マンションを売るときに混乱しやすいのが、販売価格と売却価格のズレです。
ポータルサイトに出ている金額がそのまま入金されるわけではなく、交渉と市場の需給で最終価格が動きます。
ズレの仕組みを知らないまま売り出すと、売れ残りや値下げの連鎖で「結局いくらで売れたのか」が読めなくなります。
本記事は、販売価格が作られる流れと、売却価格を現実的に予測する調べ方を、実務目線で整理します。
マンションの販売価格と売却価格の差はどこで決まる
販売価格は「売り出しで提示する価格」で、売却価格は「契約して確定した成約価格」です。
差を生む主因は、買主の比較行動と値引き交渉、そして同エリアの直近成約の相場感です。
成約価格の一次データとしては、国土交通省の不動産情報ライブラリで取引価格・成約価格情報を確認できます。
販売価格は売主の戦略で決まる
販売価格は、売主が「どの価格で市場に出すか」を決めるスタート地点です。
相場より高く出す戦略もありますが、反響が弱いと値下げが前提になります。
- 売り出しの提示価格
- 反響を見て調整する前提がある
- 広告・検索サイトに表示される
売却価格は交渉の結果として確定する
売却価格は、申込みと条件調整がまとまって売買契約を結んだ価格です。
同じ物件でも、買主の資金力やローン審査、引渡し時期の希望で条件が変わります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 売却価格 | 契約で確定した成約価格 |
| 販売価格 | 売り出しで提示する価格 |
| 指値 | 買主が希望する購入価格 |
差が生まれる典型は「比較」と「心理の壁」
買主は同時期に複数物件を比較し、似た条件の中で「割安」に見えるものに集中します。
また、3,980万円のような端数価格は心理的に受け入れられやすく、販売価格の付け方でも差が出ます。
- 周辺の類似物件との比較
- 住宅ローンの月額イメージ
- 端数価格の心理効果
乖離率は市場で揺れる
売り出しと成約の乖離は、市況が強いと縮み、在庫が増えると広がりやすい傾向です。
首都圏の中古住宅市場では、成約㎡単価や需給の変化がレポートで継続的に公表されています。
直近の傾向確認には、指定流通機構が出す市況レポートも参考になります。
| 確認先 | 見られる内容 |
|---|---|
| 不動産情報ライブラリ | 取引価格・成約価格情報の検索 |
| REINSの市況レポート | 成約件数・㎡単価などの推移 |
| 不動産会社の査定 | 物件固有の調整要因の反映 |
値引き交渉が入るポイントを先に読む
内覧後の申込みで、買主は価格だけでなく引渡し時期や付帯設備も含めて交渉します。
価格だけで勝負せず、条件面で譲れる余地を作ると、売却価格を守りやすくなります。
- 引渡し時期を柔軟にする
- 設備の扱いを明確にする
- 修繕履歴を提示する
住宅ローン残債があると「売れる価格」の下限ができる
抵当権を抹消するには、原則として残債を完済する資金計画が必要です。
そのため、残債と諸費用を上回る売却価格が現実的な下限になり、販売価格の設計にも影響します。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 残債 | ローンの未返済額 |
| 諸費用 | 仲介手数料・印紙税など |
| 下限価格 | 完済と費用を賄う目安 |
最短で迷いを減らす判断軸
差を最小化するコツは「成約相場に寄せた販売価格」か「期間を取って上振れを狙う販売価格」かを決めることです。
目的が決まると、値下げのタイミングや交渉の優先順位がブレにくくなります。
- 早期売却を優先する
- 価格重視で時間を取る
- 住み替え期限から逆算する
販売価格はどう作ると失敗しにくいか
販売価格は「相場」ではなく「戦略価格」なので、根拠と想定シナリオが必要です。
相場の把握はデータで行い、最終的な価格は売却期限と物件の強みで調整します。
査定は1社だけで決めない
査定価格は会社ごとに根拠の置き方が違い、強気な査定が必ずしも高値成約を意味しません。
複数社の査定で、成約事例の出し方と値下げ想定の説明が具体的かを比較します。
- 成約事例の提示がある
- 販売期間の見立てがある
- 値下げの条件が説明される
「相場」は成約データで補正する
売り出し事例だけを見ていると、高い価格が並びやすく、実際の売却価格とズレます。
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、取引価格・成約価格情報を検索できるため、直近の成約帯を掴むのに役立ちます。
参照先は不動産情報ライブラリ(不動産価格情報)です。
| データ | 強み | 注意 |
|---|---|---|
| 成約価格情報 | 実際に成立した価格 | 反映にタイムラグがある |
| 売出価格 | 市場の提示水準 | 成約ではない |
| 査定価格 | 物件固有の調整 | 会社で差が出る |
売却期限で販売価格の幅を決める
期限が短いなら、初動で反響を最大化できる価格帯に寄せる方が安全です。
期限に余裕があるなら、上限寄りで開始し、反響が弱い場合の下げ幅を先に決めます。
- 期限が短いほど相場寄り
- 期限が長いほど試す余地
- 下げ幅を先に決める
見せ方で「同じ価格でも選ばれ方」が変わる
購入検討は比較なので、写真、管理状況、資料の整備が弱いと値引き材料になります。
販売価格を守るために、価格以外の不安要素を先に潰す発想が重要です。
| 整備項目 | 効き方 |
|---|---|
| 管理規約・重要事項 | 検討の安心材料 |
| 修繕履歴 | 価格交渉の抑制 |
| 写真と内覧導線 | 反響の増加 |
売却価格の相場を調べる具体的な手順
売却価格を読むには、成約データと市場の動きの両方を見るのが近道です。
1つの情報源に寄せず、データの性質が違うものを重ねると、ズレの原因が見えます。
国のデータで成約帯を掴む
まずは成約のレンジを知り、上限と下限を現実的に設定します。
不動産情報ライブラリは国土交通省のサイトで、取引価格・成約価格情報を検索できます。
参照先は不動産情報ライブラリです。
- エリアを絞る
- 築年と面積帯を合わせる
- 直近の期間で見る
REINSの取引価格情報で比較を補強する
指定流通機構が運営する取引価格情報のサイトも、成約に近い情報を得る手段になります。
地域や物件種別によって見られる範囲は異なるため、併用して精度を上げます。
参照先は不動産取引情報提供サイト(REINS)です。
| 観点 | 見るポイント |
|---|---|
| 築年 | 同年代で比較する |
| 面積 | 近い専有面積帯に寄せる |
| 駅距離 | 徒歩分数で補正する |
市況の波はレポートで確認する
相場は固定ではなく、金利、供給、買い替え需要で揺れます。
指定流通機構の市況レポートでは、成約件数や㎡単価などが四半期ごとにまとまります。
たとえば首都圏の中古住宅市場の概況はPDFで公表されています。
参照先は首都圏 中古住宅市場の概況(2025年7~9月期)です。
- 成約件数の増減
- 成約㎡単価の推移
- 在庫の積み上がり
売却価格の予測は「レンジ」で持つ
売却価格は一点で当てにいくより、上限と下限の幅で管理した方が意思決定が速くなります。
下限は資金計画、上限は成約相場と反響で現実的に決めるのが基本です。
| レンジ | 決め方 |
|---|---|
| 下限 | 残債+諸費用+最低手取り |
| 中心 | 直近成約の中央値付近 |
| 上限 | 強みが刺さる場合の到達点 |
売却価格を上げたいときの実務ポイント
売却価格を上げる本質は、買主の不安を減らし、比較で優位に立つことです。
値上げの魔法はありませんが、準備の質が交渉の強さに直結します。
内覧の前に「懸念の芽」を潰す
買主が気にするのは、修繕、管理、将来の負担が読めるかどうかです。
説明が曖昧だと値引きに直結するので、資料を整えて先回りします。
- 修繕積立金の推移
- 管理費と管理形態
- 大規模修繕の履歴
リフォームは費用対効果で判断する
売却前の工事は、見栄えが上がっても回収できないことがあります。
設備交換より、清掃や部分補修のように費用が軽く印象が良くなる施策が向きます。
| 施策 | 狙い | 注意 |
|---|---|---|
| ハウスクリーニング | 第一印象の改善 | 範囲を決める |
| 部分補修 | 劣化の不安を減らす | 過剰投資を避ける |
| 全面リフォーム | 付加価値の創出 | 回収困難な場合がある |
値引き交渉に備えて「譲れる条件」を用意する
価格だけで押し返すと決裂しやすいので、条件面のカードを持つと強いです。
たとえば引渡し時期や付帯設備、手直し範囲の合意で、価格を守る余地が生まれます。
- 引渡し日を調整する
- 設備の残置を相談する
- 軽微な手直しで納得を取る
売却活動は「初動の反響」で修正する
反響が弱い場合は、物件の魅力の見せ方か販売価格が市場に合っていない可能性があります。
問い合わせ数と内覧数が出ているかで切り分けると、打ち手が明確になります。
| 状況 | 見直し候補 |
|---|---|
| 問い合わせが少ない | 販売価格・写真・掲載文 |
| 内覧後に申込みがない | 室内状態・資料・条件 |
| 申込みはあるが伸びない | 交渉条件・引渡し時期 |
売却で手取りを左右する費用と税金
売却価格が高くても、費用と税金で手取りは変わります。
販売価格の設計段階で、上限だけでなく手取りの見込みも同時に押さえるのが安全です。
仲介手数料は上限計算を理解する
売買の仲介手数料は、取引価格に応じて上限が定められています。
国土交通省の案内ページでも、仲介手数料の考え方が示されています。
参照先は国土交通省の不動産取引に関する案内です。
| 売買価格の区分 | 上限の考え方 |
|---|---|
| 200万円以下 | 5%相当+税 |
| 200万円超~400万円以下 | 4%相当+税 |
| 400万円超 | 3%相当+6万円+税 |
印紙税は契約書の金額で決まる
売買契約書には印紙税がかかり、契約金額の区分で税額が変わります。
軽減措置の対象期間もあるため、作成時期と金額帯を必ず確認します。
参照先は国税庁の印紙税額一覧表です。
- 契約金額で税額が変動
- 軽減措置の期間がある
- 契約書を作成する側で負担が発生
譲渡所得税は「利益」に課税される
税金がかかるのは売却価格そのものではなく、取得費と譲渡費用を差し引いた利益部分です。
居住用のマイホームには、要件を満たすと3,000万円特別控除が使える特例があります。
参照先は国税庁No.3302 マイホームを売ったときの特例です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 譲渡所得 | 譲渡価額-(取得費+譲渡費用) |
| 特別控除 | 一定要件で最高3,000万円 |
| 確定申告 | 特例適用でも原則必要 |
手取り計算は「見落とし項目」を先に埋める
売却価格から仲介手数料だけを引いて安心すると、測量や抵当権抹消、引越し費用などが後から効いてきます。
細目を先に洗い出し、資金ショートのリスクを潰してから販売価格を決めます。
- 抵当権抹消の費用
- 引越しと仮住まい
- 修繕・クリーニング
差を味方にして納得の価格に近づけるために
販売価格はスタートの宣言で、売却価格は市場の合意として確定します。
まずは成約データで現実のレンジを掴み、期限と目的で販売価格の戦略を決めるのが王道です。
国のデータは不動産情報ライブラリで確認し、動きは市況レポートで補強します。
売却価格を守るには、価格の議論に入る前に資料と室内状態を整え、比較で不安を減らすことが効きます。
最後に、諸費用と税金を織り込んだ手取りを先に出し、値下げのラインを決めておくと判断が早くなります。
販売価格と売却価格のズレは失敗のサインではなく、設計してコントロールできる変数だと捉えるのがコツです。
次の一手は、複数社査定で根拠を比較し、成約データと突き合わせて「自分の物件の価格帯」を言語化することです。

