投資用マンションを売却すると、利益(譲渡所得)が出た年に「譲渡所得にかかる税金」を計算して確定申告するのが基本です。
税額は「譲渡所得×税率」で決まり、税率は所有期間が5年を超えるかどうかで大きく変わります。
一方で、取得費(とくに建物の減価償却)と譲渡費用(売るために直接かかった費用)の集計次第で、同じ売却価格でも税額が大きくブレます。
このページでは、国税庁の計算ルールを前提に、投資用マンション売却の税金計算を自分で試算できるように整理します。
投資用マンション売却の税金計算
投資用マンション売却の税金計算は、①譲渡所得を出して、②所有期間に応じた税率をかける流れです。
計算の芯はシンプルですが、取得費と譲渡費用の扱いで差が出るため、まずは式と判定基準を固定して考えるのが近道です。
税金の基本式は「譲渡所得×税率」
譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。
国税庁も「譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)」の考え方で説明しています。
- 譲渡所得=譲渡収入-(取得費+譲渡費用)
- 税額=課税譲渡所得×税率
- 税率は長期(5年超)か短期(5年以下)で変わる
税率は長期と短期で約2倍違う
所有期間が5年を超える「長期譲渡所得」と、5年以下の「短期譲渡所得」で税率が異なります。
国税庁の計算ページでは、長期は所得税15%と住民税5%を基礎に、復興特別所得税を加えて申告する扱いです。
| 区分 | 所有期間 | 税率の目安 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税) |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税) |
長期の税額計算例は国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」、短期は「No.3211 短期譲渡所得の税額の計算」を参照すると具体的です。
5年判定は「売却した年の1月1日」で決まる
長期か短期かは、売却日ではなく「売却した年の1月1日現在」で所有期間が5年を超えるかどうかで判定します。
国税庁は「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるか」で区分すると明記しています。
- 判定日:売却した年の1月1日
- 5年超なら長期、5年以下なら短期
- 「取得日→売却日」で5年経過していても短期になることがある
国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)。
取得費は土地と建物で分けて考える
投資用マンションの取得費は、原則として購入代金や購入時の手数料などの合計です。
ただし建物は価値が減少するため、建物の取得費は「購入代金等-減価償却費相当額」として調整します。
| 区分 | 取得費の考え方 |
|---|---|
| 土地 | 購入代金や購入手数料などを中心に集計 |
| 建物 | 購入代金等から所有期間中の減価償却費相当額を控除 |
譲渡費用は「売るために直接かかった費用」
譲渡費用は、売却のために直接支出した費用に限られます。
国税庁は、仲介手数料や売主負担の印紙税などを代表例として示し、固定資産税など維持管理費は譲渡費用にならないとしています。
| 譲渡費用になりやすい例 | 仲介手数料、売主負担の印紙税、立退料、取壊し費用など |
|---|---|
| 譲渡費用にならない例 | 修繕費、固定資産税など維持管理の費用、代金取立ての費用など |
3,000万円特別控除は「居住用」が基本なので投資用は要注意
よく知られる3,000万円特別控除は、原則としてマイホーム(居住用財産)を売った場合の特例です。
投資用マンション(賃貸用)として保有していた場合は、基本的に居住用の特例を前提に試算しない方が安全です。
- 3,000万円特別控除は「居住用財産」を前提に設計されている
- 投資用として賃貸に出している期間がある場合は要件確認が必須
- 特例を見込む前に要件を先に確認する
まずは「概算」で手残りを試算する
売却の意思決定では、税金を差し引いた手残りの概算が先に必要です。
細部の最終確定は申告段階で詰めるとして、購入時契約書と売却時の見積書で大枠を組むと判断が速くなります。
| 概算に必要な情報 | 例 |
|---|---|
| 譲渡収入 | 売買代金(契約書の金額) |
| 取得費 | 購入代金+購入時諸費用-減価償却相当額 |
| 譲渡費用 | 仲介手数料、印紙税、測量費など |
| 所有期間 | 売却年1月1日時点で5年超か |
譲渡所得を計算するための数字の集め方
税金計算の精度は、譲渡所得の内訳がどれだけ正確に拾えているかで決まります。
売却価格だけでなく、取得費と譲渡費用を裏付け資料で積み上げるのが王道です。
譲渡収入は「売買代金」を基本に考える
譲渡収入は、原則として売買契約書に記載された譲渡価額を基礎にします。
売却に関連して受け取る精算金などがある場合は、性質を確認して漏れなく整理します。
- 売買契約書の譲渡価額を起点にする
- 精算金や補償金の有無を確認する
- 法人や課税事業者は消費税の論点も別途確認する
取得費は「購入代金+購入時諸費用」が土台になる
取得費は、購入代金に加えて取得に要した手数料などを合計して考えます。
国税庁は取得費となるものの考え方を整理しているため、項目を見ながら漏れを防ぐと安全です。
| 取得費に入れやすい項目 | 購入代金、購入時の仲介手数料、登録免許税、司法書士報酬など |
|---|---|
| 注意が必要な項目 | ローン利息、火災保険料などは性質により整理が必要 |
建物は減価償却費相当額を控除して取得費を作る
投資用マンションでは、建物部分の価値が時間とともに減少するため、取得費の調整が入ります。
国税庁は建物の取得費について、購入代金などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引く必要があるとしています。
- 建物の取得費=建物購入代金等-減価償却費相当額
- 土地は減価償却の対象にならない
- 土地建物の按分は契約書や固定資産税評価額などで整理する
取得費が不明なら「売却額の5%」という選択肢もある
古い物件で取得費資料が不足する場合、国税庁は「売った金額の5%相当額」を取得費とできるとしています。
ただし5%は最終手段に近く、実額が拾えるなら実額で組んだ方が税負担が下がるケースが多いです。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 実額取得費 | 契約書や領収書で積上げるため精度が高い |
| 概算取得費(5%) | 資料不足時に使えるが取得費が小さくなりやすい |
国税庁 確定申告書等作成コーナー(取得費がわからないとき)。
税率と所有期間の判定で計算を確定させる
譲渡所得が出たら、次に税率を確定させます。
投資用マンション売却では、所有期間の判定ミスがそのまま税額のズレに直結します。
所有期間は取得日からの「継続所有」で数える
所有期間は、原則として取得の日から引き続き所有していた期間です。
国税庁は相続や贈与で取得した場合の数え方も示しているため、該当する場合は起点を間違えないようにします。
- 原則:取得日からの継続所有期間
- 相続等:被相続人や贈与者の取得日から数える扱いが原則
- 判定:売却年の1月1日現在で5年超か
国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)。
税率は「所得税+住民税+復興特別所得税」で組み立てる
譲渡所得の税金は、所得税と住民税が基本で、復興特別所得税が所得税に上乗せされます。
長期は所得税15%と住民税5%、短期は所得税30%と住民税9%の枠組みで、復興特別所得税は基準所得税額の2.1%として計算します。
| 区分 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 |
|---|---|---|---|
| 長期 | 15% | 5% | 所得税額の2.1% |
| 短期 | 30% | 9% | 所得税額の2.1% |
相続した投資用マンションは「取得日」が前に遡ることがある
相続した物件を売る場合、所有期間のカウントが被相続人の取得日に遡るのが原則です。
売却タイミングで長期になるか短期になるかが変わるため、相続登記日だけで判断しないのが重要です。
- 相続登記日ではなく被相続人の取得日を確認する
- 売却年1月1日時点で5年超かを再判定する
- 契約スケジュールは税率差を踏まえて設計する
国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)。
損失が出た場合の扱いは「別枠」になりやすい
譲渡所得は分離課税として計算するのが基本で、給与所得などとは切り離して扱われます。
損失が出た場合でも、何と相殺できるかは所得区分や制度の要件で変わるため、安易に「他の所得と全部相殺できる」と見込まない方が安全です。
| 状況 | 考え方のポイント |
|---|---|
| 利益が出た | 譲渡所得を確定させて税率をかける |
| 損失が出た | 相殺や繰越の可否は条件確認が必要 |
投資用マンション売却で見落としやすい税金論点
投資用は「居住用の特例が当然に使える」という前提が崩れやすい分、論点の取り違えが起きやすいです。
特に、消費税、ローン残債、特別控除の3点は早い段階で切り分けておくと試算が安定します。
消費税は売主の立場で変わる
個人が自分の資産として売る場合、譲渡所得の税金計算だけを想定して進むケースが多いです。
一方で法人や課税事業者など、売主の状況によっては消費税の検討が必要になることがあります。
| 売主の例 | 消費税の検討 |
|---|---|
| 個人が私的に売却 | まずは譲渡所得中心で整理 |
| 法人・課税事業者 | 課税売上の扱い等を別途確認 |
ローン残債は「税金計算」と別で管理する
ローン残債がいくら残っていても、譲渡所得の計算式そのものは変わりません。
ただし手残りの計算では、売却代金から返済額と諸費用を差し引くため、税金とは別の表で資金繰りを作る必要があります。
- 税金計算:譲渡所得×税率
- 資金繰り:売却代金-返済-諸費用-税金
- 残債が大きい場合は決済時の持ち出し可能性も確認
特別控除は「居住用の要件」を満たすかで分かれる
投資用マンションを売る場合、3,000万円特別控除を最初から織り込むと試算が崩れやすいです。
国税庁の特例は居住用財産を前提に整理されているため、投資用としての実態があるなら要件確認が先です。
| よくある特例 | 前提 | 投資用での注意点 |
|---|---|---|
| 3,000万円特別控除 | 居住用財産 | 賃貸用は原則として前提外になりやすい |
| 軽減税率の特例 | 居住用財産 | 併用関係や要件の確認が必要 |
国税庁 No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例。
修繕費や固定資産税は譲渡費用にならない
投資用マンションでは修繕や管理の支出が多く、売却時に「全部経費にできる」と誤解されがちです。
国税庁は譲渡費用を「売るために直接かかった費用」とし、固定資産税など維持管理費は譲渡費用にならないとしています。
- 譲渡費用:売るために直接支出した費用
- 対象外:修繕費、固定資産税など維持管理の費用
- 迷う項目は領収書の目的で整理する
確定申告と納税までの流れを先に決める
譲渡所得の税金は、原則として売却した翌年に確定申告して納税します。
必要書類の収集に時間がかかるため、売買契約の段階で「何を残すか」を決めると後が楽になります。
申告が必要になる代表的なパターン
利益が出る見込みなら確定申告を前提に動くのが基本です。
損失が出た場合でも、制度の適用検討のために申告が関係することがあるため、判断は早めに行います。
- 譲渡所得がプラスになる見込み
- 特例の適用を検討する
- 損失の取扱いを確認したい
必要書類は「取得」「売却」「費用」で束ねる
書類は大きく、取得時、売却時、費用の3グループに分けると漏れが減ります。
譲渡費用や取得費は領収書の有無で精度が変わるため、電子データも含めて集め直します。
| グループ | 主な書類例 |
|---|---|
| 取得 | 購入時売買契約書、重要事項説明書、諸費用の領収書 |
| 売却 | 売却時売買契約書、仲介手数料の明細、印紙税の控え |
| 費用 | 登記費用、測量費、取壊し費用、立退料などの証憑 |
申告期限は原則「翌年3月15日まで」
所得税の確定申告は、原則として翌年の定められた期間に行います。
申告と納税のタイミングを先に固定し、必要書類の回収スケジュールを逆算します。
- 決済後すぐに契約書類を整理する
- 年明けに譲渡所得の試算を確定する
- 期限間際は税務署や税理士も混みやすい
税理士に相談した方がよいケース
税率自体は一見単純でも、投資用は減価償却や按分など判断が絡む場面が多いです。
特例の適用可否や、消費税・法人税の論点が絡む場合は、早めの相談で手戻りを減らせます。
| 相談を検討したい状況 | 理由 |
|---|---|
| 土地建物の按分が難しい | 取得費の精度が税額に直結する |
| 減価償却の計算が複雑 | 建物取得費の調整が必要になる |
| 法人・課税事業者の売却 | 消費税など別税目の検討が要る |
税金計算で迷ったら押さえる要点
投資用マンション売却の税金は、譲渡所得を正しく出し、所有期間の区分を間違えないことが最重要です。
譲渡所得は「譲渡収入-(取得費+譲渡費用)」で、取得費は土地と建物を分け、建物は減価償却費相当額を控除して作ります。
税率は売却年1月1日時点の所有期間で決まり、5年を超えるかどうかで負担感が大きく変わります。
取得費が不明なときの5%ルールは使えますが、実額が拾えるなら拾った方が手残りが増えやすい点に注意します。
投資用は居住用の特例を前提にしにくいため、特例込みの試算をする前に国税庁の要件ページで確認してから数字を置くのが安全です。

