響と内覧の数字が動かないときは、価格と訴求のどちらを直すかを期限付きで決めると判断が早くなります。
一般媒介のメリットは競争を生むことなので、比較できる状態を作ってから走らせるのが最短ルートです。
参考:一般媒介の明示型・非明示型、専任系の報告義務とレインズ登録期限の整理は全日本不動産協会を参照できます。
参考:専任媒介の報告義務と一般媒介のレインズ任意登録の考え方は近畿レインズでも説明されています。
参考:レインズのステータス管理機能と囲い込みへの注意喚起は国土交通省関連の周知資料に掲載されています。

