マンションを売って利益が出たときに気になるのは、結局いくら手元に残るのかという点です。
結論として、課税対象になるのは売却価格そのものではなく、必要経費を差し引いた「譲渡所得」です。
譲渡所得がプラスなら税金が発生し、マイホームなら3,000万円特別控除などの特例で税額が大きく変わります。
一方で、購入時より高く売れても、仲介手数料や取得費の計算次第で「思ったほど利益が残らない」ことも起こります。
この記事では、利益の計算式、税率の決まり方、控除の使い分け、そして手取りを増やす実務のコツを整理します。
マンションを売って利益が出たら譲渡所得税がかかる
利益が出た場合に課税されるのは「譲渡所得」であり、売却代金に直接税率がかかるわけではありません。
まずは譲渡所得の考え方と税率の骨格を押さえることで、手取りの見通しが立てやすくなります。
利益は「譲渡所得」で決まり売却価格では決まらない
マンション売却で言う利益は、一般に譲渡所得(売却益)を指します。
譲渡所得は「収入金額-(取得費+譲渡費用)」で計算し、ここがプラスなら課税対象になります。
譲渡所得の計算や分離課税の考え方は国税庁の案内に沿って整理すると誤解が減ります。
| 収入金額 | 売買代金など |
|---|---|
| 取得費 | 購入代金+購入諸費用等 |
| 譲渡費用 | 仲介手数料等の売却費用 |
| 参照 | 国税庁 No.1440 |
所有期間で税率が大きく変わる
譲渡所得の税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年超か5年以下かで区分されます。
5年超は長期譲渡所得、5年以下は短期譲渡所得となり、所得税率が異なります。
復興特別所得税は所得税に上乗せされるため、実務では合計税率で把握すると計算ミスを防げます。
| 区分 | 判定 |
|---|---|
| 長期 | 売った年の1月1日で5年超 |
| 短期 | 売った年の1月1日で5年以下 |
| 参照 | 国税庁「土地や建物を売ったとき」 |
短期か長期かで「所得税率」が違う
国税庁のタックスアンサーでは、長期譲渡所得は課税長期譲渡所得金額×15%、短期譲渡所得は×30%と示されています。
ここに住民税や復興特別所得税が加わるため、最終的な負担感は想像より大きく感じやすいです。
まずは所得税部分を公式情報で確認し、そのうえで合計税率の概算を持つと判断が早くなります。
- 長期:課税長期譲渡所得金額×15%
- 短期:課税短期譲渡所得金額×30%
- 参照:国税庁 No.1440/国税庁 No.3211
マイホームなら3,000万円特別控除が強力に効く
自宅として使っていたマンションを売った場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
この特例は所有期間の長短に関係なく使えるため、短期でも税負担を大きく下げられる可能性があります。
ただし「誰に売ったか」や「いつまで住んでいたか」など要件があるため、売却前にチェックが必要です。
- 対象:居住用財産(マイホーム)の譲渡
- 控除額:譲渡所得から最高3,000万円
- 参照:国税庁 No.3302
軽減税率の特例は「長期のマイホーム」で追加メリットになり得る
長期保有のマイホームを売った場合、一定の要件で軽減税率の特例が検討対象になります。
国税庁の案内では、3,000万円特別控除と軽減税率は重ねて受けられる旨が示されています。
適用要件や他制度との関係もあるため、要件に当てはまるかを先に確認すると手戻りが減ります。
| 対象のイメージ | 長期の居住用財産の譲渡 |
|---|---|
| ポイント | 3,000万円控除と併用可 |
| 注意 | 要件確認と他特例の適用状況 |
| 参照 | 国税庁 No.3305 |
利益が出ても「税金が実質ゼロ」になりやすいパターンがある
マイホーム売却で譲渡所得が3,000万円以内に収まる場合、特別控除で課税所得がゼロになることがあります。
また、譲渡所得自体がゼロ以下ならそもそも譲渡所得課税は発生しません。
ただし税金がゼロでも、確定申告が必要なケースがあるため「税がない=申告不要」と決めつけないことが重要です。
- 譲渡所得がゼロ以下で課税なし
- 譲渡所得が3,000万円以内で控除により課税なしの可能性
- 要件確認の参照:国税庁 No.3302
マンション売却益の計算は取得費と譲渡費用で決まる
利益が出るかどうかは、売れた金額よりも、取得費と譲渡費用を正しく積み上げられるかで決まります。
「購入時の資料がない」「諸費用を忘れていた」といった理由で課税所得が不必要に増えることは珍しくありません。
取得費は「購入代金以外」も入れられる
取得費はマンションの購入代金だけではありません。
購入時の仲介手数料や登記費用など、取得のために要した支出が取得費に含まれ得ます。
何が取得費になるかは個別事情で変わるため、領収書や契約書で裏付けできるものを丁寧に拾うことが大切です。
- 購入時の仲介手数料
- 登記関連費用や司法書士報酬
- 印紙税など契約に伴う費用
- 資本的支出に該当する改良費の一部
建物部分は減価償却で「取得費が目減り」することがある
居住用であっても、取得費の考え方では建物部分の取り扱いが論点になることがあります。
特に賃貸に出していた期間がある場合は、減価償却の影響で取得費が想定より小さくなることがあります。
「自分のケースで減価償却が関係するか」を早めに確認すると、利益見込みのズレを減らせます。
| 影響が出やすい例 | 賃貸に出した期間がある |
|---|---|
| 起こりやすい誤解 | 購入額=取得費と思い込む |
| 対策 | 購入資料と運用履歴を整理 |
譲渡費用は「売るためにかかった費用」を中心に積む
譲渡費用は、マンションを売るために直接かかった費用が中心です。
仲介手数料や売買契約書の印紙税など、売却に紐づく支出を漏れなく把握することが重要です。
購入時の費用と混ざりやすいので、取得費と譲渡費用を分けて管理すると整理が楽になります。
| 代表例 | 仲介手数料 |
|---|---|
| 代表例 | 売買契約書の印紙税 |
| 代表例 | 測量や解体など売却の前提費用 |
| 補足 | 費用の妥当性は領収書で裏付け |
利益の計算は「数字を置く順番」でミスが減る
売却価格からいきなり税率をかけると、ほぼ確実に誤った試算になります。
まず収入金額を確定し、次に取得費、最後に譲渡費用を積み上げて譲渡所得を出す順番が安全です。
譲渡所得の分離課税の前提は国税庁の説明に沿って確認しておくと安心です。
- 収入金額を確定する
- 取得費を資料で積み上げる
- 譲渡費用を領収書で集計する
- 参照:国税庁 No.1440
税金を減らす特例は使える順番がある
特例は「当てはまれば自動で適用」ではなく、要件確認と申告で初めて効果が出ます。
自宅か投資用か、所有期間、売り方、相手方などで適用関係が変わるため、順序立てて判断することが重要です。
自宅か投資用かで「使えるカード」が変わる
マイホームの売却では、3,000万円特別控除など居住用財産向けの特例が検討対象になります。
一方で投資用マンションは、居住用財産の特例が使えないことが一般的です。
まず用途を切り分けてから試算すると、現実的な手取りに近づきます。
| 区分 | 主な検討ポイント |
|---|---|
| マイホーム | 3,000万円控除や軽減税率の要件 |
| 投資用 | 譲渡所得の基本計算と税率の確認 |
| 参照 | 国税庁 No.3302 |
3,000万円特別控除は「誰に売ったか」も要件になる
特例は条件が広い一方で、満たしていないと適用できません。
例えば、親子や夫婦など特別の関係がある人に売った場合は対象外になることがあります。
売却を急ぐほど相手方が近親者になりやすいので、売却設計の段階で要件を確認することが大切です。
- 居住用財産であること
- 一定期間内の居住要件を満たすこと
- 特別の関係がある人への譲渡でないこと等
- 参照:国税庁 No.3302
軽減税率は「併用できるが注意点がある」
国税庁の案内では、3,000万円特別控除と軽減税率の特例は重ねて受けられるとされています。
ただし買換え等の他特例の適用状況によっては制限が出るため、併用関係の確認が欠かせません。
適用できるかどうかの判断は、要件のチェックリスト化が有効です。
| 併用 | 3,000万円控除と軽減税率は併用可 |
|---|---|
| 制限 | 他特例の適用状況で変動 |
| 参照 | 国税庁 No.3305 |
「特例を使うために」手続きでやりがちな落とし穴がある
特例は確定申告で適用するため、必要書類が揃っていないと手続きが止まります。
また、売却後に慌てて調べると期限に間に合わず、結果的に特例を逃すリスクがあります。
売買契約前から書類とスケジュールを押さえておくことが、手取りを守る近道です。
- 契約書や領収書が見当たらない
- 居住実態の説明資料が不足する
- 申告期限を過ぎてしまう
利益が出そうなときの売り方で手取りは変わる
同じ価格で売れても、売り方の選択で諸費用やスピードが変わり、手取りに差が出ます。
仲介手数料、価格交渉の余地、売却期間の長短をセットで考えると判断しやすくなります。
仲介と買取は「価格」と「確実性」の交換になる
一般に仲介は高値を狙いやすい一方で、売れるまでの時間が読みにくいです。
買取はスピードと確実性が上がりやすい一方で、価格は仲介より低くなりやすいです。
利益を最大化したいのか、期限内に確実に現金化したいのかで選択が変わります。
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 仲介 | 高値狙いだが期間が伸びることがある |
| 買取 | 早いが価格は抑えめになりやすい |
| 向く人 | 目的が明確で優先順位が決まっている人 |
仲介手数料は上限があり事前合意が重要になる
仲介手数料には上限があり、契約前に上限の範囲内で合意しておくことが推奨されています。
国土交通省の案内では、売買価格に応じた料率で上限額が示されており、トラブル防止の観点から確認が重要です。
「上限=必ずその額」ではないため、サービス内容と手数料のバランスで納得できる形に整えることが大切です。
- 仲介手数料は上限額の範囲で事前合意が重要
- 売買価格に応じて上限料率が段階的に定まる
- 参照:国土交通省「不動産取引に関するお知らせ」
リフォームは利益に直結しないことがある
売却前のリフォームは、必ずしも売却価格に同額上乗せできるとは限りません。
買主が自分好みに直したい市場では、過度な改装がむしろ値引き交渉の材料になることもあります。
費用対効果が読めない場合は、修繕ではなくクリーニングや整理整頓に寄せたほうが手取りを守りやすいです。
| やりがち | 高額リフォームで回収を期待する |
|---|---|
| 起こり得る | 価格に反映されず手取りが減る |
| 代替案 | 清掃と見せ方を優先する |
所有期間5年の判定は「売却日」ではなく年初基準になる
長期か短期かの判定は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかです。
例えば同じ年の中でも、年末に売れば長期になるという単純な話ではない点が落とし穴です。
売却スケジュールを組むときは、年初基準の判定ルールを前提に動くと判断ミスを防げます。
- 判定基準は売った年の1月1日
- 5年超なら長期、5年以下なら短期
- 参照:国税庁「土地や建物を売ったとき」
確定申告で損しないための準備
利益が出たら税金の話で終わりではなく、確定申告で正しく手続きを完了させる必要があります。
申告の要否や必要書類はケースで変わるため、売却前から準備を始めると安心です。
申告が必要になりやすいケースを先に押さえる
譲渡所得がプラスで課税される場合は、確定申告が必要になるのが一般的です。
また、特例を受ける場合は「税額がゼロになり得る」場面でも申告で手続きを行うことが前提になります。
自分がどのパターンに当てはまるかを先に分類すると、必要作業が絞れます。
- 譲渡所得がプラスで課税される見込み
- 3,000万円特別控除など特例を使う
- 参照:国税庁 No.3302
申告のタイミングは「売った翌年」で動く
譲渡所得は売却した年分の所得として扱われ、原則として翌年に確定申告で手続きします。
年をまたぐと資料探しが難しくなるため、売却が完了したらすぐに書類一式を一箇所にまとめると楽です。
申告の前提となる譲渡所得の計算方法は国税庁の説明を基準にするとブレが減ります。
| いつの所得 | 売却した年分 |
|---|---|
| いつ申告 | 原則として翌年の確定申告 |
| 参照 | 国税庁 No.1440 |
必要書類は「買った時」と「売った時」で分けて集める
譲渡所得の計算では、取得費と譲渡費用の裏付けが重要になります。
そのため買った時の契約書や精算書、売った時の契約書や仲介手数料の領収書など、両方の時点の資料が必要です。
見当たらない場合は再発行できるものもあるため、早めに不動産会社や金融機関に相談すると間に合いやすいです。
- 購入時の売買契約書と重要事項説明書
- 購入時の仲介手数料や登記費用の資料
- 売却時の売買契約書と仲介手数料の領収書
- ローン残債や抵当権抹消に関する資料
税理士に頼むべきかは「難所の有無」で決める
単純な売却で資料が揃っているなら、自分で申告できるケースもあります。
一方で、賃貸に出していた期間がある場合や、取得費が不明確な場合は計算が難しくなりやすいです。
迷ったら「取得費の整理ができるか」「特例の要件が明確か」で判断すると合理的です。
| 自力で進めやすい | 資料が揃い取引が単純 |
|---|---|
| 依頼を検討 | 賃貸期間ありや取得費が不明確 |
| 依頼を検討 | 特例の要件判定が難しい |
利益を守るために押さえる要点
マンション売却の利益は売却価格ではなく譲渡所得で決まります。
譲渡所得は取得費と譲渡費用の積み上げで大きく変わります。
所有期間は売却日ではなく売った年の1月1日基準で判定します。
マイホームなら3,000万円特別控除で課税所得が大きく減る可能性があります。
長期のマイホームは軽減税率の特例も検討対象になり得ます。
税金がゼロになり得る場合でも特例適用には申告が前提になることがあります。
仲介と買取は価格と確実性のバランスで選びます。
仲介手数料は上限があるため契約前に条件を明確にします。
売却が決まったら買った時と売った時の資料を早めに一式で揃えます。
取得費の不明確さや賃貸期間など難所がある場合は専門家の活用も視野に入れます。

