親の不動産を売却したときの税金は誰がいくら払う?|特例と申告の要点がつかめる!

木製ベンチと観葉植物があるシンプルなダイニングスペース
税金

親の不動産を売却するときの税金は、売却価格そのものではなく「利益(譲渡所得)」に対してかかるのが基本です。

ただし、親が売主なのか、相続後に子が売主になるのか、共有名義なのかで、納税者や使える特例が変わります。

このページでは、国税庁の一次情報を根拠に、計算の仕組みと節税の勘所、確定申告で迷いやすい点を整理します。

親の不動産を売却したときの税金は誰がいくら払う?

白いアイランドキッチンと木製ダイニングテーブルがあるモダンなLDK

税金の中心は譲渡所得にかかる所得税と住民税で、利益が出た人(原則は名義人)が申告して納付します。

まずは「課税される条件」「税率」「利益の計算式」「親が売るのか相続後に売るのか」を押さえると全体像が見えます。

税金がかかるのは「譲渡所得」がプラスのとき

親の不動産の売却で税金が発生するかどうかは、売却代金ではなく譲渡所得が残るかで決まります。

譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用などを差し引いて計算するのが原則です。

  • 売却代金が高くても、取得費や経費が大きければ課税が小さくなる
  • 利益がゼロ以下なら、譲渡所得税は原則として発生しない
  • 特例を使うと課税対象がさらに圧縮される場合がある

長期か短期かで税率が大きく変わる

土地や建物の譲渡所得は分離課税で、所有期間の区分により税率が変わります。

国税庁の案内では、長期譲渡所得は課税長期譲渡所得金額×15%、短期譲渡所得は課税短期譲渡所得金額×30%が所得税の基本計算として示されています。

また、復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加算される期間がある点にも注意が必要です。

区分 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年超かどうかで判定
所得税の基本税率 長期:15%/短期:30%(復興特別所得税は別途)
主な根拠 国税庁 No.1440国税庁 No.3208国税庁 No.3211

譲渡所得の計算式を知れば、概算でも見積もれる

譲渡所得は「譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」で計算するのが基本です。

取得費が分からない場合などは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)として扱えると国税庁が示しています。

建物部分は減価償却費相当額を差し引くため、思ったより取得費が小さくなることがあります。

譲渡価額 売買代金などの収入金額
取得費 購入代金・購入手数料・改良費等(建物は減価償却控除後)
譲渡費用 仲介手数料・測量費・印紙代など売るために直接かかった費用
概算取得費 取得費不明などの場合、譲渡価額の5%を取得費にできる
根拠 国税庁 No.3202

納税者は「誰が売主か」で決まる

税金を払う人は、原則として不動産を譲渡した人です。

親の名義のまま親が売主なら親が申告し、相続で子が取得して子が売主なら子が申告します。

共有名義なら持分に応じて各人が計算・申告する扱いが国税庁で整理されています。

  • 親が生存中に売る:親が納税者になりやすい
  • 相続後に売る:相続人(子など)が納税者になりやすい
  • 共有名義:持分割合で各人が申告(特例も原則は各人ごと)
  • 参考:国税庁 No.3308

親が住んでいた家を売るときに使える特例

壁掛けテレビと観葉植物がある明るいリビングインテリア

親の不動産が「親の自宅」だったか、「相続した空き家」なのかで、使える代表的な特例が変わります。

特例は要件が細かく、同じ売却でも適用可否で税額が大きく変わるため、先に候補を洗い出すのが近道です。

マイホームの3,000万円特別控除は強力

居住用財産(マイホーム)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。

親が自宅として使っていた家を親自身が売るなら、この特例が検討対象になりやすいです。

一方で、親子や夫婦など特別の関係がある人への売却では適用できないなどの注意点があります。

特例名 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
主な効果 譲渡所得から最高3,000万円を控除
ポイント 所有期間に関係なく検討対象になり得る
注意点 親子・夫婦など特別関係者への売却は原則対象外
根拠 国税庁 No.3302

10年超の居住用財産なら軽減税率も検討できる

一定の要件を満たすと、居住用財産の長期譲渡所得に軽減税率を適用できる特例があります。

国税庁では、3,000万円特別控除と軽減税率の特例は重ねて受けられる旨も示されています。

「親が長く住んでいた家を売る」ケースでは、所有期間と居住実態の整理が重要です。

特例名 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
主な効果 一定範囲の長期譲渡所得に軽減税率を適用
併用 3,000万円特別控除と重ねて適用できる場合がある
根拠 国税庁 No.3305

相続した空き家を売るなら「相続空き家特例」が候補

親が亡くなり、被相続人の居住用財産(空き家)を相続して売る場合に、要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例があります。

国税庁では、適用期間や、相続人が3人以上の場合に控除上限が2,000万円になるなどの注意点も明記されています。

「親の家を相続して売却」という検索意図では、この特例の適用可否が税額の分岐点になりやすいです。

特例名 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
主な効果 譲渡所得から最高3,000万円を控除(条件あり)
注意点 相続人が3人以上などで控除上限が変わる場合がある
根拠 国税庁 No.3306

特例が使えない典型パターンを先に潰す

特例は「使える前提」で進めると、最後に要件でつまずきやすいです。

売却相手、居住実態、他の特例との関係など、落とし穴になりやすい論点を先にチェックします。

  • 親子や夫婦など特別関係者に売るため特例対象外になる
  • 居住用としての実態や期間要件を満たさない
  • 他の制度との併用不可に該当する
  • 売却前後の使い方が要件に抵触する

税金を左右する3つの数字を先に押さえる

木目テーブルとブルーキャビネットが映える北欧モダンなキッチン空間

親の不動産売却の税額は、税率よりも「取得費」「譲渡費用」「特別控除」の整理で大きく動きます。

見落としやすい項目を先に拾っておくと、譲渡所得を過大に見積もる失敗が減ります。

取得費が不明なら概算取得費5%が使える場合がある

古い不動産ほど、購入時の契約書や領収書が見当たらず、取得費が分からないことがあります。

国税庁は、取得費が分からない場合などに譲渡価額の5%を取得費として扱える旨を示しています。

ただし、実際の取得費が分かるなら、そちらを積み上げた方が有利になるケースもあります。

よくある悩み 購入時の売買契約書がない
対応 譲渡価額の5%を取得費にできる場合がある
有利不利 実額取得費が大きいなら実額の方が有利になりやすい
根拠 国税庁 No.3202

建物の取得費は減価償却で目減りする

土地は減価しませんが、建物は時間経過で価値が減る資産として扱われます。

国税庁は、建物の取得費は所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算する旨を示しています。

親が長年所有していた家ほど、建物部分の取得費が小さくなり、譲渡所得が増えやすい点に注意が必要です。

  • 土地と建物を分けて考える
  • 建物の取得費は減価償却控除後の金額になる
  • 古い建物は取得費が圧縮されやすい
  • 根拠:国税庁 No.3202

譲渡費用は「売るために直接かかった費用」が中心

譲渡費用は、売るために直接かかった費用に限られるのが基本です。

国税庁は、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、立退料、取壊し費用などを譲渡費用の例として挙げています。

一方で、引っ越し代など「生活の費用」に寄った支出は扱いが分かれやすいため、領収書の整理と区分が重要です。

譲渡費用になりやすい例 仲介手数料、測量費、印紙代、取壊し費用
整理のコツ 売却に直接必要だった支出かで判定する
根拠 国税庁 No.3202

ケース別:親の不動産を売るときの手続きと注意点

グレーソファと小さなテレビが置かれたシンプルなファミリーリビング

同じ「親の不動産の売却」でも、誰が契約当事者になるか、売却の前提が相続なのかで、準備すべき書類や税務の論点が変わります。

税金だけでなく、売却が進まない原因になりやすい実務面も含めて整理します。

親が売主で、子が手続きを代行する場合の基本

親が判断能力を保っていて名義も親のままなら、税務上は親が売主として譲渡所得を申告する形になりやすいです。

子が実務を担うなら、仲介会社や買主に求められる委任状や本人確認の準備が重要です。

売却代金の受け取り口座や費用負担の整理が曖昧だと、後から親族間トラブルに発展しやすくなります。

  • 契約当事者:原則は名義人である親
  • 実務:子が同席し、資料収集や連絡窓口を担う
  • 書面:委任状や本人確認書類の準備が必要になることがある
  • 資金:入出金の流れを見える化しておく

相続前に売るか、相続後に売るかで論点が変わる

親が生存中に売る場合は、親の譲渡所得として計算されるのが基本線です。

相続後に子が売る場合は、相続で取得した不動産の譲渡として、相続空き家特例など別の特例が候補になります。

どちらが有利かは、親の居住要件、所有期間、取得費資料の有無、相続人の人数などで変わります。

売るタイミング 主な納税者のイメージ
相続前(親が売主) 親が譲渡所得を申告し、居住用の3,000万円控除等が候補
相続後(子が売主) 相続人が譲渡所得を申告し、相続空き家特例等が候補
根拠 国税庁 No.3302国税庁 No.3306

遺産分割が終わっていないまま売るときの申告イメージ

相続後すぐに売却を進めたい一方で、遺産分割協議がまとまらないことがあります。

国税庁の質疑応答事例では、未分割遺産を換価した場合の譲渡所得は、換価時点の所有割合として法定相続分により申告する考え方が示されています。

実務上は、売買の進め方と相続人間の合意形成を同時に進める必要があるため、専門家の関与が有効になりやすいです。

状況 遺産分割前に不動産を売却して現金化する
申告の考え方 換価時点の所有割合(法定相続分)で申告する整理が示されている
根拠 国税庁 質疑応答事例(未分割遺産の換価)

共有名義は持分ごとに税金と特例を判定する

親と子、または夫婦などで共有名義になっている不動産は、持分ごとに譲渡所得を計算します。

国税庁は、共有のマイホームを売った場合は持分に応じて計算し、3,000万円特別控除も共有者一人につき最高3,000万円である旨を示しています。

持分の整理を誤ると、申告漏れや特例適用ミスにつながりやすいため、登記事項と実態の確認が必須です。

  • 計算単位は共有者ごとになる
  • 特例は共有者全員で3,000万円ではなく、対象者ごとに判定される
  • 確定申告書は共有者それぞれが提出する扱いになる
  • 根拠:国税庁 No.3308

確定申告で迷いやすいポイント

テレビとソファがある落ち着いた北欧風のシンプルなリビング

親の不動産売却は、特例の有無にかかわらず確定申告が必要になる場面が多いです。

特に、特例を使って税額がゼロになる場合でも、申告しないと特例が反映されないことがあるため、手続きの設計が重要です。

申告が必要なケースと、判断が割れるケース

譲渡所得が出た場合は、原則として譲渡所得として申告する流れになります。

特例を使うことで課税譲渡所得がゼロになり得る場合でも、特例適用のために申告が必要になることがあります。

売却した年の所得全体の状況や、他の控除との関係も含めて整理します。

  • 利益が出た:原則として申告対象になりやすい
  • 特例を使う:申告して特例適用を受ける必要が出やすい
  • 共有名義:共有者ごとに申告が必要になりやすい
  • 参考:譲渡所得の基本整理は国税庁 No.3202

必要書類を集める順番で、手戻りが減る

譲渡所得の計算は、取得費と譲渡費用の根拠資料が揃うほど精度が上がります。

親の不動産は古い資料が散逸しやすいため、先に「無いときの代替策」まで含めて収集計画を作るのが現実的です。

特例を使う場合は、要件を満たす事実関係を示す資料も必要になりやすいです。

売却関係 売買契約書、仲介手数料の領収書、印紙税の記録
取得関係 購入時契約書、登記費用、リフォーム資料(あれば)
取得費が不明 概算取得費5%の検討(国税庁 No.3202
特例関係 居住実態や相続関係を示す資料の準備

3,000万円控除と軽減税率は併用できる場合がある

居住用財産を売ったときの制度は複数あり、併用可否が分かりにくいところです。

国税庁は、居住用財産の3,000万円特別控除と軽減税率の特例は重ねて受けられる旨を示しています。

どの制度を使うかで必要書類や計算手順が変わるため、売却前に候補を決めておくと申告がスムーズです。

  • 3,000万円特別控除が先に効いて課税所得が圧縮される
  • 残った長期譲渡所得に軽減税率を当てられる場合がある
  • 併用要件や除外要件の確認が必須になる
  • 根拠:国税庁 No.3305

税理士に相談した方がいい境界線

親の不動産売却は、金額が大きく、名義や相続が絡むと論点が一気に増えます。

特例の適用判定や共有・未分割の取り扱いは、判断を誤ると税額だけでなく加算税リスクにもつながり得ます。

次の条件に当てはまるなら、申告前に専門家へ相談する選択肢が現実的です。

相談推奨の目安 相続人が複数で未分割、共有名義、特例を複数検討、取得費資料が乏しい
特に注意 相続空き家特例の要件確認(国税庁 No.3306
参考論点 未分割換価の考え方(国税庁 質疑応答事例

親の不動産売却の税金で損しないための進め方

壁掛けテレビと観葉植物がある明るいリビングインテリア

親の不動産売却の税金は、まず誰が売主になるのかを確定し、譲渡所得の計算式に沿って取得費と譲渡費用を整理することが出発点です。

親の自宅なら3,000万円特別控除や軽減税率、相続後の空き家なら相続空き家特例といった候補を早めに洗い出すと、節税の取りこぼしが減ります。

取得費が不明な場合の概算取得費5%や、共有・未分割の取り扱いなど、国税庁の一次情報に沿って判断軸を置くことが重要です。

特例で税額がゼロになり得る場合でも申告が必要になる場面があるため、資料収集と申告準備は売却前から逆算して進めるのが安全です。

名義や相続関係が複雑なときは、要件判定と申告リスクを最小化するために、税理士など専門家の関与を早めに検討するのが現実的です。