不動産を売って利益が出たときは、原則として譲渡所得として所得税と住民税がかかる。
ただし、税金がかかるかどうかと金額は「利益の出し方」「所有期間」「使っていた目的」「特例の適用可否」で大きく変わる。
特にマイホームの売却は、3,000万円の特別控除や軽減税率などの制度があり、手取りを左右しやすい。
一方で、確定申告をしないと特例が使えなかったり、住民税の請求時期を見誤って資金繰りが苦しくなったりする。
不動産売却後に慌てないために、所得税と住民税の仕組みを先に整理しておく。
不動産売却の所得税と住民税はいつ・いくらかかる?
不動産売却で課税される中心は「売却益(譲渡所得)」であり、売却代金そのものに課税されるわけではない。
税率は所有期間で大きく変わり、特例の有無で税額がゼロ近くになることもある。
税金がかかるのは売却代金ではなく利益
不動産売却の課税は、売却代金から取得費と譲渡費用などを引いた利益をもとに決まる。
利益が出ていなければ、原則として所得税も住民税も発生しない。
利益の計算の基本は、国税庁の「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」の考え方に沿う。
最初に利益を正しく計算できるかが、税額の見通しと節税の分岐点になる。
- 課税対象は譲渡所得(売却益)
- 売却代金の全額に課税されない
- 取得費と譲渡費用を控除できる
- 一定の特別控除がある
所得税と住民税はセットで動く
不動産の譲渡所得は、給与所得などと分けて計算する「分離課税」が原則である。
税額の計算では、所得税と住民税のそれぞれに税率が定められている。
さらに平成25年から令和19年までは、復興特別所得税が所得税に上乗せされる。
具体的な税率の枠組みは、国税庁の長期譲渡所得や短期譲渡所得のページで確認できる。
| 税目 | 所得税(復興特別所得税を含む) |
|---|---|
| 税目 | 住民税(市区町村・都道府県) |
| 課税方式 | 原則は分離課税 |
| 根拠確認 | 国税庁(長期譲渡所得) |
いつ払うかは確定申告と住民税通知のタイミングで決まる
不動産を売った年分の所得税は、原則として翌年の確定申告で申告し、納付する。
住民税は、確定申告の情報が市区町村に連携され、翌年度の住民税として課税される。
普通徴収の場合は年4回の納期で案内される例が多く、自治体ごとに月が異なる。
納期の具体例は自治体の案内で確認でき、たとえば和歌山市は納期カレンダーを公表している。
- 売却年の翌年に確定申告が基本
- 所得税は申告後に納付
- 住民税は翌年度に課税されやすい
- 納期は自治体の通知で確定
税率は所有期間5年超かどうかで大きく変わる
所有期間が5年を超えるかどうかは、譲渡した年の1月1日時点で判定する。
5年超は長期譲渡所得として所得税15%と住民税5%が基本になり、復興特別所得税が上乗せされる。
5年以下は短期譲渡所得として所得税30%と住民税9%が基本になり、こちらも復興特別所得税が上乗せされる。
税率の明示は国税庁の計算ページに整理されているので、必ず一次情報で確認する。
| 区分 | 長期(5年超) |
|---|---|
| 所得税 | 15%(復興特別所得税は別途) |
| 住民税 | 5% |
| 区分 | 短期(5年以下) |
| 所得税 | 30%(復興特別所得税は別途) |
| 住民税 | 9% |
| 根拠確認 | 国税庁(長期の税額計算) |
| 根拠確認 | 国税庁(短期の税額計算) |
特例の有無で税額がゼロに近づくこともある
マイホームを売ったときは、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例がある。
控除後の課税譲渡所得がゼロ以下になれば、所得税と住民税は発生しない。
ただし、適用要件や適用除外があり、確定申告をしなければ特例は使えない。
代表的な特例の要件は国税庁の「マイホームを売ったときの特例」にまとまっている。
- 3,000万円特別控除は確定申告が必要
- 親子や夫婦などへの売却は対象外になり得る
- 過去の適用状況で制限がある
- 要件確認は一次情報で行う
譲渡所得の計算で税額が決まる
所得税と住民税の前に、まず課税対象となる譲渡所得を正しく出す必要がある。
取得費や譲渡費用の集計次第で利益が大きく変わり、税額が数十万円単位で動くこともある。
基本式は「売却代金−(取得費+譲渡費用)−特別控除」
譲渡所得は、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いて計算する。
さらに特別控除がある場合は、利益から控除して課税所得を下げる。
建物は減価償却の考慮が必要で、取得費が購入額そのままにならない点に注意する。
計算の全体像は国税庁の「譲渡所得の計算のしかた(分離課税)」が基準になる。
| 計算の流れ | 売却代金から取得費と譲渡費用を控除 |
|---|---|
| 特別控除 | 要件を満たす場合に利益から控除 |
| 建物の取得費 | 減価償却費相当額を差し引く |
| 根拠確認 | 国税庁(譲渡所得の計算) |
取得費は購入代金だけではなく幅広い
取得費には、購入代金や建築代金に加えて、購入手数料や設備費、改良費などが含まれる。
購入時の登記費用や一定の税金が含まれるケースもあり、領収書や契約書の確認が重要になる。
特にリフォームは「価値を高める改良」に該当するかで扱いが分かれるため、整理しておく。
取得費の考え方は国税庁の「取得費となるもの」で確認できる。
- 購入代金・建築代金
- 購入手数料
- 設備費・改良費
- 建物は減価償却を控除
取得費が分からないときは概算取得費の選択肢がある
古い不動産で契約書が見当たらないときは、取得費が不明になることがある。
取得費が分からない場合や実額が小さい場合は、譲渡価額の5%を概算取得費とできる。
ただし、概算取得費を使うと利益が増えやすく、税額が増えることがある。
実額の取得費が分かるなら、資料を集めたほうが有利になりやすい。
| 選択肢 | 実額の取得費 |
|---|---|
| 選択肢 | 概算取得費(譲渡価額の5%) |
| 注意点 | 概算は税額が増えやすい場合がある |
| 根拠確認 | 国税庁(取得費が分からないとき) |
譲渡費用は売るために直接かかった費用
譲渡費用は、売るために直接かかった費用であり、維持管理の費用は含まれない。
仲介手数料や測量費、売買契約書の印紙代などは典型例として挙げられている。
借家人の立退料や取り壊し費用なども、ケースによっては譲渡費用に含まれる。
具体例は国税庁の「譲渡費用となるもの」で確認できる。
- 仲介手数料
- 測量費
- 売買契約書の印紙代
- 売却に必要な立退料や取壊し費用
税率は所有期間で大きく変わる
不動産売却の税率は、所有期間の長短で大きく分かれる。
同じ利益でも、短期か長期かで税額差が大きくなるため、判定日を正確に押さえる。
所有期間の判定は「売った年の1月1日」
所有期間は、売った日ではなく、売った年の1月1日時点で5年を超えるかで判定する。
年末年始を挟むだけで区分が変わるケースがあり、税率が大きく変わり得る。
契約日と引渡日が異なる場合もあるので、譲渡した年の扱いも確認する。
区分と税率の枠組みは国税庁の長期・短期の税額計算ページが基準になる。
- 判定基準日は譲渡年の1月1日
- 5年超なら長期譲渡
- 5年以下なら短期譲渡
- 判断に迷うときは一次情報を確認
長期譲渡は所得税15%と住民税5%が基本
長期譲渡所得の税額は、課税長期譲渡所得金額に所得税15%と住民税5%を掛けて計算する。
さらに平成25年から令和19年までは、基準所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が上乗せされる。
結果として、所得税部分は15.315%相当になり、住民税と合わせた目安は20.315%になる。
計算例も国税庁ページに載っているので、数字の感覚を合わせやすい。
| 所得税 | 15%(復興特別所得税は別途) |
|---|---|
| 住民税 | 5% |
| 復興特別所得税 | 基準所得税額×2.1% |
| 根拠確認 | 国税庁(長期譲渡所得の税額) |
短期譲渡は所得税30%と住民税9%が基本
短期譲渡所得の税額は、課税短期譲渡所得金額に所得税30%と住民税9%を掛けて計算する。
短期も平成25年から令和19年までは復興特別所得税が上乗せされる。
結果として、所得税部分は30.63%相当になり、住民税と合わせた目安は39.63%になる。
短期の税率はインパクトが大きいので、売却時期と所有期間の扱いを丁寧に確認する。
- 所得税は30%が基本
- 住民税は9%が基本
- 復興特別所得税が上乗せ
- 長期と比べて税率差が大きい
マイホームで10年超なら軽減税率の可能性がある
一定の要件を満たすマイホームで、所有期間が10年を超える場合は軽減税率の特例がある。
課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下の部分は所得税10%、住民税4%に軽減される。
6,000万円を超える部分は通常に近い扱いになり、国税庁の税率表で整理されている。
軽減税率は3,000万円特別控除と併用できることがあるため、順番も含めて確認する。
| 6,000万円以下の部分 | 所得税10% |
|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 住民税4% |
| 6,000万円超の部分 | 所得税15%相当の計算式 |
| 6,000万円超の部分 | 住民税5% |
| 根拠確認 | 国税庁(軽減税率の特例) |
特例を使うと課税所得を大きく減らせる
不動産売却の税負担は、特例を使えるかどうかで劇的に変わる。
特例は要件が細かく、適用できる前提を確認してから売却計画に落とし込むのが現実的である。
3,000万円特別控除は最優先で検討する
マイホームを売った場合は、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例がある。
所有期間の長短に関係なく使えるため、税率より前に大きく影響する。
一方で、住まなくなってからの期限や、親族などへの売却が対象外になる点など要件がある。
要件と手続きは国税庁のページに明記されているので、売却前に照合する。
- 控除額は最高3,000万円
- 所有期間に左右されにくい
- 要件と適用除外がある
- 確定申告が必須
特別控除は種類が複数あり順番も決まっている
譲渡所得の特別控除は、マイホーム以外にも複数の制度がある。
たとえば公共事業のための譲渡や、低未利用土地等の譲渡などが対象となる場合がある。
特別控除の合計には上限があることや、控除の順番が定められている点も重要である。
どの特別控除に該当するかは国税庁の一覧で確認できる。
| 代表例 | マイホームの3,000万円特別控除 |
|---|---|
| 代表例 | 公共事業等の5,000万円特別控除 |
| 注意点 | 特別控除の合計に上限がある |
| 根拠確認 | 国税庁(特別控除の種類) |
軽減税率は「控除後の課税所得」に適用される
10年超所有のマイホームの軽減税率は、課税長期譲渡所得金額に対して適用される。
課税長期譲渡所得金額は、売却代金から取得費と譲渡費用を引き、さらに特別控除を差し引いた金額である。
つまり、3,000万円特別控除で課税所得を下げたうえで、軽減税率の対象になる場合がある。
税率表と課税所得の定義は国税庁の軽減税率ページに整理されている。
- 軽減税率は10年超の居住用財産が中心
- 適用対象は課税長期譲渡所得金額
- 特別控除との併用可否を確認
- 税率の境目は6,000万円
売却損が出たときは損益通算や繰越控除の可能性がある
マイホームの売却で損失が出た場合でも、一定の要件を満たせば税負担を軽減できることがある。
買換えをした場合の譲渡損失は、給与所得など他の所得と損益通算できる制度がある。
また、損益通算しても控除しきれない損失は、翌年以後3年内に繰り越して控除できることがある。
制度の概要と期限は国税庁の該当ページで確認できる。
| 制度 | 譲渡損失の損益通算 |
|---|---|
| 制度 | 損益通算後の繰越控除(最長3年) |
| 対象例 | 買換えをしたマイホームの売却損 |
| 根拠確認 | 国税庁(買換え時の譲渡損失) |
住民税の請求タイミングと納付方法を押さえる
不動産売却後は所得税だけでなく、住民税の請求タイミングも資金繰りに影響する。
自治体の通知方法や徴収方法によって家計への出方が変わるため、先に理解しておく。
住民税は自治体から届く通知で納付する
住民税は市区町村や都道府県に納める地方税であり、納税通知書などで納付する。
普通徴収では年4回で納める例があり、月は自治体により差がある。
たとえば和歌山市は、市県民税の普通徴収分の納期限を年度カレンダーで示している。
実際の納期は居住地の自治体の案内を優先して確認する。
- 住民税は自治体が課税決定する
- 普通徴収は年4回が一般的な形
- 納期の月は自治体ごとに異なる
- 通知書が届いたら資金を確保する
普通徴収と特別徴収で家計への影響が変わる
住民税の納め方には、納税者が納付書で納める普通徴収と、給与から天引きされる特別徴収がある。
特別徴収は年12回で給与から差し引かれるため、毎月の手取りが変動しやすい。
普通徴収はまとまった額になりやすく、売却益が大きいと納付月の負担が大きくなる。
制度の説明は自治体のFAQなどにまとめられている。
| 普通徴収 | 納付書で年4回など |
|---|---|
| 特別徴収 | 給与から年12回の天引き |
| 確認先 | 港区(普通徴収と特別徴収) |
| 確認先 | 和歌山市(市税の納期) |
売却益が大きい年は住民税の支払い月が重くなりやすい
住民税は前年の所得をもとに計算され、翌年度に課税される仕組みである。
そのため売却益が出た年の翌年度は、住民税が増える形で家計に出やすい。
給与がある人は特別徴収で毎月増えることがあり、個人事業主は普通徴収の納付書が増えることがある。
納付月の資金繰りを崩さないよう、概算の税額を先に見積もることが重要になる。
- 売却益の翌年度に住民税が増えやすい
- 特別徴収は毎月の手取りに出る
- 普通徴収は納付月の負担が大きい
- 納付月を見込んで資金を確保する
確定申告の内容が住民税に反映される
不動産売却の譲渡所得は、確定申告で申告してはじめて税額が確定する。
特例を使う場合も、確定申告で要件を満たすことを示す書類を添付する必要がある。
確定申告の結果は自治体の課税に連携されるため、申告漏れは後からの負担増につながる。
申告書類の作成は、国税庁の確定申告書等作成コーナーの案内も参考になる。
| 必要手続き | 原則として確定申告 |
|---|---|
| 特例適用 | 書類添付が必要な場合がある |
| 参照 | 国税庁(マイホーム特例と手続き) |
| 参照 | 確定申告書等作成コーナー |
確定申告でつまずかないための準備
不動産売却の税金は、確定申告で利益計算と特例適用を正しく行えるかで結果が決まる。
売却後に書類を集めると漏れが出やすいので、売却前から準備を始める。
契約書と領収書を時系列で揃える
取得費の裏付けとして売買契約書や建築請負契約書が重要になる。
仲介手数料や測量費などの譲渡費用は領収書がないと説明が難しくなる。
購入時と売却時で書類の発行元が異なるため、時系列でフォルダ分けすると整理しやすい。
取得費と譲渡費用の範囲は国税庁の各ページで確認できる。
- 購入時の契約書
- 購入手数料や登記費用の記録
- 売却時の仲介手数料の領収書
- 測量費や印紙代などの記録
譲渡所得の内訳書の作成を前提に情報を集める
不動産売却の申告では、譲渡所得の内訳書を作成して添付するのが基本になる。
土地と建物の内訳、取得費、譲渡費用、特別控除などを整理して記入する。
マイホーム特例では住民票など追加書類が必要になる場合がある。
必要書類の案内は国税庁の特例ページに記載されている。
| 代表的な添付 | 譲渡所得の内訳書(土地・建物用) |
|---|---|
| 特例で追加 | 住民票と所在地が異なる場合の疎明資料など |
| 確認先 | 国税庁(提出書類の案内) |
特例の要件は売却前にチェックする
特例は「売った後に考える」だと要件を満たさないことに気づくケースがある。
たとえばマイホーム特例は、住まなくなってからの期限や、親族への売却などで適用除外がある。
軽減税率の特例は10年超所有など条件があり、所有期間判定も絡む。
売却前に一度、国税庁の要件を読んで該当性を確認しておく。
- 居住実態の確認
- 住まなくなった日からの期限確認
- 売却相手が親族等でないか確認
- 過去の特例適用歴の確認
迷う点は税務署や税理士に早めに相談する
取得費の判断や特例の要件は、事案によって結論が変わることがある。
とくに相続や共有名義、貸していた物件などは論点が増えやすい。
国税の相談窓口や税理士への相談を使うことで、申告ミスのリスクを下げられる。
相談先の案内は国税庁サイトにも掲載されている。
| 相談先 | 税務署・電話相談センター |
|---|---|
| 相談先 | 税理士 |
| 参照 | 国税庁(問い合わせ先の案内) |
税金の全体像を押さえて手取りを守る
不動産売却で支払う所得税と住民税は、売却益の有無と利益計算の精度で大きく変わる。
所有期間が5年を超えるかどうかで税率が変わり、短期だと負担が重くなりやすい。
マイホームなら3,000万円特別控除や軽減税率などで課税所得を圧縮できる可能性がある。
特例は確定申告が前提であり、申告しないと節税の権利を失うことがある。
住民税は翌年度に請求されやすいので、売却年の翌年から納付月まで資金を確保しておく。
取得費と譲渡費用の資料を集め、概算取得費に頼らずに済む状態を作ることが結果的に有利になりやすい。
要件判断に迷う論点があるなら、売却前に一次情報を確認し、必要なら相談してから進める。
この流れを押さえれば、不動産売却後に税金で手取りが想定より減る事態を避けやすくなる。

