相続したマンションを売却する流れ|相続登記と税金でムダを減らすには?

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相続

相続でマンションを引き継いだときは、気持ちの整理より先に手続きの順番を整理すると迷いが減る。

特に「名義」「共有」「税金」は後戻りのコストが大きいので、売却活動より前に確認しておくのが安全だ。

一方で、すべてを完璧にそろえてから動く必要はなく、優先順位を付ければ負担を抑えながら進められる。

ここでは相続したマンションを売却する流れを、実務でつまずきやすいポイントから逆算して具体化する。

相続したマンションを売却する流れ

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相続後の売却は「相続の確定→名義→売却準備→販売→契約決済→税務」の順で進めると事故が減る。

最初に全体像をつかみ、次に相続人間の合意と登記を固めてから、査定や販売に進むのが基本だ。

全体像は6ステップで捉える

相続したマンションの売却は、作業を分解して順番を守るだけで難易度が下がる。

最初に「誰が取得するか」を確定しないまま査定だけ進めると、後で話がひっくり返りやすい。

登記と税務は締切が絡むので、売却活動と並行できる部分と先に必須の部分を分けて考える。

まずは次の6ステップを、今どこで止まっているかの地図として使う。

  • 遺言書の確認と相続人の確定
  • 遺産分割の合意と取得者の決定
  • 相続登記で名義を相続人へ移す
  • 物件情報の収集と売却準備
  • 査定・媒介契約・販売活動
  • 契約・決済・確定申告

相続人が複数なら遺産分割を先に決める

相続人が複数いる場合、マンションを誰が取得するかで売却の進め方が変わる。

共有のまま売る判断もあり得るが、実務では取得者を一人に決めてから売却するほうが揉めにくい。

遺産分割協議書の作り方次第で、登記や売買契約の段取りがスムーズにも複雑にもなる。

合意形成の段階で最低限そろえる論点を、表で抜けなく確認する。

論点 取得者を誰にするか
代償 他の相続人へ現金で調整するか
費用負担 固定資産税や管理費を誰が負担するか
期限 相続税申告や登記の締切を守れるか

売却の前提は相続登記と権利関係の整理

相続前の名義のままでも相談はできるが、原則として売買の決済までに名義を整える必要がある。

買主や金融機関は登記名義人の確認を前提に動くため、名義が被相続人のままだと取引が止まりやすい。

抵当権が残っている場合は抹消の段取りも必要なので、早い段階で登記簿を確認しておく。

権利関係の整理で見るべき要素を、チェックとして先に並べておく。

  • 登記事項証明書の名義と持分
  • 抵当権の有無と完済状況
  • 共有者の有無と連絡可能性
  • 管理費・修繕積立金の滞納有無

税金は譲渡所得と相続税の関係で変わる

売却で利益が出ると、原則として譲渡所得に対して所得税と住民税がかかる。

一方で、相続税がかかった場合は取得費に相続税の一部を加算できる特例があり、負担が変わることがある。

また、被相続人が住んでいた家を一定の条件で売ると、空き家の特別控除が使える可能性もある。

税務判断は要件の確認が重要なので、一次情報として国税庁の要点ページを先に押さえる。

論点 一次情報の目安
譲渡所得の計算 国税庁 No.1440
取得費加算の特例 国税庁 No.3267
空き家3,000万円控除 国税庁 No.3306

まず相続登記を済ませて名義を整える

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相続したマンションを売るなら、相続登記は「後でやる作業」ではなく早期に計画へ組み込むべき手続きだ。

期限と書類の集め方を知っておくと、相続人間の合意形成も現実的なスケジュールになる。

相続登記が必要になる場面

売却の相談自体は早めにできるが、契約や決済の段階では登記名義が重要な前提になる。

買主へ所有権を移転する登記を行うには、売主が登記名義人であることが基本になる。

共有名義で売る場合でも、共有者全員が売主として手続きに関与する必要があり、早期の整理が不可欠だ。

実務で相続登記が壁になる典型パターンを先に知っておく。

  • 相続人が遠方で書類のやり取りに時間がかかる
  • 相続関係が複雑で戸籍収集に手間がかかる
  • 遺産分割が未確定で名義を移せない
  • 抵当権抹消の段取りが同時に必要になる

相続登記の期限と過料を押さえる

相続登記は制度改正により申請が義務化され、一定の期限内に申請しないと過料の対象となり得る。

期限の起算点や「正当な理由」の考え方は、法務省のQ&Aで整理されている。

過去の相続も一定の経過措置の対象になるため、昔の相続のまま放置しているケースほど注意が必要だ。

まずは一次情報として、法務省と法務局の案内を確認する。

確認項目 参照先
義務化のQ&A 法務省 相続登記の申請義務化Q&A
10万円以下の過料の説明 法務局(法務省)案内ページ
経過措置の考え方 同Q&Aの該当項目

相続登記に必要な書類をそろえる

相続登記の最大の山は、戸籍類と住所関係書類をそろえて相続関係を証明する工程だ。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要になることが多く、取り寄せに時間がかかる。

遺産分割協議で取得者を決める場合は、協議書や印鑑証明書など追加書類が必要になる。

典型的な必要書類を一覧にして、先に取得先まで決めておく。

書類 入手先の例
戸籍謄本・除籍・改製原戸籍 本籍地の市区町村
住民票の除票・戸籍の附票 住所地または本籍地の市区町村
遺言書または遺産分割協議書 自宅保管・公証役場・法務局等
相続人の印鑑証明書 住所地の市区町村
固定資産評価の資料 固定資産税納税通知書等

登記の依頼先と費用感

争いがなく書類がそろうなら自分で申請する選択肢もあるが、時間とミスのリスクを見積もる必要がある。

相続人が多い場合や戸籍が複雑な場合は、司法書士へ依頼したほうが全体の遅延が減ることが多い。

費用は登録免許税に加えて、書類取得費や報酬がかかるので、売却益だけでなく手元資金も意識する。

依頼するか迷うときは、次の観点で判断すると決めやすい。

  • 戸籍収集を平日に動けるか
  • 相続人全員の連絡が安定しているか
  • 遺産分割の合意が確実に取れているか
  • 売却の期限が決まっているか

売却前にやるべき調査と準備

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相続登記と並行して、マンションの情報を集めると査定の精度が上がり、価格交渉でも不利になりにくい。

管理状況と書類の有無は買主の安心材料になるので、早めに棚卸ししておく。

マンションの現状を確認するチェック項目

売却の見通しは、立地だけでなく建物の状態と管理の健全性で大きく変わる。

相続直後は室内の残置物や設備の故障が見落とされやすく、後で費用が膨らみやすい。

まずは現状把握を先に行い、リフォームの要否ではなく「売れる状態か」を判断する。

最低限の確認項目をチェック化して、現地に行く回数を減らす。

  • 室内設備の動作と水回りの漏れ
  • 共用部の清掃状況と掲示物
  • 騒音や臭いなどの近隣環境
  • 駐車場や駐輪場の空き状況
  • 管理費・修繕積立金の金額

管理組合書類と修繕履歴を集める

マンション売却は「建物全体の管理状況」が買主の判断材料になる。

管理規約や長期修繕計画の有無は、ローン審査や購入検討の安心感に直結しやすい。

相続物件は売主が居住していないことも多いので、書類が欠ける前提で早めに管理会社へ確認する。

買主へ提示しやすい資料を、項目ごとに整理しておく。

資料 入手の目安
管理規約・使用細則 管理組合・管理会社
重要事項調査報告書 仲介会社が管理会社へ依頼
長期修繕計画 管理会社または理事会
総会議事録 直近分を管理会社へ確認
修繕履歴 大規模修繕の時期と内容

売るか貸すか保有かを数字で比較する

相続直後は「とりあえず貸す」判断が増えるが、家賃だけ見て決めると後悔しやすい。

賃貸に出すと貸主責任が発生し、設備故障や原状回復の負担が読みにくくなる。

一方で売却は一度で完結しやすいが、タイミングによっては価格が伸びない局面もある。

迷うなら、次の指標を同じ土俵で比較して意思決定を固める。

  • 月次の持ち出し額(管理費・修繕積立金・税)
  • 想定家賃と空室リスク
  • 修繕や設備更新の見込み
  • 売却想定価格と売却費用
  • 相続人間の合意を維持できるか

相続人間の合意を崩さない進め方

相続物件の売却は、価格の話以上に「決め方」の不満で揉めやすい。

査定を一社だけで進めると、他の相続人が不信感を持ちやすく話が止まりやすい。

合意形成は感情をゼロにはできないので、透明性のあるルールで進めることが現実的だ。

合意を保つための運用ルールを、先に表で決めて共有する。

項目 決め方の例
査定 3社以上で同条件で依頼する
価格 相場帯を共有し上限下限を合意する
連絡 連絡手段と返信期限を決める
費用 立替と精算ルールを明文化する
期限 相続税や登記の締切から逆算する

査定から売買契約までの実務

グレーソファと木製家具で統一されたナチュラルなリビングダイニング

売却実務は「査定→媒介契約→販売→申込み→契約→決済」で、各段階に必要書類と判断がある。

相続物件は書類不足が起きやすいので、仲介会社に任せきりにせず、準備の抜けを減らすことが重要だ。

不動産会社の査定は複数社で取り方が変わる

査定には机上査定と訪問査定があり、売却方針を決める段階では両方を使い分けると効率が良い。

相続物件は室内の状況が価格に影響しやすいので、訪問査定で修繕要否の見立ても取るとズレが減る。

査定額は「売れる価格」ではなく「戦略の仮説」なので、根拠の説明ができる会社を優先する。

査定時に同時に聞くべき質問を、先に決めておくと比較がしやすい。

  • 査定額の根拠となる成約事例
  • 販売開始価格と値下げの想定
  • 売却にかかる期間の見込み
  • 広告の出し方と内覧対応
  • 相続物件で注意すべき書類

媒介契約の種類を選ぶ

媒介契約には一般・専任・専属専任があり、囲い込みリスクとスピードのバランスで選ぶ。

相続人が複数で意思決定に時間がかかる場合は、報告頻度や窓口の一本化を重視するとトラブルが減る。

専任系にするなら、レインズ登録や報告義務の履行を前提に、運用を透明にすることが重要だ。

種類ごとの特徴を、短く表で比較しておく。

種類 向きやすい状況
一般媒介 複数社で広く動かしたい
専任媒介 窓口を一本化し報告を受けたい
専属専任媒介 売主側の手続きを任せたい

販売開始後の内覧と価格調整

販売開始後は反響数と内覧数で市場の反応が見えるので、感覚ではなく数字で判断する。

内覧が入らない場合は価格だけでなく、写真や募集文、見せ方の改善で反応が変わることがある。

相続物件は空室が多いので、換気や清掃のルールを決めておくと内覧対応が安定する。

売却活動中にやるべき調整を、実務の順で整理する。

  • 反響が少ないときは募集条件と写真を見直す
  • 内覧後に申込みがないときは弱点を洗い出す
  • 価格改定は幅とタイミングを先に決める
  • 残置物の処分は見積りを取り先送りしない
  • 相続人への共有は定期報告で透明にする

契約から決済までの当日流れ

申込みを受けたら条件調整を行い、重要事項説明と売買契約へ進む。

契約後は買主のローン審査や必要書類の準備が進み、決済日に残代金を受領して引渡しを行う。

相続物件では印鑑証明書や本人確認書類の有効期限がネックになりやすいので、更新時期を見て手配する。

当日に慌てないために、流れと必要物を表で確認しておく。

タイミング 主な作業
契約前 条件調整と重要事項説明の確認
売買契約 契約書署名押印と手付金受領
契約後 ローン審査と引渡し準備
決済当日 残代金受領と所有権移転登記申請
引渡し 鍵の引渡しと精算の確定

税金と確定申告で失敗しない

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相続したマンションの売却で税金が発生するかは、売却価格ではなく譲渡所得が出るかで決まる。

特例の適用は要件が細かいので、先に計算の土台と証憑の集め方を押さえることが重要だ。

譲渡所得の計算式と必要書類

譲渡所得は「収入金額−(取得費+譲渡費用)−特別控除」で計算するのが基本だ。

計算式は国税庁の案内に明記されており、ここを外すと節税以前に申告が崩れる。

相続物件は取得費資料が見つからないことがあるので、取得費が分からないときの扱いも先に確認する。

一次情報として、国税庁の該当ページを参照しながら準備する。

項目 一次情報
譲渡所得の計算 国税庁 No.1440
取得費が不明なとき 国税庁 No.3258
取得費加算の特例 国税庁 No.3267

長期と短期で税率が変わる

不動産の譲渡所得は、所有期間が5年を超えるかどうかで長期と短期に分かれる。

税率は長期と短期で大きく違うため、売却時期が数か月ずれるだけで手取りが変わることがある。

税率の概要は国税庁の案内にも示されており、まずは表で感覚をつかむと判断が早い。

復興特別所得税が加算される点も含めて、全体の税率として把握しておく。

区分 所得税 住民税
長期譲渡所得 15.315% 5%
短期譲渡所得 30.63% 9%
税率の案内 国税庁「土地や建物を売ったとき」

相続で使える特例を選ぶ

相続物件の売却では、相続税が課税されているかや売却時期によって使える特例が変わる。

相続税を払っているなら取得費加算の特例が検討対象になり、譲渡所得を圧縮できる可能性がある。

被相続人の居住用財産に該当し要件を満たすなら、空き家の特別控除が使える場合もある。

特例は併用可否や要件があるので、候補を整理してから詳細を当てはめる。

  • 相続税がかかっているかを確認する
  • 売却が期限内かを確認する
  • 被相続人の居住用かを確認する
  • 貸付や居住の有無で要件を外さない
  • 一次情報は取得費加算空き家特例で確認する

確定申告の期限と納税タイミング

譲渡所得が出た場合は、原則として売却した翌年に確定申告が必要になる。

利益が出ない場合でも、特例の適用や損益通算の可能性があるなら申告したほうが有利になることがある。

住民税は所得税と納付時期がずれることがあるので、売却代金を使い切らず資金を残しておく。

申告で慌てないために、売却直後から保管すべき書類を決めておく。

  • 売買契約書と重要事項説明書
  • 登記事項証明書と固定資産税資料
  • 取得時の契約書や領収書類
  • 仲介手数料など譲渡費用の領収書
  • 相続税の申告書控えと納税資料

迷ったときの判断軸を整理する

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相続したマンションを売却する流れは、相続人の合意と相続登記を固めてから売却実務へ進むのが最短ルートになりやすい。

売却準備では管理状況の資料を集め、査定の根拠を比較できる状態にしておくと価格でも揉めにくい。

税金は譲渡所得の計算と特例の要件が核なので、国税庁の一次情報で前提を押さえてから判断するとミスが減る。

不安が強い場合は、登記は司法書士、売却は仲介会社、税務は税理士と役割を分けると全体の負担が下がる。

最終的には「期限」「合意」「書類」の3点を守れる段取りに落とし込み、淡々と進めることが成功の近道になる。