不動産を売ったあとに気になるのは、結局いくら税金がかかるのかという点です。
結論から言うと、売却で利益が出たかどうかと、使える特例があるかどうかで税額は大きく変わります。
一方で、売買契約書の印紙税や固定資産税の精算など、利益の有無に関係なく発生しやすい費用もあります。
本記事では、譲渡所得の計算から税率、特例、確定申告の流れまでを手順どおりに整理します。
読み終えるころには、税金の見落としや申告漏れを避けつつ、手取りの見通しを立てられる状態になります。
不動産売却後の税金は譲渡所得の有無で決まる
不動産売却後の税金で中心になるのは、譲渡所得に対する所得税と住民税です。
譲渡所得は給与などと合算せず、原則として分離課税で計算します。
まずは利益が出たかどうかを数字で判定し、次に税率区分と特例の適用可否を確認します。
利益が出たかは計算式で判定する
税金がかかるかどうかは、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた残りで決まります。
この残りがプラスなら譲渡所得が生じ、原則として所得税と住民税の対象になります。
逆にマイナスなら譲渡損失となり、税金が発生しないか、別の制度で影響が出る形になります。
計算の基本は国税庁の考え方に沿って整理すると迷いません。
| 収入金額 | 売却代金(譲渡価額) |
|---|---|
| 取得費 | 購入代金・建築代金等(建物は減価償却控除後) |
| 譲渡費用 | 仲介手数料・測量費・契約書印紙代など |
| 課税譲渡所得 | 収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 |
税率は所有期間で変わる
譲渡所得には、短期譲渡所得と長期譲渡所得という区分があります。
区分は売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで判定します。
同じ利益でも、短期になると税率が高くなるため、売却時期の判断材料になります。
所有期間の判定ルールは、国税庁の説明を基準に理解すると確実です。
- 5年超:長期譲渡所得
- 5年以下:短期譲渡所得
- 判定日:売った年の1月1日
- 相続取得でも通算される場合がある
住民税と復興特別所得税もセットで考える
不動産の譲渡所得では、所得税だけでなく住民税も課税されます。
さらに一定期間は復興特別所得税が加算され、最終的な負担率が少し上がります。
よくある誤解は、所得税の税率だけを見て手取りを見積もってしまうことです。
税率は制度上の前提があるため、公式情報に基づいて把握するのが安全です。
| 所得税 | 長期15%/短期30%(分離課税) |
|---|---|
| 住民税 | 長期5%/短期9% |
| 復興特別所得税 | 所得税額に対して2.1%を加算 |
| 注意点 | 特例適用で税率や課税所得が変動 |
参考:国税庁 No.1440 譲渡所得。
税金を払うタイミングは「売った年の翌年」が基本
不動産を売った年の所得は、原則として翌年の確定申告で申告します。
つまり売買代金が入金された直後に税金を払うのではなく、翌年に手続きが来るのが通常です。
ただし申告が必要なのに放置すると、加算税や延滞税のリスクが生じます。
納期限が休日に当たる場合は翌日になる点も含めて把握しておくと安心です。
- 対象期間:1月1日から12月31日
- 申告・納税:翌年の期限まで
- 期限が土日祝なら翌日が法定納期限
- 必要書類の収集は売却直後からが楽
譲渡所得の計算で押さえる3つの費用
譲渡所得の計算で差が出るのは、取得費と譲渡費用をどれだけ正確に積み上げられるかです。
同じ売却代金でも、証拠書類が揃うほど課税譲渡所得を圧縮できる可能性があります。
税務上の定義に沿って整理し、漏れなく計上することが手取り最大化の近道です。
取得費に入るものを広く拾う
取得費は購入代金だけではなく、取得のために要した費用や改良費なども含みます。
取得費が増えるほど、課税対象となる譲渡所得は小さくなります。
一方で私的な支出や維持費は原則として取得費にならないため、線引きが重要です。
取得費の範囲は国税庁の整理に沿って確認すると安全です。
- 購入代金・建築代金
- 購入時の手数料
- 設備費・改良費
- 購入時に納めた税金の一部
譲渡費用は「売るために直接かかった費用」
譲渡費用は、売却のために直接必要だった支出が対象です。
代表例は仲介手数料ですが、測量費や契約書の印紙代なども該当します。
譲渡費用も取得費と同様に、課税譲渡所得を圧縮する方向に働きます。
領収書や明細が残るものは、取引後にまとめて保管しておくと申告が楽です。
| 仲介手数料 | 不動産会社へ支払う手数料 |
|---|---|
| 測量費 | 境界確定や測量に要した費用 |
| 印紙代 | 売買契約書に貼付した印紙税 |
| 取壊し費用 | 更地で売るための解体費等 |
取得費が分からないときは「概算取得費」を検討する
古い不動産や相続で引き継いだ不動産では、購入時の資料が見つからないことがあります。
その場合でも取得費をゼロにするのではなく、一定の要件で概算取得費を使えます。
概算取得費は売却代金の5%を取得費とする考え方で、最低限の計算の土台になります。
ただし実際の取得費のほうが大きい場合は、資料発掘を優先したほうが税負担が下がる可能性があります。
- 取得費不明なら売却代金の5%を取得費にできる
- 実取得費が5%未満でも5%を使える場合がある
- 資料が出れば実取得費に切替できる
- 建物分の扱いは別途整理が必要
建物は減価償却を差し引いた取得費になる
土地と建物を一体で購入した場合でも、建物部分は年数経過で価値が減る前提が置かれます。
そのため建物の取得費は、購入代金等から減価償却費相当額を差し引いて計算します。
減価償却の計算は複雑になりやすいので、売買契約書や固定資産税評価明細などで内訳を整理します。
建物の比率や用途によって計算結果が変わるため、迷う場合は税理士へ相談するのも現実的です。
| 土地 | 減価償却の対象外 |
|---|---|
| 建物 | 減価償却費相当額を控除 |
| 資料例 | 売買契約書・登記費用資料・評価明細 |
| 注意点 | 事業用の扱いは個別判断が必要 |
税率と区分を間違えないための早見
税額を見積もる段階では、区分の取り違えが最も大きな誤差になります。
特に「所有期間5年」の判定日と、「所得税と住民税のセット計算」を押さえることが重要です。
ここでは、実務で迷いやすいポイントを早見の形で整理します。
長期か短期かは「売った年の1月1日」で決める
所有期間は売却日当日ではなく、売却した年の1月1日時点で判定します。
年末に売るか年始に売るかで、所有期間の判定が変わるケースがあります。
例えば取得日がギリギリの場合、数日違いで短期になって税率が跳ね上がることもあります。
迷ったら「売った年の1月1日」を基準に、取得日との関係を確認します。
- 判定基準は毎年1月1日
- 5年を超えると長期扱い
- 5年以下は短期扱い
- 相続取得は前所有者の期間を通算する場合がある
所得税と住民税を合算して概算する
譲渡所得の税率は、所得税と住民税が別々に設定されています。
概算するときは片方だけで判断せず、合算の負担率で見ると手取りが読みやすくなります。
さらに復興特別所得税が加算されるため、所得税部分はわずかに上乗せされます。
制度上の税率は国税庁や公的機関の情報で確認するのが安全です。
| 長期の目安 | 所得税15%+住民税5%+復興特別所得税 |
|---|---|
| 短期の目安 | 所得税30%+住民税9%+復興特別所得税 |
| 対象 | 課税譲渡所得金額 |
| 注意点 | 居住用特例で税率が変動 |
参考:国土交通省 土地の譲渡に係る税制。
復興特別所得税は「所得税額に対して」かかる
復興特別所得税は、譲渡所得そのものに直接税率を掛けるのではありません。
所得税額を計算したうえで、その所得税額に2.1%を乗じて上乗せします。
そのため「長期は約20%」のような簡略説明だけで計算すると、端数の差が出ます。
適用期間が定められているため、計算根拠は国税庁の説明に合わせるのが確実です。
- 上乗せ対象は所得税額
- 税率は2.1%
- 一定の年分まで適用される
- 申告書で所得税と一緒に申告する
共有名義は「持分ごと」に譲渡所得を計算する
夫婦や親子で共有名義になっている不動産を売ると、税金の計算単位が変わります。
売却代金や取得費、譲渡費用は、原則として持分割合に応じて按分します。
特例も持分ごとに適用判定されるため、誰の居住用か、誰が所有者かが重要になります。
契約書や登記事項証明書で持分を確認し、申告書作成時にズレが出ないようにします。
| 計算単位 | 共有者ごと |
|---|---|
| 按分基準 | 登記上の持分割合が原則 |
| 注意点 | 居住用特例の対象者判定 |
| 資料例 | 登記事項証明書・売買契約書 |
参考:個別事情で扱いが変わるため、迷う場合は税務署や税理士への確認が安全です。
使える特例で税負担が大きく変わる
不動産売却後の税金は、特例を使えるかどうかで「ゼロ」から「高額」まで振れ幅が生じます。
特にマイホームの売却では、3,000万円特別控除や軽減税率の特例が代表的です。
要件を満たすかどうかは事実関係で決まるため、早めにチェックしておくことが重要です。
3,000万円特別控除は手取りに直結する
マイホームを売ったときは、一定の要件で譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
控除は税額から引くのではなく、課税譲渡所得そのものを減らすため効果が大きいです。
売却益が3,000万円以下なら、譲渡所得がゼロになり所得税と住民税が発生しないこともあります。
適用可否は要件確認が重要なので、国税庁の案内を基準にチェックします。
- 対象は居住用財産(マイホーム)
- 控除額は最高3,000万円
- 所有期間の長短は問わない
- 必要な要件を満たすことが前提
参考:国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例。
特例適用でも申告は必要になる
3,000万円特別控除を使って税金がゼロになっても、原則として確定申告は必要です。
申告書には譲渡所得の内訳書など、売却の事実と計算根拠を示す書類を添付します。
書類が不足すると特例が認められないリスクがあるため、売却時から準備することが大切です。
必要書類はケースで変わるので、国税庁の案内や税務署で確認して整えます。
| 主な提出物 | 確定申告書 |
|---|---|
| 計算明細 | 譲渡所得の内訳書(計算明細) |
| 添付の例 | 売買契約書の写し・仲介手数料明細 |
| 注意点 | 特例の要件を満たす資料を揃える |
10年超のマイホームは軽減税率が使える場合がある
所有期間が10年を超えるマイホームの売却では、軽減税率の特例が使える場合があります。
この特例は、3,000万円特別控除と併用できる点が大きなメリットです。
特例適用後の課税所得に対して税率が段階的に軽減されるため、高額売却ほど影響が出やすいです。
併用可否や要件は国税庁のタックスアンサーで確認するのが確実です。
| 対象 | 10年超所有の居住用財産 |
|---|---|
| 特徴 | 税率を段階的に軽減 |
| 併用 | 3,000万円特別控除と重ねて適用可 |
| 注意点 | 他特例との関係で不可となる場合がある |
参考:国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率。
住宅ローン控除など他制度との「前後関係」に注意する
売却の特例は、過去に別の特例を使っていると適用できない場合があります。
また、マイホームの買換えや住宅ローン控除など、取得側の制度と影響し合うこともあります。
そのため売却だけでなく、前後の居住状況や控除適用歴を時系列で整理することが重要です。
判断が難しいときは、制度名だけで決めつけず、公式の要件説明に当てはめます。
- 他の特例を受けていると制限が出る場合がある
- 親族など特別関係者への売却は対象外になりやすい
- 買換えや住宅ローン控除と相互に制限が生じることがある
- 適用歴は過去数年分も確認する
確定申告と納税までの流れ
不動産を売ったら終わりではなく、翌年の確定申告までが一連の手続きです。
売却直後に書類を集めておくと、申告時期に慌てずに済みます。
ここでは、申告の時期、必要書類、納税のタイミングを実務の順番で整理します。
申告期限と納期限を先にカレンダーへ入れる
確定申告の期限は、原則として翌年の一定期間に設定されています。
期限が土日祝日に当たる場合は翌日が期限になるため、年度ごとのカレンダー確認が有効です。
申告と納税は原則として同じ期限で動くため、資金繰りも含めて準備しておくと安心です。
納期限の考え方は国税庁の案内に沿って押さえます。
- 売却した年の所得を翌年に申告する
- 法定納期限が休日なら翌日になる
- 納税資金は分けて確保しておく
- 還付が出る場合も申告は同様に必要
必要書類は「売買」「費用」「登記」で分ける
譲渡所得の申告は、売買契約書だけあればよいわけではありません。
取得費や譲渡費用を裏付ける資料が揃うほど、計算が正確になりやすいです。
特例を使う場合は追加資料が必要になるため、一般計算よりも早めの準備が重要です。
まずは書類をカテゴリで整理し、足りないものを洗い出します。
| 売買関係 | 売買契約書・重要事項説明書 |
|---|---|
| 費用関係 | 仲介手数料・測量費・印紙代の明細 |
| 取得関係 | 購入時契約書・領収書・改良費資料 |
| 登記関係 | 登記事項証明書・持分が分かる資料 |
印紙税は契約金額で決まり、軽減措置がある
不動産売買契約書には印紙税がかかり、契約書に記載された契約金額で税額が決まります。
印紙税は利益の有無に関係なく発生しやすい費用なので、税金の全体像に含めて見積もります。
一定期間は不動産譲渡契約書の印紙税に軽減措置があるため、該当可否も確認します。
税額表は国税庁の一覧で確認するのが確実です。
- 契約金額に応じて税額が段階的に変わる
- 契約書を複数通作成すると通数分が必要
- 一定期間の軽減措置が案内されている
- 電子契約の扱いは契約形態で確認する
固定資産税の精算は契約実務として整理する
固定資産税と都市計画税は、原則として1月1日時点の所有者に課税されます。
年度途中で売ると売主に納税通知が来る一方で、引渡し日以降分を買主と日割り精算するのが実務では一般的です。
ただし精算は法律で一律に決まるものではなく、売買契約の取り決めで整理されます。
税金というより売買代金の精算項目として、契約書の条項で確認することが重要です。
| 原則の納税義務者 | 1月1日時点の所有者 |
|---|---|
| 実務の取扱い | 引渡し日を境に日割り精算が多い |
| 注意点 | 契約書に精算方法を明記する |
| 確認先 | 不動産会社・契約書条項 |
参考:精算の考え方は地域慣行もあるため、契約前に仲介会社へ確認すると安心です。
手取りを守るために最初にやるべき要点
不動産売却後の税金は、譲渡所得の計算と特例判定を正しく行えば、必要以上に払うリスクを減らせます。
売却直後にやるべきことは、売買契約書と費用の領収書を集め、取得費と譲渡費用を漏れなく整理することです。
次に、所有期間の判定と、マイホーム特例の要件を早めにチェックして適用可能性を見極めます。
税金がゼロ見込みでも申告が必要なケースがあるため、翌年の申告期限を先に押さえて準備を進めます。
迷う論点が出たら、国税庁のタックスアンサーや税務署、税理士に確認し、推測で進めないことが結果的に手取りを守ります。

